暁星堂開店いたしました
魔法道具屋暁星堂は無事に開店した。
さっそく祖父の代の常連さんだった狩人のみなさんがお客に来てくれて初日の売り上げは順調だと思う。
いかんせん、ヌヴェールでは魔法しか学んでいないので経営なんてわからないし。
ただ魔法魔術具に関しては一定の狩人には売れたけど大爆発ってほどでもない。
まあこれは前もって予測がついていたので想定の範囲内だ。
主な売れ筋商品は今のところお茶、ブラシなんかの美容グッズだ。
先日にカグヤさんに贈ったお茶がとても美味しかったし祖父が飲むために作ったものが季節の度に消費しきれずに溜まっていたのでちょうどよい。
それをまずはもっぱらシャンタル目当てのお子ちゃまとお母さんとかお客さんに試飲として出してリピーターを増やす作戦だ。
こちらの原材料は温かくなったらシャンタルが庭で育ててくれるそうだ。
後は日常生活用の魔石が好調だ。灯石はララおばさんに
「今までのより明るいし、火力も維持できていいねぇ。」
と誉められて嬉しかったけど、持ちがよすぎると交換が間遠になるかな?
仕入れ先の問題も少し前進した。いくつかの工房を狩人ギルドから紹介してもらうことができたのだ。
魔石の加工工房は祖父が取引していたところを引き継いだ。気のいいおじいちゃんと狩人を引退した息子さんがやっている。
息子さんは最初から狩人を長くするつもりはなくて魔石の源である魔物をよりよく知るためだったと言った。
エリックのことも魔石を卸に行ったりしていたらしくよく知っているようだった。
狩人用の攻撃魔石用の小さな魔石を融通してもらったり、逆におじいちゃんたちでは扱えない魔石の魔力結晶化を請け負ったりの関係だ。
月兎の魔石もおじいちゃんたちに卸した。
「これは月兎にしては純度が高くて加工のし甲斐があるな。」
と言われた。さすが万年夜の環境は魔力の純度が違う。
素材回収の場所を知りたがったけど企業秘密ということにしておいた。
鍛冶工房と契約を結ぶこともできた。
ギルドでのお披露目の時に請負業務の候補として紹介された工房でこちらは中堅の有望株との触れ込みだった。
武器、ナイフに効果、属性付与として効果ある魔石のはめ込み、魔法陣刻み込みなどを行っている。
大き目の武具は専属工房があるので今のところは小さな刃物、家庭用の包丁に効果付与程度とかが主な仕事ではあるけれど。
ちなみに研ぎに出さないような効果は付けないでくれよと店主のおじちゃんには頼まれている。
月のダンジョンの泉の水を分けてあげたらすごく喜んでくれた。
「家庭用の包丁に使ってもなぁ。嬢ちゃんみたいな投げナイフでも作ってみるか。」
と考え込んでいた。そういえばおじさんのお得意さんはご家庭の主婦だった。
仕入れた商品の他に持ち込まれた武具や防具、道具に魔法陣で効果付与する依頼もちょこっと増えている。
一番は紙だろうか。ブルグ城壁外の農村で紙工房があってそこの紙を買い上げて主に商業ギルドで使用する契約魔術用紙や会議用防音効果呪符とかの需要が多い。
祖父が請け負っていたけど体を弱くしてから生産量が少なくなっていたらしい。
おかげで店頭での売り上げがあまり高値でないお茶中心でもこのお店は今は安定って感じでありがたい。
材料の紙の品質によって作る際の魔力の消費が違うけどとても良い品質だ。私が多用する護符や起動魔法陣もヌヴェールの頃よりも発動効率があがった感じがする。
狩人がこの辺で採集して来る植物繊維でこのレベルなら私が素材提供したらもっと品質があがるんじゃないかなぁ。
メモした内容が滲まない、とかマッピングに特化した能力を付与する、とかアイディアが膨らむなぁ。
早く他にもオリジナルの道具を作りたいんだけど作成を請け負ってくれる人を探そうかな。自分で作ってもいいけどそれでは時間がもったいない。
エリックのハンス兄ちゃんに針子さんを紹介してもらうのもいいかもしれない。
(ヴィヴがいたらなぁ。こんなことも相談できるんだろうけどな・・・)
ヌヴェールでの学生時代の親友を思い出してちょっと寂しい。
在庫から出してきたちょっと古臭い形の鞄に浄化魔法をかけながらそんなことを考える。
お店の方は扉に術式をかけてあるので来客があればすぐに顔を出せるが今は昼食時だから常連の女将さんたちがくるのはもう少し先だろう。
(どうも私には服飾を作るってセンスが足りないのかなぁ。)
先日のオオコウモリの骨と月虹花の花びら、祖父の在庫の中から見つけたレンズで『鑑定』の魔眼用のレンズの設計術式を考えながら作業机に持たれていた。
のんびりとゆりかごを揺らしてたシャンタルが空気の流れを察したのかすくりと身を起こす。
「エマ、来る。『木っ端』が来るぞ。どうやって嗅ぎつけたのかのぉ。」
「木っ端?木っ端?ってまさか。ここフランドールのブルグよ。誰にも教えてないハズなのに!」
シャンタルが『木っ端』と呼ぶのは私の親友ヴィヴの使い魔しかいない。
使い魔が主を離れて単独行動するのなんてことはほぼないに等しいので当然彼女も近くにいることになるが、ヌヴェールとブルグは馬車で1か月はかかる隣国だ。
当たり前に考えれば彼女がここに来るなんてありえないことなのだ・・・。
ピピピと作業机に置いたベルが鳴る。
店の扉に付けたベルとは別に扉が開いたことを知らせる魔法道具になっている。
「いらっしゃいま・・・。」
言いながら作業室から店内へと姿を現す。
「エマ!!エマ!!やっと見つけたわ。ここにいたのね!!」
聞きなれた声とともに懐かしい友人、ルイーズ・ヴィクトワール・フゥーベが弾丸のように飛び込んできた。
暁星堂ついに開店しました。
ラストにかけこんできた訪問者はこれからどうするの?
楽しんで読んでいただけたら嬉しいです




