オランドとアリア1
オランドとアリアは兵舎で関係を持ち、それからしばらくして結婚した。オランドはアリアに気付かれないようにプレゼントと家を買っていた。そして結婚した当日にアリアを家に連れて行き、プレゼントの首飾りを渡した。その首飾りはアリアの胸元で光り輝いている。
オランド曰く、人の胸には、心臓には魂が宿っている。そう思っている。その最も心臓に近い位置に自分が渡した首飾りが輝いているのは、俺のことを受け入れてくれた証。そんな風に思う。だから首飾りを渡したと。俺の気持ちが……魂が刻まれているそれを身につけてほしいと。
どこか恥ずかしそうに、けれど真剣に。
アリアは真剣に聞き、嬉しそうに首飾りを受け取り、すぐに身につけた。アリアはそう言うオランドが首飾りを渡してくれた事は、オランドが自分を受け入れてくれた証になると言った。
オランドが結婚すると決めた。
それは
自分の心の中にもう一度、愛する女を受け入れると。
止まっていた歩みを、再び動かし、歩み始めると。
重い腰を上げ、再び立ち上がると。
迷い、悩み、そして決意した証。
また失ってしまうかもしれないという恐怖ともう一度向き合い、戦うという証明。
オランドは強く拳を握りしめていた。誰もが頼れる男。誰もが誇れる男。そのオランドの体は震えていた。
向き合うことを決めた。
受け入れることを決めた。
前を見て歩くことを決めた。
でも、オランドは一度失っている。失った時の虚しさを、悲しさを、苦しさを知っている。だから震えていた。アリアよりもずっと年上のオランドが震えていた。
再び歩き出す。それがどれほど難しいことか、手に取るようにわかるほどに。もう一度失えば、オランドは二度と立ち直れない。今度こそ剣を置いてしまうだろう、今度こそ死を選んでしまうかもしれないだろう。それでもオランドは最初の一歩を踏み出した。アリアはそれを見て、そっと隣に寄り添い、共に歩き出す。共に戦い、共に支え、共に守り抜くために。
………………………………………
そんな2人の関係は、少しずつ変化していった。
結婚する前から結婚した後のことで一回。
アリアが妊娠したことで一回。
そしてアリアが子を産んだことで一回。
計三回、お互いの関係が変化していった。
結婚した当初はオランドもアリアも家に住み着くことはなかった。何故なら元々兵舎で一緒に暮らしていたから。朝早く起きて、支度をして、部屋から出てきた2人は朝食を取り、鍛錬する時も、魔獣討伐する時も、それ以外の時もほとんど行動を共にしていたのだから。
それはアリアがオランドの隊に入ってからずっと続いていたこと。当然のように隣に居続けたアリアを煙に巻くことも無く一緒にいた。オランドもアリアが傍にいると楽だったからだ。
アリアは王国兵になったばかりの頃、オランドのことを知ってはいたが想い人ではなかった。
幼い頃に見たオランドが悲しむ姿。それは目を閉じればいつでもその光景を思い出せるほど強烈な印象があった。守られているだけだと、いつか自分が愛した相手にあんな風に泣かれてしまうかもしれない。そう思い、強くなるためにアリアは兵士になった。
想い人ではない。でもアリアはオランドの隊に入った。その理由も幼い頃、オランドが敵兵をあっという間に全滅させたその姿もちゃんと覚えていたから。オランドほどの強い男の隣で戦い続けることが出来れば、きっと自分が愛した相手の足を引っ張ることはないだろうとそう思ってのこと。
想い人ではなかった。でもアリアはオランドの隣に居続けたことで、オランドのことを知り、好意を抱くようになり、愛するようになった。それこそ待てないからと夜這いをするほどに。
初めての戦争でさりげなくフォローしてくれた。アリアに好かれようと思っての行動ではない。オランドは自分の隊で生き残ったすべての兵士に声をかけていた。尊敬する将軍を見習うように。その兵士に合わせ、時には気さくに笑い、時にはしっかりしろと怒り、時には励まし、時にはからかう。
