もう一つのエピローグ
あらすじにも書きましたが、本編を書いていくうちに、自分の中で登場人物たちの関係性が随分と変わっていきました。そのため矛盾点、相違点、後付け設定、おかしな点が多々出てきます。頭の中で思い描いた物語がうまくまとまっているとは思えません。本編との差異が出てくると思います。文才のない素人の自分が書いたものです。必ず出てくると思います。
あくまでも自己満足の範囲での物語となっているため、プロローグからエピローグまでの本編が壊れてしまうかもしれません。せっかく出来たいい物語を壊したくはありませんが、その可能性があります。期待外れな物語になってしまうかもしれません。
この前書きを読んで、読むのを止めようと思った読者さんは素直に戻った方がいいと思います。なので最初に長々とあらすじと前書きで注意書きをさせてもらいました。
時系列に関しても飛び飛びです。サブタイトルを見ればわかりますが、いきなりエピローグです。思い描くことが出来れば、兵士時代に突然戻ったりします。
それでも……と思える方のみ推奨するものです。
サブタイトルもちゃんと考えて、前書きにいつ頃のことか書きたいと思います。
もう一度書きます。
それでも……と思える方のみ推奨です。
ここはとある王国にある大きな街。
この大きな街の歴史は100年も経っていない。それなのにこの街は王国の中でも5本の指に入るほどの大きさを誇っている。その街はこう呼ばれている。
職人と学問の街と。
誰もが職人や学者、薬師、医者、様々なものになるために励み、王国内、いや世界に認められようと日々努力する街。職人の門を叩きたければこの街に行け。そう呼ばれるほどにこの街には様々な種族の技術が集まっていた。
小さな村だった頃、大商人であり、世界に名を轟かせた、エルフ族ですら教えを乞いたいと言うほどの細工職人が村を発展させるために自らの財源を使い、平民でも学ぶことが出来る学校を作った。
そして金のない平民たちにも学べるよう、自らの財源でその者達の学費を負担し続けた。それを聞いた子を持つ平民たちは我こそはと村へやってきて住み着くようになる。
様々な問題が起こるも、優秀な村長や大商人、その友人たちがすべて解決していった。その手腕は素晴らしいもので、貴族と平民たちによるいさかいを完璧と言っていいほどの形で治めていく。
その学校を卒業した者達はその村に住んでいた今や伝説とまで呼ばれる鍛冶職人、細工職人、薬師兼医者に教えを乞う。そしてその職人たちに負けないよう、追い抜こうと、それと同等の技術を身につけようと必死にその職人たちの元で学び続けた。
その結果、その街から輩出される職人たちは様々な場所で名を上げる。そしてその者達の話を聞き、その小さな村へ新たな職人志願者たちが集まっていく。その村が大きくなっていくにつれ、エルフが、ドワーフが、魔族が、獣人が集まり始める。大商人であり、細工職人でもあるその女性の子が獣人とのハーフという話もあり、差別意識がない村としても世界中にいる様々な種族たちの耳に入り、そうなった。
すべての種族達が住む世界で最初の街。そう呼ばれるようになった頃には観光地としても有名になっていた。様々な種族達の文化が取り入れられ、様々な職人たちの手で新しいものが作られていく。
誰でも学べる学校があり
どんな道にも進めるほど様々な職人がいて
身分や種族の壁がない。
そんな街。
もちろんすべてがうまくいったわけではない。けれどそれを乗り越えようと努力してきた成果。それがこの街、職人と学問の街として表れている。
誰もが認めるほどの職人は3人。
歴史に名を遺すほどの職人。
一人は鍛冶の神工と呼ばれる世界で初めて、オリハルコンを形にすることが出来たドラゴスの弟子となった人間の片腕の鍛冶職人。
その片腕の鍛冶職人はドラゴスの後を追うように日々努力し、ドラゴスが認め、ドラゴスと肩を並べるほどにまでの鍛冶職人となった。
ドラゴスの弟子たちの中で唯一ドラゴスと同じく、オリハルコンを形にすることが出来た伝説の鍛冶職人。それは自分が使う理想の剣を求めて作ったと言われている。片腕なのになぜか二刀一対の剣を作る。
鍛冶の神工と競い合うように数々の名剣、名刀を作り、お互いの技術の集大成を見せ合うために、同じ日に同じ場所で弟子たちが見守る中、オリハルコン製の武器を作る。その2人が打った二本の剣は完璧にオリハルコンの力を引き出した世界最高の剣となる。
一人は大商人であり、自らの財源となる細工品を作り上げる人間の伝説の細工職人。
エルフ族の中でも大長老に認められた者にしか与えられない称号を持つルナと呼ばれる女エルフの弟子となる。その見事な精巧なアクセサリーはルナに負けず劣らず、常に最高級の品を作る職人としてエルフ族ですら教えを乞いに来たと言われている。
商人としても優秀で、まだ見習いだった片腕の鍛冶職人と手を組み、自らの夫でもある伝説の薬師の才能を見抜いていたと言われている。夢であった大商人となり、王国内で知らぬ者はいないと言われるほどになったが、細工職人としての名の方が有名だ。大商人になるべく、商人稼業の片手間で細工職人となったはずなのに、細工職人としての名が有名なってしまったのは不思議な話である。街を発展させていくなかで最も精力的に活動したのがこの人だ。
