3話 ベリータルトは好物です!
目覚めてから半年後、私達はこの八華学園に入学しました。
そして入学式の日、私は瑠璃ちゃんに出会いました。
瑠璃ちゃんは美人さんで頭もよく、しかも同じ科で同じクラスの人でした。
氷の精霊を持つものは今はいないので、当然専用の科もありません。
なので私達は一番親和性が高く、誤魔化しのきく水の精霊の科に所属しています。
瑠璃ちゃんは中等部からこの学園に通っていたらしいので、学園を案内してもらったり、出会った当初から色々と面倒を見て貰いました。
やっぱり瑠璃ちゃんは、とっても優しいです。
「いやー、私は運がいいですねぇー」
白雪は入学式の時の事を思い出し、思わず口に出していた。
私は本当に運がいい。
学園に入ってすぐに、こんなパーフェクトで可愛い親友をGET出来るなんて!
幸先が良すぎます!
「……なんの事を言っているんですか?」
突然呟いた白雪を、瑠璃は訝しげに見た。
「ふふー! 瑠璃ちゃんと私の記念すべき出会いを、思い出していたのですよ! あれはまさしく運命です!」
「なっ何をふざけたことをっ!? 鈴さんや翔君も大変ですね、こんな幼馴染みを持って!!」
瑠璃は照れたように頬を赤く染めると、誤魔化すように怒った。
……これはツンデレですね、可愛いです!!
「まぁ……白雪はいつもこんな感じなので……もう諦めてます」
「……しょうがない」
白雪が1人心の中で萌えていると、幼馴染み2人から容赦のないお言葉が浴びせられた。
「ヒドイです……」
流石の白雪もこれには傷付いた。
「でも、まっまぁ、貴方は普段ちゃらんぽらんですが、す、少しはいい所もありますよ!?」
白雪が傷付いた顔をしたからか、気付いた瑠璃が慌ててフォローに入った。
瑠璃ちゃん、やっぱり優しい!
「……例えば?」
白雪は目を輝かせて、返答を待った。
「……成績がいい所?」
うんうん、確かに私は筆記は学年トップです。
「他には!?」
白雪は更に聞いた。
「…………………………………物怖じ……しない所?」
あれ?
何か間が長くないですか?
……確かにあまり人見知りはしませんが……。
「………他には?」
きっとまだある筈と信じて、白雪は更に聞いた。
「…………………………………………………。」
「無いんですか!? もっとあるでしょう!? ある筈です!!」
白雪は叫んだ。
ヒドイです!
たった2つしか出ないなんて……
しかも何で全部疑問系なんですか!?
「仕方がないのでは? 白雪は頭のいいお馬鹿ですし……」
「うんうん」
そして長い付き合いである筈の、幼馴染み2人にも突き放される。
「そ、そんな!? 皆ヒドイです!!」
「まぁまぁ、白雪。おやつにケーキを出してあげますから、落ち着いて」
鈴が落ち着くように、白雪を食べ物で釣ろうとした。
私はそんなもので誤魔化されたりは……ケーキ、何ケーキかな?
「何ケーキですか?」
物によっては、水に流してやらないこともないのです。
「白雪の好物のベリータルト♡」
「ベリータルト!!」
私の大好物です!
「早く、放課後にならないかな!」
私の頭の中は、すっかりベリータルトで一杯です!
「……やっぱりアホの子よね」
「ですね」
「だな」
そんな白雪の姿を3人は、遠い目で見詰めていた。