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精霊と亡国の姫君  作者: 皐月乃 彩月
1章 はじまりのはじまり
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6話 性悪なのは貴方の方ですよ!


瑠璃の羨望の眼差しを受けながら、何とか実技の授業を乗り越えた後、白雪達は教室に戻る為に校舎へ移動しようとしていた。

先に行ってしまっていた瑠璃に続いて校舎へ戻ろうとした時、瑠璃が廊下で立ち止まっているのを見つけた。


「……瑠璃ちゃん?」


「――お前の顔を見るなんて、今日は厄日だな」


白雪がどうしたのかと尋ねようとすると、そんな刺々しい言葉が聞こえてきた。


「一輝様……お久しぶりでございます」


どうやら声の主は瑠璃の知人のようで、腰を折り軽く頭を下げていた。


……偉い人、何でしょうか?

何だか沢山の人を引き連れているようですし。


白雪は瑠璃の背後から顔を出して、その声の主を見てみる。

真っ白な髪に純白の瞳の同い年くらいの少年、濁りのないその同系色の色彩は紛うことなき王族の色。


そして、あの色は――――


「……白雪、彼は至光しこう 一輝かずき。光の国の王子で、第一王位継承権を持つ王太子です。そして……瑠璃さんの婚約者でもあります」


白雪が考えていると、後からこそっと鈴が少年の情報を教えてくれた。


「……何だか瑠璃ちゃんに対して、あの人態度が刺々しくないですか? 婚約者なのに……」


白雪は疑問に思った事を、鈴にこっそり聞いた。

婚約者と言うには、先程から彼が瑠璃に向けている視線にはキツいものがある。

殺意と呼んでもいいくらいの憎悪が、その目にはあった。


「……詳しくは知りませんが、幼少期から2人の仲は険悪なようです。ただ……瑠璃さんがというよりは、至光 一輝の方が毛嫌いをしているようですが……」


「瑠璃ちゃんを嫌う?……瑠璃ちゃんはとっても優しくて、美人さんなのに」


鈴が説明してくれても、白雪は今一納得できず首を傾げた。

友達の欲目を抜いても、瑠璃は容姿端麗で成績も優秀だ。

性格も面倒見がいいし、欠点は特に見つからない。

むしろ、多勢に無勢で1人の女の子を睨み付けている相手の方が、感じが悪いくらいだ。


3拍子揃った瑠璃ちゃんを嫌うなんて…………はっ! もしかして彼はB(ブス)専!?

……でも、それなら納得ですね。


「……噂だと、瑠璃さんは昔は傲慢で我が儘三昧だったらしい」


白雪が理由を推理していると、その疑問の答えは翔によってもたらされた。


「傲慢? 我が儘??」


しかしその答えは、益々白雪の首を傾げさせた。

知り合って間もないが、瑠璃は素性の知れない平民として通っている白雪にも親切で、無理難題を押し付けられたことは1度たりともない。


「ふんっ! 貴様の言うことなど信用できるかっ!! いい加減俺に付き纏うのはやめろ!」


白雪がもやもやとしていると、少年の冷淡な声が響いた。


あっ! 鈴と翔と話してたら、瑠璃ちゃん達の会話を聞き逃してしまいましたっ!?


「ですから、……私は一輝様にお会いしに来た訳ではありません。……それでは私は次の授業がございますので、失礼させていただきます」


「待て、逃げるのか?」


至光という少年は、刺々しい態度にも穏便に対応して教室に戻ろうとする瑠璃の腕を掴んで、その場に留めた。


「痛っ! 腕をお離しください一輝様」


掴む力が強かったのか、顔を僅かに顰めて言った。


「貴様の事だ。今度は何を企んでいる? 猫を被る事を覚えたようだが、俺は騙されんぞ。本当に貴様のような人間が、俺の婚約者などと……虫酸が走るっ!」


瑠璃の抗議には耳を貸さず、そう一方的に至光という少年はいい放った。


……何ですか? この人は?

過去はどうあれ、今の瑠璃ちゃんはとってもいい子です。

むしろ、性格悪そうなのは至光という人の方です!!


白雪は2人の間に入ろうした。


「白雪! 駄目ですよ! ここで目立つような事をしては!!」


しかし、白雪が行動は移すまえに、鈴によってそれは止められた。


「でも瑠璃ちゃんがっ!!」


白雪は一応隠れている身なので、万が一にでも目をつけられる訳にはいかない。

ましてや相手は、光の国の王族。

光の王族は、現在七つの国を纏める立場にある。

瑠璃が王族だと分かった時、今では認めてくれいるが、最初は深く関わることを鈴は賛成しなかった。

相手の性格がどうあれ、目立つことに違いないからだ。


でも、私が行かないと!

私は瑠璃ちゃんとお友達なんだから!


先程から、ざわざわと異変に気付き始めた生徒達が集まってきているが、誰も瑠璃を助けようとはしない。

相手の身分が高いだけに、皆関わりたくないのだろう。


「……俺が行く。白雪が行くよりマシだろう」


白雪が納得しないのを見ると、翔が前に出て言いました。


「翔……」


「白雪が目をつけられるのは、幾らなんでもマズいだろ? だからと言って、瑠璃さんは友人だ。……ここで見てみぬ振りをするのは、誇り高き氷の国の名折れだろ?」


翔は珍しくほんの少しだけ笑みを浮かべると、すぐに真剣な表情になり瑠璃の前に割って入りました。


「そろそろ手、離してくださいよ。痛がっている」


頼みます、翔。

瑠璃ちゃんを助けてあげてください。

 

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