一人は薬師としても名を知らしめていたルナの弟子となり、世界に名を知らしめた獣人の薬師兼医者。母親を救いたい。その一心でエリクサーを若くして完成させた素晴らしい志の持ち主として知られている。薬師として学んでいくなかで、医学も学んでおけば的確な処置が出来ると医学にも精通し、医者としても非常に優秀だ。
病気で悩んでいる者達に無償でポーションを作り、そして救った。その志に救われた者達が薬学、医学を学びたいとたくさんの者達が集まってきたそうだ。そこに種族の壁はなく、誰にでも丁寧に教えていたと言われ、獣人である自身を使いこの街に種族差別の意識が生まれないようにした。
そんな街の片隅に一つの家がある。
昔は子供たちがいて、弟子たちがいたその家はとても静かだった。もちろん今でも時折子供たちが孫を連れて遊びに来たり、弟子たちが様子を見に来たりはする。
けれども大きな街にまで発展したというのに、この家はまるで街にあるとは思えないほど静かな場所だった。人気はあまりなく、忘れられているかのようだ。閉鎖的な場所とも言えるかもしれない。
そんな静かな場所には老夫婦が暮らしている。今では昔を懐かしみ、思い出話をよくするようになった。楽しかったこと、悲しかったこと、嬉しかったこと、怒ったこと。喧嘩もした。それもいい思い出になったと最後は笑い合う。出会えてよかったと。
老人の男の名はヴィータ。物忘れが多くなったお年頃。それでも絶対に忘れていないことがある。いつまでも心に残り続けているものがある。最愛の妻、レフィリアのことを。
どんな時でもレフィリアを守り続け、守るために理想の剣を追い求め、ついにはオリハルコンを形に変え、自らの理想の剣として使った男。それほどの男の中には一貫した思いがある。
レフィリアを必ず守るという確固たる決意が
どんな状況でもレフィリアを守るために戦う意思を貫くという揺るがぬ信念が
レフィリアを守るためなら自らの命すら惜しまないという決死の覚悟を持っていた。
老人となったレフィリアは今なお美しい。誰が見ても美しいと称されるその女性は最愛の夫、ヴィータを支え続けた。ヴィータを支え、子を持ち、そして子を守った。片腕で不便な毎日を送るヴィータに不自由が無いように常に隣にいた。
どんな時でもヴィータを支え、愛し続けたその女性はヴィータの誇りだ。出会えて本当に良かったと、何度も、何度もお互いに口にする。
それはもうすぐ来てしまう終わりを悟ってのこと。
何度も何度も2人の愛を確かめ合う。
何度も何度も2人の愛を語り合う。
2人は涙を流さない。
2人はただただ笑顔だ。
昔は恥ずかしくて、ドキドキして、お互いに顔を赤くしてそれでもやめようとしなかった膝枕。今はお互いに微笑み合い、お互いのすべてを預け合うことの出来る関係となったことの証明となっている。
レフィリアはヴィータの頭を優しく撫でる。
ヴィータはレフィリアの美しい顔に触れる。
お互いの体温を感じ合う。
それももう終わり。
静かにヴィータの手が落ちた。
ヴィータはレフィリアに優しく見守られながら、静かに目を閉じ、その生涯の幕を閉じた。
ヴィータはこの世から去った。だというのにレフィリアは一度たりとも涙を流さない。別れを告げない。ただ静かに見守った。
そしてヴィータのすべてを見届けたレフィリアはヴィータにこう言っていた。
「私にはまだ、やり残していることがあります。だから少しだけ待っていてください」
レフィリアは1人になった家からほとんど離れなかった。心配になり、時々会いに来る子供や孫を暖かく迎えながら、思い思いに日記のようなものを書き続けた。
それはヴィータとの思い出を綴ったもの。
初めてお互いの存在に気付き、手を振り合ったこと
お互いの悩みを打ち明けあったこと
レフィリアがヴィータに会いに行ったこと
ヴィータが救国の英雄と呼ばれるようになったこと
恋人同士になり、晴れて結婚したこと
子が生まれ幸せだった日々のこと
ヴィータが伝説の鍛冶職人と呼ばれるようになったこと
孫が生まれ2人で笑いあったこと
お互いの思い出話をしたこと
そしてヴィータを最後まで支え、見守り、見届けたこと
それは後の救国の英雄ヴィータの生い立ち、救国の聖女と呼ばれた王国の姫レフィリアのことが、全てが綴られた歴史書として残り続ける。
その本の最後にはこう書かれていた。
これまでも
今も
そしてこれからも
ヴィータさん
あなたを愛し続けますと
そしてそれを書き終えたレフィリアは静かに息を引き取った。それは先に行ったヴィータを追いかけるように。
ここはどこだろうか?
それに答えられる者はいない。
なぜならここは世界の外だからだ。
レフィリアは歩き続ける。
歩き続けた先に一人の青年がいた。
片腕ではないその青年は
レフィリアが生きていた世界で
最も長く時間を共にした青年
ヴィータだった。
ヴィータは待っていてくれた。
ヴィータはレフィリアを見守っていた。
レフィリアは笑う。
ヴィータも笑う。
ヴィータが手を差し出した。
レフィリアは慣れた手つきでその手を取った。
2人は手を繋ぎ、そして歩き出す。
微笑み合い、握りしめた手を離さず
また2人で道なき道を2人で歩いて行く。
そこに不安はなかった。
なぜならヴィータにはレフィリアが
レフィリアにはヴィータがいるから
2人はいつまでも幸せに歩き続けていた。