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お泊り会2

夜、ヴィータが、コン太とコン太の母親が寝静まった時間。ティアの部屋にはまだ明かりが灯っていた。ティアの部屋で、ティア、レフィリア、エレノアの3人が話をしていたのだ。ティアはレフィリアとエレノアの関係について興味津々で一言一句聞き逃さなかった。


レフィリアは、エレノアは、思い思いに覚えているお母さんの記憶、そして2人の思い出をたくさん語り合った。レフィリア自身も生まれてくる前のエレノアとお母さんのことに真剣に聞き入り時には涙した。エレノアに対しても母親として一緒に過ごしていたお母さんを誇りに思い感慨に耽っていたのだろう。エレノア自身にも思う所があるのだろう。時折静かに涙する。


ティアも自分の生い立ちを、武勇伝を苦労話を語った。2人は時には笑い、時には引き、ティアを奴隷としようとした貴族の名を覚えた。2人に名前を覚えられた貴族の未来は暗い。恐ろしく暗い。


話しは進みヴィータのこと、コン太のことを話し始めたティアは、2人の長所、短所を話す。レフィリアはヴィータの話をティアと一緒に過ごしている日々を真剣に聞いていた。レフィリア自身が未だ知り得ないことを知って幸せそうだ。レフィリアは長所も短所も含めてヴィータのことを愛しているという。エレノアのいる前で堂々と。エレノアは複雑そうだ。


エレノアはティアの言うヴィータの短所にだけ反応する。そしてそれをよく思わないレフィリアとエレノアの姉妹喧嘩が始まる。そこには姫と従者の関係はなかった。ティアはそれを微笑ましく見守り、頃合いを見て止める。


思い出話、自分語り、これからの夢、子供の話、出来うる限りのことを夢中になって3人は話す。レフィリアもエレノアもティアも、この女子会で友人として、姉妹としての距離が近づいていく。喜怒哀楽を共有する3人の絆は深まっていった。


女子会はお開きとなる。エレノアがそろそろ失礼しますと部屋を後にしたから。だがレフィリアとティアの話は終わらない。エレノアがいる前では聞けなかったヴィータのことをレフィリアが聞く。ティアもヴィータのことをどんどん話す。2人が睡魔に負けて眠りに落ちるその時まで。


レフィリアとエレノアがいる間に、ヴィータは一度、突発的に発生した大量の魔獣を討伐することになった。オランドに手伝ってほしいと頼まれたのだ。ヴィータは喜んで引き受けた。レフィリアは心配していたが、他の皆がヴィータなら大丈夫だと言って送り出した。


数日後、ヴィータは無事ケロッとした顔で帰ってきた。話を聞くに大したことがなかったらしい。ヴィータはそのまま2階にあるソファーに座っていた。数日のこととはいえ、疲れが溜まっていたのだろう。ヴィータはいつの間にかソファーで眠りに落ちていた。


今、2階にはヴィータ以外誰もいない。レフィリアはヴィータに労いの言葉をかけに2階へ上がる。するとそこには頼りない顔で安心しきったように、口を開けて涎を垂らして寝ているヴィータがいた。


レフィリア以外であれば、何て顔をして寝ているんだと呆れていただろう。けれどレフィリアは違った。初めて見たヴィータの寝顔を見れて喜び、そして微笑んだ。


ヴィータが安心して寝ている。それは平和の証。この王国に平和が戻ってきたと感じることが出来る寝顔。レフィリアはヴィータが戦場にいた時の顔を知っていた。それはヴィータの普段の顔とは全く違う、英雄の顔だ。


…………………………………


最後の砦、そこに腕を失ったヴィータが運ばれてきたのだ。全身が傷だらけで、苦痛に歪む顔をしていた。レフィリアにはヴィータがいなくなってしまうのではないかと、そう感じるほどに重傷だった。


レフィリアは恐怖した。自分が死ぬことよりも、お母さんと離れることになった時よりも恐ろしいと感じていた。失いたくないとそう思った。誰よりも先にヴィータの元へ駆け、自分に出来うる限りの方法で必死に、必死に回復魔法を掛け続けた。


ヴィータは苦痛に顔を歪めるも、レフィリアが生きていることに安堵した。そして再びヴィータの目に火が灯り、怪我が治ったらまた戦場に出ると言う。まだ戦いが終わっていないから、まだ守り抜いていないからと。


