終曲目『夏雪祭最終日・後夜祭……真実と告白』
《♪》
【夏雪祭】最終日【後夜祭】
バンドは大成功だった。俺の恥ずかしい歌も、青春の一ページになってしまったが、それも仕方ないとため息を吐いた。
今、中庭で、【後夜祭】のキャンプファイヤーが行われていた。
俺は脇目も振らず屋上に向かった。今、屋上の扉の前に来ていた。緊張する。でもここで進まらなきゃ駄目な気がした。だから気持ちも纏まらない俺は扉を開けた。
「ん、きた」
そこにはいつも制服姿に戻ったシャリアがいた。
「おう。きたぞ」
俺は恥ずかしいからぶっきら棒にそう答えてしまう。
「バンド良かった」
「そうだな」
「ハルキの歌も悪くなかった」
「そ、それはありがとよ」
俺はそれを聞くと、つい顔を背けてしまう。
「あんまり嬉しくない?」
「恥ずかしかったからな」
「いい曲なのに」
「そうかよ」
「ふふ、ハルキ可愛い」
シャリアが笑う。
「う、ほっとけ」
俺はその笑顔に反応出来ない。
………………。
しばしの沈黙。そして意を決したようにシャリアが言う。
「合宿の時の質問の答え聞きに来た?」
「ああ」
「もう一回聞いて、今なら答えられる」
「分かった。なんで俺を探してたんだ?」
「それはアリア姉に頼まれたから」
それは唐突な言葉だった。俺は固まってしまう。
「それって……」
「アリア姉は死に際、私に言った」
『ハルキはきっと後悔するだろうから。お願い。ハルキを一人にしないであげて。彼、寂しがりだから』
それを聞いて俺は何も言えなかった。
「でも、今、私が、ハルキの隣にいる理由別」
「え」
「ハルキは小さい頃、私を助けてくれた」
「助けた。俺が?」
俺は聞き返す。
シャリアは頷き言う。
「ハルキは覚えてないかもしれないけど。私が初めてハルキに会ったのは、十一歳の時、アリア姉に連れられてハルキが私の【病室】に来た。私は昔から心臓が弱かったから、外を歩くことも出来なかった。でもその時、ハルキが来た。そして人前で弾くのが嫌いなのに、私のためにヴァイオリンを弾いてくれた。それから外の話をたくさん私にしてくれた。その時からハルキといるドキドキしたし嬉しかったし、外に出たいと思った。でも、ある日、アリア姉が車に跳ねられて死にかけの状態で運ばれてきた、もう助からないって聞いた時、アリア姉は私に言った。『私の分まで生きて』って。アリア姉は私に心臓くれた。私はアリア姉に命を貰って外に出た。そしてあなたを探した。それがことの顛末」
シャリアの話を聞いて、俺の口からは何も言葉が出なかった。
でも俺は自分の気持ちを捻り出した。
「その思いは誤解だよ。そこに俺への思いは何もない」
それに対する返事は意外な物だった。
「知ってる」
「だから今の私の気持ちは、ハルキと再会してからの気持ち。どこかに昔の思いが残ってても私は今の気持ちを大事にしたい」
俺はそれを聞いてはっとする。シャリア自分の中の気持ち、全てに折り合いをつけてこの場に臨んだのだ。
「だから、ハルキ。私は気持ちを伝える。受け止めてくれる?」
そういうシャリアの瞳には涙が浮かんでいた。俺はそれに答える。
「ああ」
俺がそう言うとシャリアが、抱きついてくる。
そして言う。
「私はハルキのことが好き! 付き合って!」
俺はそれを優しく受け止め返す。
「俺も好きだよ。シャリア」
俺がそういうとシャリアは俺に満面の笑みを浮かべて言う。
「下でみんな踊ってる。踊ろうハルキ」
「喜んで」
俺とシャリアはクルクル回り踊る。二人は互いの大切に思いながら雪の中を舞う。
こうして二人の夏色の雪は終わりを迎えた。
《♪》
夏の季節『夏色の雪』編はこれにて終了。次回は秋のつもりですが、未定です。近いうちに投稿すると、思いますので、待っていただけると、幸いです。