戦場では別人に変わる。誰よりも前に行こうとする。導こうとする。その強さに、兵士を想う優しさに、自然と惹かれていった。そして、オランドに惹かれ、更に見るようになってから、どこか悩み、悲しみ、苦しんでいることを知った。
オランドは事務作業を嫌った。それは一人でいると、幼馴染を失った時のことを考えだしてしまうから。罪悪感に押しつぶされそうになるその時間は苦痛でしかない。だから出来る限り手を出そうとはしなかった。
アリアはそれを知っていた。幼い頃、オランドに助けてもらったのだから。その全てを見ていたのだから。だからアリアは自ら申し出た。事務作業は任せろと。オランドはその申し出をすぐに受け入れ、事務作業をすべてアリアにやらせるようになった。
その間、オランドはサボっているわけではなかった。アリアは知っている。剣を振り続けていたことを。事務作業をする時間があるのなら、幼馴染のことを思い出してしまうくらいなら、もっと強くなるためにと時間を使った。必死に忘れようとしていたのかもしれない。乗り越えようとしていたのかもしれない。それはオランドにしかわからない。
けれど結婚してから少し変わった。ほとんど一緒にいると言っていい生活。それ以外でプライベートな時間を作るようになった。オランドが、アリアが2人で夕食を食べに行きたくなれば、家で2人で夜を過ごしたくなれば、2人で酒を飲み、語り合いたくなれば、そのどちらかが行動した。
オランドが早々に鍛錬を切り上げ、アリアの様子を見に行く。まだ事務作業をしているのであれば手伝うようになった。アリアが先に事務作業を終えたのなら、オランドの鍛錬に付き合うようになった。
それはオランドかアリアのどちらかが、2人きりの時間を欲しての行動だった。オランドもアリアも断ることはしない。どちらかが望むことに付き合う。そんな関係に変わった。
アリアが妊娠してから、アリアは家で過ごすようになった。オランドは将軍としての仕事が激務なため、家にあまり顔を出せなかった。アリアは気にしていないようだが、オランドはアリアのことが気になって、仕事を早めに切り上げて帰ってくる時があった。アリアの大きくなったお腹の様子を見に来たり、アリア自身の心配をして顔を出す。そんな関係に。
アリアが子供を出産してからは、オランドはどれだけ遅くなっても必ず帰ってくるようになった。寝顔だけでもいいと、子供の成長を愛する女と共に見たいとかなんとか。アリアはそんなオランドの隣に居続けるために、子供を育てながら剣を振るい続けた。
その影響か、オランドとアリアの子供は物心ついた時には、アリアと一緒に素振りをするようになった。オランドも子供の成長を喜び、剣を教える。子供はオランドに勝つために必死に剣を振るう。オランドとアリアの関係は、在り来たりな微笑ましい家族になっていった。
登場人物について
オランド
ヴィータが元兵士という過去を持つようになってから生まれたキャラクター。元兵士なのに知り合いが一人もいないのは寂しいということで元先輩として、レフィリアとエレノアのようにアリアと一緒に時々様子を見に来る役回りでした。
立ち位置が変化したのはヴィータが3度目の戦争を経験する帝国との戦争を書いている時でした。帝国将が王の間まで迫る時のことを書いている時に、他の敵国とは一味も二味も違う相手ということを表現したかったため本編の流れとなりました。
ヴィータが王都へ行きたいという意思を伝える会話を書いている時にオランドが将軍に掛け合ったことがあるという設定が思い浮かびました。それが本編のオランドになります。
自分の中ではもう一人の主人公的なポジションです。
アリア
元はオランドと同様に時々後輩の様子を見に行く先輩という役回りでした。アリアの立ち位置が変化したのもオランドと同様で帝国との戦争を書いている時です。オランドを立ち上がらせ、背中を押す役目を担ってもらいました。




