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四季逆の唄~Reverse Season~  作者: 臣将汰
夏の季節『夏色の雪』
8/9

八曲目『夏雪祭最終日・《夏色の雪》』

《♪》



【夏雪祭】最終日


「ヒドい、二人とも本当にヒドいです」


 俺は涙目だった。

 二日連続でメイドになったのだ。精神的苦痛図りしなかっただろう。英子さんと雄太さんは平謝りする。


「いや――。本当に悪かったよ。ゴメン」


「ゴメンね。でも可愛すぎたハルキくんが悪いんだよ」


 二人の言葉に涙腺が崩壊するハルキ。


「うわぁぁぁぁぁん!」


「よしよし」


 シャリアは俺を慰めるように頭を撫でていた。


「まあ、ホントに可愛かったしね! はるるん!」


「まあ、あれは反則だから。仕方ないよ。ハル」


 ここに味方はシャリアしかいなかった。


「でもハルキ可愛かった」


 シャリアが裏切った!

 今度は灰になった。

 演奏開始、一時間前だったが、緊張は誰もしていなかった。

 そして本番。



《♪》



 俺達はオオトリだった。流石に全部門のトップばかりで、結成されているだけあって期待度も高い。衣装に袖を通すと意識がバリバリと皮膚にくるのが伝わる。


 でも俺達は皆、笑顔だった。

 すると雄太が言った。


「ここはハルキに音頭を取って貰おうかな」


「え!」


 英子さんも雄太さんの言葉に続く。


「そうだね。それがいいよ。なんたって【氷奏王子様】復活だもんね」


「英子さん!?」


 それに皆見も続く。


「いいね。いっちょデカいの頼むよ。はるるん!」


「皆見まで!」


 二津はいつも通り楽しそうに言う。


「ほらほら、頑張れ王子様」


「マジかよ。二津」


 最後はシャリアだ。


「お願い、ハルキ」


「シャリア……分かった」


 俺達は円陣を組む。


「雄太さん。そういえばバンド名は何ですか?」


「ハルキが決めて」


「分かった。この人、全部俺に丸投げしたいだけだ!」


「いいから早くぅ」


 英子さんに急かされる。


「じゃあ。【リバースシーズン】で」


 俺は俺が四季逆を英語にして言った。


「いいんじゃない?」


 皆見が言う。


「よし! じゃあ【リバースシーズン】に決定! さあ、ハルキ!」


 二津がボルテージを上げる。俺はコクンと頷く。


「皆、短い間だったけど、俺とシャリアを入れてくれてありがとう。これからも活動するかは分からないけど、全力で行こう!」


「「「「「おう!」」」」」


 俺達の心が一つになった。俺達のステージが始まる。



《♪》



 もう次で最後の曲だ。俺はギターからヴァイオリンに持ち変える。

 そして最後の曲紹介が終わる。


「では、お聴きください。【リバースシーズン】、オリジナル曲です。【夏色の雪】」



《♪》



 夏に降る雪は陽炎のように儚く、

 幻みたいな奇跡の空。

 太陽みたいに笑った君の笑顔は、

 もう二度とみれない筈だった。


 夏の色は雪の色とは真逆で、

 雪は夏色にはなれない。

 人の心はそうは変われない、

 でも変える勇気は夏色の雪。


 きっとこれはありえない現象、

 そこにあるのに届かない白昼夢。

 今はあってもいつかは消える、

 雪のように儚い蜃気楼。


 夏の色は雪の色とは真逆で

 雪は夏色にはなれない。

 恋はそう実らない、

 でも実らせる努力は夏色の雪。


 影を追うのはもうやめよう、

 彼女は彼女で君は君だ。


 夏の色は雪の色とは真逆で、

 雪は夏色にはなれない。

 人の心はそうは変われない、

 でも変える勇気は夏色の雪。


 夏の色は雪の色とは真逆で

 雪は夏色にはなれない。

 恋はそう実らない、

 でも実らせる努力は夏色の雪。



《♪》



 曲は俺のヴァイオリンの前奏から始まる。テンポの速い曲だが問題ない。パガニーニの曲と比べたら簡単である。

 そしてシャリアが歌い始める。 いつ聞いても素晴らしい美声である。いつものほほん、とした印象を受けるシャリアだが、歌っている時の印象はガラリと変わる。表情は真剣そのもの歌の中にも力強さがある。


 俺は見惚れないように演奏に意識を向けた。歌詞はほとんど頭に入ってこなかった。というか入れたくなかった。だってこれは俺の、シャリアに対する想いなのだから。恥ずかしすぎて聞けたものでは無かった。心の中でまた黒歴史を作ってしまったとなげいた。



《♪》


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