表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四季逆の唄~Reverse Season~  作者: 臣将汰
夏の季節『夏色の雪』
2/9

二曲目『孤独な演奏会』

《♪》



 俺は自分の住んでるマンションに帰ると鞄を玄関に投げ捨て、ヴァイオリンだけを肩から下げて再び、マンションを出た。


 マンションを出る頃にはちょうど良いことに雪は止んでいた。

 しばらく歩くと、学園のそばに大きな山、【()織山(おりやま)】がある。

 その山の麓に【(てん)(かく)公園(こうえん)】と呼ばれる公園がある。そこの公園には林があり、林の中にちょっとした池がある。俺がヴァイオリンを弾く時は、いつも決まってその池の側で弾いていた。


 俺は池に着くと近くのベンチにヴァイオリンケースを置き、そこからヴァイオリンと弓を取り出す。そしてヴァイオリンを肩に乗せ、その上に顎を置き、弓を弾く。


 奏でる曲は【二十四の奇想曲 第二十四曲】。作曲者はニコロ・パガニーニ。彼は生前、その類まれなる演奏技術から『パガニーニの演奏技術は、悪魔に魂を売り渡して手に入れたものだ』と言われていた。そんな彼が作った曲を演奏するには高い技術が求められる。しかし俺はそれをいとも簡単に弾く。自らの気分で弾く曲が変わるが、今日はこのモヤモヤした感情を全てヴァイオリンに乗せて奏でる。

 いくつも変わるコード、激奏と言えるほど激しいリズム、今だけは全てが心地良い。


 俺は自ら感情を今だけはと、ヴァイオリンに流し込んだ。



《♪》



 一頻りヴァイオリンを弾き終えると、気がつけば雪がまた降り始めていた。俺は急いでヴァイオリンをケースに直すと帰路につくため立ち上がる。

黒いパーカーについているフードを深く被り、ヴァイオリンケースとを背負い、降る雪を避けながら帰路につく。そして公園を出る時、俺は目を疑った。


「ありえない。何故君がここに」


 俺の口から毀れた。

 俺の目の前には長い銀髪に雪を積もらせた少女がそこにいた。

 少女はかつて俺が愛していた『彼女』と売り二つの容姿をしていた。


「それは、簡単。あなたを迎えに来た」


「なにを言ってる。馬鹿にすんな。俺は二度と人前で演奏する事は無い」


 俺はそう言って、ヘッドフォンを付け歩き出す。


「別にそういうつもりで来た訳じゃない。でも、それは、あの『事故』でアリア姉が死んだから?」


 その少女とすれ違う時にそう言われ、俺は立ち止まる。

 それを聞き、俺はつい尋ねてしまう。


「シャリア。……お前は俺を恨んで無いのか?」


 少女、シャリアは答える。


「恨んでない。あれはアリア姉が悪かった。あなたが責任を感じる必要なんて無い。それに……」


 俺は黙って話を聞く。


「とにかく、しばらく私は【四季島】にいる。今日は挨拶。それだけ」


 そう言うとシャリアは立ち去った。

 俺は歩き出し、通学路の途中にあるトンネルの壁に背を預け、涙を流し嗚咽を漏らした。



《♪》


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