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祖父の葬儀

本編始まります。

「このたびはご愁傷様でございました。でも、ヴィンスさんも最期は孫に看取られるとかご満足だったでしょう。」

「エマちゃんも力を落とさないでね。」

次々とかけられる声を聴きながらそのひとつひとつに頭を下げ口の中でもごもごと呟くような挨拶を返すくらいしかできなかった。

はっきりと聞き取ることもできない言葉だけどみんな10年ぶりの再会後すぐに祖父を失った私の傷心を気遣ってとがめだてるような人はいない。

「エマ。座ってばかりで疲れたでしょう。食事を用意したから食べなさい。挨拶はしばらく変わるわ。」

肩を叩かれてふと我に返り叔母を見上げた。私や祖父と同じ翡翠色の瞳に浮かぶ心配そうな色に何とも言えない安堵を覚えると頷いて立ち上がる。

「エマちゃんも気の毒にな。」

「先月10年ぶりに戻ってきたばかりだったろう?なのにもう一人になっしまうとはな。」

「でもエマちゃん、ヌヴェールのばあさんに引き取られたのになんで戻ってきたんだ?」

ひそひそとした話し声がしたので振り返ると話をしていたおばさんたちは困ったような顔になったので力なく笑いかけておくとほっとした表情になった。


私、エマ・フェリシテ・デボックはあと数か月で20歳になる。

16歳で一応成人したとみなされるこの国では早い者なら母になるものもいる年ごろだが平均よりも少し低い身長とタレ目気味の大きな瞳から実年齢よりはいつも幼く見られがちだ。

顔だちの中で一番特徴的なのは赤みの強いストロベリーブロンドとくりっと丸い瞳で明るい翡翠色をしていてこれがなんだか困っているようだと言われる。

その自慢の髪は背の中ほどまで伸びているけど今日はゆったりと一つに編んで片側に寄せている。

子供の頃から「笑顔よし」だと言われるが今日はさすがに笑う気にはなれない。


私が10歳の時に別れた父方の祖父を訪ねて隣国のヌヴェールからこのブルグの街に来たのは1か月ほど前のことだった。

この街で生まれて両親と暮らしていたが揃って事故で若死にして8歳から10歳までの2年間を祖父に引き取られて過ごした。

両親がなくなったことは悲しかったが落ち着いていくとともに祖父との暮らしは穏やかでこのままここで成長するのだと思っていた。

そんな生活が一転したのは亡くなった母の母、母方の祖母が訪ねて来た日のことである。


「ブランシュが亡くなったことを知らず大変なご無礼を致しました。」

祖父にそう挨拶をした母の母であるという老婦人は旅に疲れてはいたけれど背筋がすっと伸びた人だった。

祖母から両親が結婚を反対されて駆け落ちしてこのブルグの街に来たことや亡き母はヌヴェールの貴族であったことを知らされた。

跡継ぎでありながら平民で隣国の民である父を選んだ母は生きている間ヌヴェールに足を入れることもなかったが孫娘の誕生だけは手紙で知らせていたという。

母は隣近所の友達の母親と比べればビックリするほどお人好しで世間知らずで裁縫は得意なのに料理はからっきしという人だったのは育ちが違ったのだなと思った。

この国では珍しいセカンドネームに選ばれた「フェリシテ」が目の前の祖母の名前であることを知って母の中に捨てた故国と母親への感情を現しているようで薄れかけた悲しみが蘇り、それが互いのけじめだったのだと言いながらも自分を抱きしめて涙を流す祖母の腕の温かさに寂しいながらも穏やかな気持ちを感じていたが遠くの国にも親戚がいるのだな、程度の認識だった。


それなのに翌日目を覚ますと祖父から祖母についてヌヴェールに行くように告げられた。

別れを告げに来たはずなのに祖父から「この子を連れていけ。」

と宣言された表情を見るに祖母にも青天の霹靂だったようではあるが一晩のうちにまとめられた荷物とともに家を出されてしまえばまだ10歳の私にはこれ以上抵抗するすべもなく祖母に連れられてブルグの街を離れるしかなかった。

後に叔母のアメリから祖父にとっても相当悩んだ結果の決断であること、まだ叔母という親族がいる自分と一人娘を失ってしまった祖母の気落ちに同情を禁じえなかった祖父の心情を聞いたが幼い心には「捨てられた」感が強くなかなか祖父に手紙を書いたりすることもできなかった。

ヌヴェールに移ってからいきなり連れてこられた娘に一部の親族には受け入れにくい者もいたようだが祖母は温かく時に厳しく持てる知識のすべてを注ぎ込むように育ててくれた。

祖母は亡くなった母の代わりに孫娘を跡取りにしたかったのだと思う。

だが、残念なことに私の魔法の才能は家の技とはまったく無縁な方向に向いていたし宮廷魔法師としての適性も低かった。

それでも私のことを跡継ぎにと押してくれる人もいないでもなかったが祖母が亡くなり結局家を出て10年ぶりに祖父を訪ねてきたのだった。

その頃にはすでに発病していただろう祖父は最初は驚いたがとても喜んでくれた。


自宅の1階で道具屋をささやかに営んで暮らしていた祖父の手伝いをしながら過ごす静かな日々、はすぐに終わりを告げ今私はブルグの街で途方に暮れることになった。


しばらくは人物説明とかが続きます。

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