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精霊と亡国の姫君  作者: 皐月乃 彩月
1章 はじまりのはじまり
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4話 彼女から見る、出会い

瑠璃ちゃんsideです。


私、水城 瑠璃は乙女ゲームの悪役令嬢だ。

10歳の時、前世の記憶を思いだし驚愕した。


“私はゲームの悪役令嬢と、全く同じ運命を辿っていたからだ”


婚約者にはしつこく付きまとい、義理の弟には親の目が無いところで苛めぬいていた。

また時には取り巻きを使い、邪魔な奴等を排除していた。


私が思い出したときには、既に詰んでいるレベルで攻略対象者には憎まれていたのだ。

前世の感覚を持った今、記憶を思い返すと自分でもクズだったと思う。

唯一良かった点と言えば、まだ暗殺や殺人を指示したりはしていなかった事だけだろう。

それだけは本当に良かった。

前世を思い出してしまった今、そんな事をしていたら首を括ってしまっていただろう。

あとは……外面はよかったので、両親にはまだ嫌われていない所か。

だが、婚約者と義弟は手遅れだった。

当初何とか関係を改善しようとしたが、裏を疑われるか、更に嫌われるだけだった。

私はこれ以上嫌われると、自分の死亡フラグがヒロインが現れる前に立ちかねないので、彼等とは距離を置くことで乙女ゲームからの脱出を試みた。

そして取り巻き達とも、距離を置き縁を切った。

すると私の周囲には誰も居なくなったが、それもしょうがないと思った。


“0から始めよう”


私は今までサボっていた勉強や教養を、必死に学んだ。

過去の悪評は完全には無くならなかったが、少しずつ私を認めてくれる人も現れるようになった。

両親には今までの悪事を全て白状し、私が傷付けた人に対し補償をして貰った。

私が話した時両親は私を酷く叱ったが、一緒に謝罪に回ってくれた。

本当にいい両親である。

この両親の子供がどうして悪役令嬢になんか身を落とすのか謎だが、恵まれている事に感謝をしなくては。


そうして5年が過ぎ私は15歳になり、八華学園の高等部へ入学した。


この学園がゲームの舞台……

来年には、ヒロインが入学して来る。

大丈夫、きっと私は運命を変えられる。


瑠璃は不安を抱えながらも、門を潜ろうとした。

すると門の近くで、辺りをキョロキョロ見回している新入生らしき女の子が見えた。


「貴方も新入生ですか?」


瑠璃は驚かせないように、優しくその少女に声をかけた。

もしかしたら、迷子なのかもしれない。


「はい、そうです! あなたもですか?」


すると少女は振り返り、嬉しそうに微笑んだ。

重たい、黒髪を三つ編みにして、分厚いレンズのメガネかけた少女だった。


前世だとこういったタイプの子は根暗なタイプが多いけれど、この子は凄い明るい子なのね……


「えぇ、私は水城 瑠璃と申します。属性は水てす。よろしくお願いします」


瑠璃は礼儀正しく、頭を下げる。


初めが肝心だ。

王族として、少しずつ印象を良くしていかないと。


「おぉーっ!! すっごい美人さんですねぇー! 私も水です! 一緒の科です!! 樋室 白雪です、よろしくお願いします!」


少女は最初の印象を裏切るように、テンション高く瑠璃の手を上下に振りながら挨拶された。


す、すごいフレンドリーな子ですね……

それに私の事を全く知らないみたいだし、平民の子なのかしら?


私の髪や目の色は目立つ。

同色の髪と目の色を持つものは、王族だからだ。

貴族なら常識。

それを知らないこの子は、平民なのかも知れない。


「ふふっ! 私は中等部から通っているんです。よかったら校内をご案内しましょうか?」


学園に初めて来たのなら、この広さに驚いた事だろう。

この学園はとてつもなく大きい。

誰かが案内してあげた方が、今後便利だろう。


「いいんですか!? やったぁー!!」


跳んで喜ぶ彼女が、この先無二の親友となることをまだ瑠璃はこの時知らなかった。






◆◆◆◆◆◆◆







入学して3日後あまりにも衝撃的過ぎて、瑠璃は廊下で1人愕然としていた。


「な、何故!?」


瑠璃の視線の先には、貼り出された入学直後のテスト結果があった。


私前世を思い出してから、勉学もサボらず頑張ったので成績はかなりよかった。

だからこの学科ごとに貼り出される順位結果では、トップ3には余裕で入っていると思っていた。

よしんば入ってなかったとして、1番上に書いてある名前だけは予想していなかった。


“樋室 白雪 800点”


それは入学式で会った、変わった子の名前だった。

しかも点数は満点。

2位と10点以上の差をつけての1位。


あのポヤポヤの子に負けた!?


今回は試験が難しかったのか、平均点は低い。

その中で満点……


あのポヤポヤに……


瑠璃はやるせない敗北感に、打ちのめされた。


ポヤポヤだったのに…………


「あっ! 瑠璃ちゃんっ!!」


私が立ち尽くしていると、最近聞いた間の抜けた声が聞こえた。


「え、あ……」


瑠璃はまだショックから立ち直れず、返事が上手く返せなかった。


「先日白雪がお世話になった方ですね。その節はありがとうございます。私は北海 鈴と申します」


「北海 翔……よろしく」


瑠璃がわたわたしていると、樋室 白雪の背後から2人の少年少女が現れた。

少女、北海 鈴は水色のショートカットに青い眼の美少女。

少年は少女と同色の髪と眼の色を持った、これまた美少年であった。

恐らく双子なのだろう、2人はよく似た顔立ちであった。


「わ、私は水城 瑠璃です。一応中等部から通っているので、分からない事などがあったら仰ってください」


瑠璃は気持ちを落ち着けると、優美に挨拶をした。

その表情に、先程までの動揺は見られない。


「いえ……王族の方にそのような、おそれ多いです」


「え!? 瑠璃ちゃんは王族なんですか!?」


少女、北海 鈴は瑠璃の事を知っていたようで、萎縮したように頭を下げた。


まぁ、平民の子でも知っている人の方が多いものね……普通は。

はぁー、私はこんな常識すら知らなかった子に負けたのね……


「……気づかなかったんですか? 全く貴方は……」


「白雪……にぶい」


「確かに! 言われてみれば、青の同色の髪と瞳ですね!」


樋室 白雪は瑠璃の青い髪と眼の色を改めてじいっと見て、ようやく気付いたようだ。


「瑠璃ちゃんはとっても、偉い人だったんですねぇー! 美人で優しいお姫様! 素敵です!!」


しかし瑠璃が王族と気付いたのに、白雪は全く態度を変えなかった。


普通は媚を売るか、距離を置くのに……


「ふ、ふふふっ!」


瑠璃は声をあげて笑った。


「「「???」」」


3人は突然笑い始めた瑠璃を見て、首を傾げていた。


「確かに私は王族ですが、その様なこと、この学園では関係ありません」


先程まで敗北感を感じていたのが、もはやバカバカしい。

この子は確かに天才なのだろう。

私ではどんなに努力しても、満点は取れない。

だけどこの子はアホだ、頭のいいアホの子だ。

そして裏表がない。

私の周りには、私の立場を利用しようと媚を売る者しかいない。

利害関係が絡まない……そんな関係は稀有だ。

だから――――


「ですから、是非私とお友達になってくれませんか?」



基本ゆるゆるな話なので、書きやすいですね。

これで連続は多分終了です。

これからは不定期になります。

ブクマ&評価ありがとうございますm(__)m

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