「ご、ごめんなさい。ヴィータさん。あなたにこんな怪我をさせてしまいました。本当に……本当にごめんなさい」


「どうしてレフィーが謝るの?」


「私は……私は……」


レフィリアが悪いわけではないのに、レフィリアは泣いて謝った。レフィリア自身にも何故謝ったのかそれはわからない。ポロポロと大粒の涙を流し続けていた。


「レフィー、泣かないでほしい。謝らないでほしい」


「で、でも……でも腕が……ヴィータさんの腕が……」


「腕が無くなっちゃったのは俺が弱かったからだ。俺がもっと強ければこんな事にはならなかった。レフィーが謝ることじゃない。それに俺はこの腕を失ったこと何とも思っていないんだ。ううん、俺にとって誇りだ」


「どうして……どうして誇りなんですか……私にはわかりません!」


「この怪我が俺にとって誇りなのは、それは初めて俺が大切な者を守れたと言える証だからだよ。初めて俺は勝てたんだ。レフィーを……みんなを初めて守れたんだ。だから俺は何とも思ってない。レフィーが泣くことなんてない」


「……ヴィータさん」


ヴィータは力強く言った。初めて勝てたと、初めて守れたと。レフィリアはヴィータに何度も守ってもらっている。なのにヴィータは初めてと言った。今のレフィリアにはその意味はわからない。けどヴィータの顔は誇らしそうに笑っていた。それはレフィリアのために無理やり笑った顔ではない。立派に成長した男の……心の底から笑う英雄の笑顔だった。


その笑顔はレフィリアの溢れる涙を止めた。最後の砦、危険な場所のはずなのに、もう大丈夫なんだと安心出来た。


「でもまだ終わってないんだ。まだ守り抜けていないんだ」


「どうしても……どうしても……また戦場に行くのですか?」


「まだみんな戦ってる。ここで休んでいるわけにはいかないんだ」


「…………」


「大丈夫だよ。俺は死なない。まだ死ぬわけにはいかない。大切な人をまだ守り抜けていない」


ヴィータは何度も何度も同じことを言う。自分の決意を再確認しているのだ。


ヴィータの目には


確固たる決意が

揺るがぬ信念が

決死の覚悟が


宿っている。必ず守ると。

そこにかつて様々な劣等感を抱いていた弱々しい男の姿はない。

ようやく自分を認めることが出来た男の姿がある。


そんなヴィータを止めるなんてレフィリアには出来なかった。ヴィータがまた立ち上がるのなら、それを支えたいと思うようになっていた。それは私の役目なんだと思うようになった。そうしてまたヴィータは戦場へ出て行ったのだった。

登場人物について


将軍

元々、ヴィータが自ら兵士を辞めたいと言う予定だった。それを受け入れてその後一切登場しないはずの人だった。

ヴィータが初めて戦争を経験することになる話を書き始めた頃、

いきなりヴィータが戦えるとは到底思えなかったので、狂気に触れて、恐怖に呑まれてしまうことになりました。それを立ち直らせるためのキャラクターが必要になりました。

それが本編の将軍になりました。


ヴィータの兵士時代は過去編みたいな感じでティアと兵士時代の話をすることになり、回想みたいにパパパッと話しを終わらせるつもりでしたが、頭の中で整理整頓出来なかったり、最初に書いていた方が面倒が少なく楽だろうということで最初に書き始めることになりました。

なのでメモ書きみたいに兵士時代には何年に何があったみたいなことが書いてあります。それを書いている途中で将軍の立ち位置が変わり、帝国将が生まれ、オランドとアリアの立ち位置が変わりました。


帝国将(帝国将軍)

物語を書いている途中でヴィータが帝国将と戦っている瞬間が頭に浮かんできたキャラクター。ヴィータが最後に激戦を勝利して雄叫びをあげる瞬間もすぐに頭に浮かんできました。

何の可能性もない主人公ではつまらない。そう思っていたら生まれてきました。

このキャラクターが生まれてくれたからこそ多少強引でも物語を完結させたいと思えました。書く意欲を高めてくれたキャラクター。

自分の中ではやはりライバルという存在は必要なのだと実感しました。

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