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学びの道(2)

マロイの寮にいた生徒は八人。第一、第二学年の四人と、未だ名前を知らぬ第三学年の少女、そして寮に残った二人を数えても一名の不足がある。


「あの、そろそろ返して頂けませんか……?」

「アァ、これはシツレイしました。勝手に扱って申しワケない」


それを補うのはこの女性、妙な語調とちぐはぐな言葉遣いが目立つ彼女は名をセオといった。

レントに及ぶかという背丈、それでいてシルフェ達と変わらぬ細い身体。開ききっていないグレーの瞳は気だるげに見えるが、そうした印象を引き起こしている要因はそれだけでない。手入れが不十分でぼさついた赤毛、身体に今一つ合っていない服装。体裁を繕うのが心底面倒だという様子だ。


一方彼女のもう一つの特徴に、一般的な単人ヒテロと異なり、耳が細長く先の尖っている点を挙げることが出来る。こうした人々はそのまま尖耳族エリシャルと呼ばれる。小人ドウェルネ獣人リグランジェのように「人」の字を持たないのは、「それ以外に目立った特徴が無いから」に他ならない。

尖耳族は大意的にはただの人間だと見なされているのである。


「駄目だよ、まだシルフェちゃんはセオのこと全然知らないのに」

「シツレイでしたね、まったく。迂闊でした」


シルフェは、彼女の様子が怠惰に映るのは見た目ばかりでないと思った。声色にあまり抑揚が無く、その上低い。発音や語法が微妙に成熟していないのも相まって、感情の伝達が満足に行えていなかった。


「すまんな、シルフェ。セオは気になった服や装飾品を見ると何かと順序を飛ばして接してしまいがちでな」

「いえいえ、何かが減ったということも無いですから」


シルフェは誤ってセオへの警戒心の現れと捉えられぬよう、なんとなく帽子のつばにかけていた両手を離し、顔の横で振りながらはにかんだ。


「あなた、そのボウシはどこで買いました?」

「えっと、貰ったんです。友人、というかルエッタに」


一同の視線がルエッタに集まる。ルエッタからしてみればぼんやりと話を聞き流していた時に突然名前を呼ばれ、振り向けば一斉に全員と目を合わせることになったため、今や視線を迷わせてしまっている。


「アァ……それは、ますますシツレイをしましたネ」

「大丈夫です、丁重に扱ってくれていたようですし」


こちらもあまり抑揚のある声ではないため、受け取りようによってはつんけんして拗ねているようにも聞こえるのだが、事実としてセオは服飾品をぞんざいに扱うことは決してない。これは新入りの二人以外には周知の事実である。


「ルエッタちゃんが作ったのかぁ、すごく丁寧だよね」

「成人のお祝いに作ってくれたんです」


言われたままの経歴を持つこの白い帽子は確かに精巧で、細部の造りにも余念が無い。シルフェは今でもその喜びを鮮明に思い出せる、と顔を綻ばせる。

一方で先ほどから注目を浴びたままのルエッタはいよいよ恥ずかしさに堪えかねて、一団から少し離れて顔を背けていた。


一方でシルフェは、学院へ向かう道を共にしながら口を閉ざしたままの少女を気にかけてもいた。朝方裏口ですれ違った、鮮やかな金髪と不安げな顔が記憶に残る彼女である。今やマロイの学寮で名前を知らないのは彼女ひとりなのだが、避けられているかのような距離感に阻まれ話す機会も訪れない。誰かとの会話から名前を聞き取れるかと思ったが、クルシャやレントとさえも、道中では一言二言ばかり交わしただけだった。


「シルフェちゃんはさ、どうして学院に行こうと思ったの?」


クルシャに話しかけられ、向き直る。聞かれた内容に顔が明るくなった。聞いてくれるのを待っていたかのようだ。


「実は私、三年前にこの学院の方とお会いしたんです」

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