ギルドでの査定
「この呪符ってのは爺さんのと何が違うんだい?」
「私のは攻撃よりも防御に特化してるんです。これは結界で周辺の防御をします。範囲は5メーラほどです。野営の時なんかにいいです。盗賊とかの物理攻撃は無理ですが。」
サンプルを手に取ると魔石を当てて起動する。僅かに白い光が部屋を包み込んだ。
「このバッグは?」
「バッグ自体は祖父の在庫品の改良です。魔力遮断の効果があります。中身は火の玉、水の矢、風の刃、雷の玉、ぬかるみの玉のセットです。初心者セットですね。
ベルトに引っ掛けて、こう、取り出せます。」
自分の服のベルトにバッグを引っかけて見せた後エリックの皮鎧にもつけてみた。
パーティーで行動する場合は後衛職が持つんだろうけど単独行でも使えば便利だと思う。
「ほぉ、これは盲点だったな。」
「最初にこれ買って後は使った分補充していけばいいかと思ってます。中には仕切りもありますから混じってしまうのも防げますよ。」
あと魔力遮断手袋、これは狩よりも作業用ですね。これは簡易分析セットです。水や空気の毒素調べます。
トラップは無理だけどこちらの呪符で簡易的に。今日持ってきたのは簡易版で本格的なのも書きますよ。」
サンプルを手に取るギルマスクラスのオジサマたちに説明していた。
ちなみに簡易分析キットについてはヌヴェールの学院時代に学んだことを応用した。
祖父のお店では在庫にもなかったからフランドールにそういうものはないのかもしれない。
商品についてひととおりの説明をすると加工魔石や一部の呪符を実演するために狩人ギルドの中庭に移動する。
狩人ギルドには魔法結界を張った訓練場があるから落雷や火災にも対策できる。実演を要求されるのは触れ込み通りの効果が出るかの確認のためだ。
質の悪い店やもぐりの商売人などだと効果をうたいながら使用すると何も起きない、ということも実際にあるらしい。
商業ギルドに登録するからにはそういう詐欺商品を防ぐための試験はしかたないことだし、主に使用する狩人ギルドの責任者は使用する側として生死に関わるのだから当然だろう。
効果があると認められれば狩人ギルドの備品として正式採用もあるので大事な場である。
「じゃ、お願いします。」
エリックに魔石玉を渡して訓練場の床に投げてもらう。
エリックが投げたのは魔力低めの人が投げたらどうなるか示すため。初心者用の補助魔術具だから起動は触るくらいでいいことを見せるためだ。
「まずは火の玉です。火の壁」
ぼうっとエリックの背くらいの火柱が立つ。10ほど数えると火が消える。
「水の玉。水の壁」
薄い水の壁が立ち上がり火の壁と同じくらいの時間で消えた。
「風の刃」
見本に立てた藁柱に向かって投げつけると風が巻き起こり鎌鼬のように引き裂いた。
「ぬかるみの玉」
訓練場の床が泥だらけの場に変わる。これは攻撃というより足止めに使う。
火と水、土の魔石玉は敵にぶつけたらはじけて直接攻撃することもできる。
ひとわたりの実演が済むとこれはヴィンスが作るものより少し性能がいいな、こちらは逆になどと会話をしつつ手に取って会話したり
中にはエリックになにがしかの魔力的細工がされていないか、自前の魔眼などで査定している人もいる。
「で、呪符。これは魔法陣を発生させるもので間違いないかな。」
「はい、あってます。呪文を唱えるか起動用魔石、または使用者の魔力を通せば発動するようになってます。」
試しに結界の呪符を発動して初級のファイヤーボールをぶつけてもらう。
5発までは耐えたのを確認するとギルド所属魔法使いがほぉ、と感心してくれた。
今回用意したのはクルックス(通信用魔術具)よりは伝達量が少ないが魔力消費も少ない通信用呪符、野営時のテントを守る簡易結界、緊急用信号弾だ。
「販売方法は?」
「呪符に関しては起動に魔力が要りますから鑑定晶で条件クリアした人しか使えないようにしたいです。」
とりあえずひととおりサンプルを提示したものは販売を認められた。
これから開発することについても許可をもらったが魔法魔術具は危険性判定のために販売前にギルドで試験を受けるようにと言われた。
狩人向きの商品の検査の他に街の人が日常生活に使うランプ用の灯の魔石や水や火の魔石の査定も順調に進んでギルドでの商品の査定は無事に終わった。
魔法魔術具の他はルクーが貯蔵していたハーブティーや薬草由来美容品などは特に試験もなく許可が下りた。
土の精霊のシャンタルは土の恵である草花の魔力の扱いにも長けている。きっと質の高い商品が提供できると思う。
狩りで遠征するのは疲れるからそういう時に役に立ってもらえればいいなと思う。
胸に下げていた魔石から魔力を吸収するのが止まった感覚をふと感じた。
どうやら転移陣起動用の魔力が十分にたまったらしい。
(さてと、じゃ、素材も必要なことですし明日あたり採集に行きますかね。)
今度はどんな部屋に飛ばされるんだろう。
いよいよ開店準備




