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四季逆の唄~Reverse Season~  作者: 臣将汰
夏の季節『夏色の雪』
9/9

終曲目『夏雪祭最終日・後夜祭……真実と告白』

《♪》



【夏雪祭】最終日【後夜祭】


 バンドは大成功だった。俺の恥ずかしい歌も、青春の一ページになってしまったが、それも仕方ないとため息を吐いた。

 今、中庭で、【後夜祭】のキャンプファイヤーが行われていた。


 俺は脇目も振らず屋上に向かった。今、屋上の扉の前に来ていた。緊張する。でもここで進まらなきゃ駄目な気がした。だから気持ちも纏まらない俺は扉を開けた。


「ん、きた」


 そこにはいつも制服姿に戻ったシャリアがいた。


「おう。きたぞ」


 俺は恥ずかしいからぶっきら棒にそう答えてしまう。


「バンド良かった」


「そうだな」


「ハルキの歌も悪くなかった」


「そ、それはありがとよ」


 俺はそれを聞くと、つい顔を背けてしまう。


「あんまり嬉しくない?」


「恥ずかしかったからな」


「いい曲なのに」


「そうかよ」


「ふふ、ハルキ可愛い」


 シャリアが笑う。


「う、ほっとけ」


 俺はその笑顔に反応出来ない。


 ………………。


 しばしの沈黙。そして意を決したようにシャリアが言う。


「合宿の時の質問の答え聞きに来た?」


「ああ」


「もう一回聞いて、今なら答えられる」


「分かった。なんで俺を探してたんだ?」


「それはアリア姉に頼まれたから」


 それは唐突な言葉だった。俺は固まってしまう。


「それって……」


「アリア姉は死に際、私に言った」



『ハルキはきっと後悔するだろうから。お願い。ハルキを一人にしないであげて。彼、寂しがりだから』



 それを聞いて俺は何も言えなかった。


「でも、今、私が、ハルキの隣にいる理由別」


「え」


「ハルキは小さい頃、私を助けてくれた」


「助けた。俺が?」


 俺は聞き返す。

 シャリアは頷き言う。


「ハルキは覚えてないかもしれないけど。私が初めてハルキに会ったのは、十一歳の時、アリア姉に連れられてハルキが私の【病室】に来た。私は昔から心臓が弱かったから、外を歩くことも出来なかった。でもその時、ハルキが来た。そして人前で弾くのが嫌いなのに、私のためにヴァイオリンを弾いてくれた。それから外の話をたくさん私にしてくれた。その時からハルキといるドキドキしたし嬉しかったし、外に出たいと思った。でも、ある日、アリア姉が車に跳ねられて死にかけの状態で運ばれてきた、もう助からないって聞いた時、アリア姉は私に言った。『私の分まで生きて』って。アリア姉は私に心臓くれた。私はアリア姉に命を貰って外に出た。そしてあなたを探した。それがことの顛末」


 シャリアの話を聞いて、俺の口からは何も言葉が出なかった。

 でも俺は自分の気持ちを捻り出した。


「その思いは誤解だよ。そこに俺への思いは何もない」


 それに対する返事は意外な物だった。


「知ってる」


「だから今の私の気持ちは、ハルキと再会してからの気持ち。どこかに昔の思いが残ってても私は今の気持ちを大事にしたい」


 俺はそれを聞いてはっとする。シャリア自分の中の気持ち、全てに折り合いをつけてこの場に臨んだのだ。


「だから、ハルキ。私は気持ちを伝える。受け止めてくれる?」


 そういうシャリアの瞳には涙が浮かんでいた。俺はそれに答える。


「ああ」


 俺がそう言うとシャリアが、抱きついてくる。

 そして言う。


「私はハルキのことが好き! 付き合って!」


 俺はそれを優しく受け止め返す。


「俺も好きだよ。シャリア」


 俺がそういうとシャリアは俺に満面の笑みを浮かべて言う。


「下でみんな踊ってる。踊ろうハルキ」


「喜んで」


 俺とシャリアはクルクル回り踊る。二人は互いの大切に思いながら雪の中を舞う。

 こうして二人の夏色の雪は終わりを迎えた。



《♪》

夏の季節『夏色の雪』編はこれにて終了。次回は秋のつもりですが、未定です。近いうちに投稿すると、思いますので、待っていただけると、幸いです。

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