冬にはあったかい鍋が8
グオーグオーという大きな寝息、クピクピ聞こえるかわいい寝息。背中から敷布越しに伝わってくる、じんわり温かい砂の感触。
「クァーゥ……」
ポテポテ聞こえる足音に目を瞑ったまま寝転がり腕を伸ばすと、背中からギュッと抱きしめられた。
「フィカルーおはよー」
「まだ早い」
「かわいこちゃんが遊びに来てるよー」
私の手のひらに乗っかるようにぽてっと転んだ赤ちゃん竜の、お腹の柔らかさといったら。寝ている場合じゃない。
体を起こすと、クァ、とあくびをする赤ちゃん竜が目線の高さにいた。最高の目覚めってたぶんこういうことだと思う。
近付いてきた赤ちゃん竜を抱きしめ、そっと降りてきて近付いてきたスーの鼻先も抱きしめ、アルそっくりのヘソ天爆睡な赤ちゃん竜にはそっとブランケットをかけて、私はぐっと伸びをした。
「あー、ぐっすり寝た。あったかいし安心するし、疲れが一気に取れたね」
寒さで首をすくめて歩いたり、冬支度のためにあちこち走り回ったり、ここへ来るための長距離の旅だったり、そういったことで蓄積されていた疲れが温泉でとろけて、美味しいごはんで押しやられ、かわいい光線を浴びてすっかりサッパリ消えてしまった。ぽかぽかな寝床で手足の先までリラックスしている気がする。
「もはや野宿っていうかホテルだよねここ。アルもいつも以上に脱力してるし……スーは気を張っちゃってるかな」
「夜中に出かけていた」
「あ、そうなんだ。スー、気分転換できた?」
スーは寒い地方で暮らしていたので、トルテア周辺の冬はさほど問題にならないようだ。スーは他の竜と交流したがらないので、せめて街が近くにない場所で楽しく飛び回ってストレス発散してくれていたらいいなと思う。
よしよしとスーの喉の下辺りを撫でると、スーはグルグルと喉を鳴らし、それからフィカルに小さく鳴いて飛び立っていってしまった。ごはんを探しに行ったようだ。
「フィカルもゆっくり休んでね。いつも頑張ってくれてありがとう」
手櫛で髪を梳かしてあげると、フィカルは目を細めてされるがままになった。機嫌がいいようだ。冬支度みたいな街で協力する作業が多い仕事は、毎日色んな人と関わり合うことになる。あんまり誰かと一緒にいるのを好まないフィカルも、ここで気を緩めてくれるといいなと思った。
「スミレも休むべき」
「私はいっぱい休んだよ! もうしっかり元気」
「もっと休むべき」
「じゃあ一緒に休もうね。ほらフィカルもこのかわいいの頂点ちゃんたちを抱っこして」
他のアズマオオリュウたちも起き出したのか、両手で赤ちゃん竜をそっと運ぶ姿の親御さんたちがちらほらとやってきた。どの竜もリラックスした夜を過ごせたのか、穏やかな目付きで喉を鳴らしている。
「いらっしゃーい。親御さんはいってらっしゃーい」
アズマオオリュウの成竜たちは赤ちゃん竜を振り返りながら、狩りへと各々飛び立っていく。私たちも朝ごはんの用意をする必要があるけれど、今はもうちょっとこの幸せ空間を満喫することにした。
「見てフィカル! 腕いっぱいの赤ちゃん竜たち……この絵描いて! お願い!」
フィカルは頷いて、紙を広げる。出来上がった絵は、また今度竜愛会で自慢することにしよう。




