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扉を開くと寒気団

ヴィヴとジョルジュもぼちぼちとブルグと暁星堂に馴染んできた今日この頃。

また回帰用魔法陣に充填する魔力がたまったので転移陣を起動させることにした。

お嬢様のヴィヴをいつまでも私と同室にしておくのも気が引けるのでひとまず2階の部屋を解除することに方針は決めている。


「エマ、今日はエッシェンバッハで間違いないんだっけ?」

本日休業の札をかけて戸締りを確認したエリックが今日の行先を確かめてきた。

「そうだよ。この時期はとっても寒いみたい。準備はばっちりにしないとね。」

私はエッシェンバッハには行ったことはないけれど今の時期は真冬で日照時間もとても少ないと聞いている。

しかも青の洞窟は海沿いにあるから海風もあってきっととても寒いはずだ。

倉庫の中から海豹人(セルキー)の皮でできたローブを見つけたのでヴィヴに着せてあげた。

おじいちゃんの由来書きによると「離婚なんか絶対にしないから大丈夫。退路を断って旦那に覚悟を見せるのよ!」と言われて買い取ったらしい。

何年前のことかは知らないけれど取返しにきていないところを見ると円満な夫婦生活を送っているのであろう。

色白美人の彼女が身に着けると本物の海豹人(セルキー)に見えるな、なんて言ったらちょっと照れた顔になった。

鎧を身に着けないといけないエリックとジョルジュは幾分寒々し気だけど内側に防寒効果をあげたシャツを着てもらった。


非常食や備品を入れた魔法鞄を持って扉に手をかけようとするとヴィヴが尋ねてきた。

「ねぇ、私やっぱりちょっと信じられないんだけど。転移陣の設置ってけっこう魔力使うじゃない。それなのにこの家にそんなたくさん設置なんてできるもの?」

うん、その疑問はわかる。それは私も聞きたいけどわからないから仕方ない。

「とりあえず魔法陣を維持する魔力は転移先のマナを吸収してるってことはわかってるんだけどね。そこから先は調べてない。」

私の望みはあくまでもブルグで「ゆっくり」「まったり」道具屋さんして暮らすことだ。

解除してさらに平和になるならいいんじゃないか?くらいの気持ちでいる。


(知らなきゃしゃべれないけど知っちゃったらなんだかうっとしそうなんだもんね。)

「まぁ百聞は一見にしかず、ってこのことだってわかるからまずは扉を開けてみてよ。」

私に言われて半信半疑の面持ちのままヴィヴがとびらを開いて・・・固まった。


エッシェンバッハの青の洞窟は蒼蛍石という岩でできて青く光っていることからその名前がついた。


パールスライムの生息地として狩人の出入りも多い。立地がもう少し立ち入りやすければもっと人が多かっただろう。

魔核は装飾にもなり体液は麻痺効果と麻酔効果を持つ素材。ポーション作る錬金術師さんに卸したら結構な利益が出るはずとか皮算用している。

あとスライムの表皮部分。これを紙に加工したら防水効果が出るはずだからそれもぜひともゲットしたい。

もちろんパールスライムでないスライムもいるし、スライムよりもやっかいな魔物も存在する。

海だけに危険なのは刃魚だろう。泳がなければいいわけでなくこの魚飛行してくるのだ。岸辺をうかうか歩いていたら飛び掛かって襲われる。

肌や髪にいい海藻やスポンジとして優秀な海綿などもできれば水に入って取りたいんだけど中に入ればクラーケンの幼生がいたりもする。

冷たい水の環境だけに油断したら低体温の危険も認識しないといけない、注意が必要な場所だ。


採集したい素材の話ばかりをしていたら

「そんなことよりとっととやっつけちゃダメなのかよ?」

エリックに反論された。その後エリックはヴィヴに素材回収の機会を逃すとかそれでも狩人か!と長杖でどつかれてた。

庶民懐事情の勉強のために行動を共にするうちにヴィヴの猫がエリックに関しては仕事しなくなったようだ。

ちなみにジョルジュには意見はないかと尋ねたら

「私はお嬢様のご指示のままに動くだけです。」と満面の笑みで返された。


先頭のエリックが扉を開くと同時に凍るような冷たい風が吹き抜ける。

「なぁヴィヴ。私も行かねばならんのか?」

ジョルジュの肩に止まったフランが毛玉のように羽をもこもこに膨らませて尋ねる。

「フランに寒いかもしれないわ。ヴィヴ、フランは留守番させれば?」

と私の言葉にヴィヴが考え込む。


「は、このくらいの寒さでガタガタ抜かすとは木っ端も口ほどにもないの。」


エリックの首回りで襟巻のように巻き付いているシャンタルが鼻で笑う。余計なことを・・・。

「なぬ?主こそこのような水の場で足手まといになるからとそのような安全圏にいるのであろ?我は空からヴィヴの安全を守るのだ。行くぞ。ヴィヴ。」

そうツンと言い切るとジョルジュの肩から飛び立ったフランが先頭切って扉をくぐった。

「シャンタル~!!イジワル言わないの。」

めっとばかりに軽く睨むがシャンタルは涼しい顔を崩さない。

「何をしてるか?皆も速く入ってくるとよい!」

意気軒高としたフランの呼び声にため息をつきながら私は扉をくぐった。

ヴィヴとジョルジュ、初めて探検に参加します。

そろそろ書き溜めたのが少なくなってきたので続き書かないといけないな~と。

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