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精霊と亡国の姫君  作者: 皐月乃 彩月
3章 断罪は強制シナリオ
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4話 そして、舞台は整った

ついにここまで書けました!

大分、長々と書いてしまいましたが、ここで冒頭のシーンへと繋がります。

その日は全校生徒が参加するパーティが、行われる日だった。

校内に流れるギスギスとした雰囲気も、今日ばかりは皆思い思いに着飾って楽しそうに笑い合っていた。


その茶番劇が始まるまでは――――





「瑠璃ちゃんはどこですかね?」


白雪もまた久し振りの穏やかな学園の雰囲気に当てられ、いつになく浮かれていた。


「……瑠璃さんは、王族として挨拶回りがあるんだろ? まだ時間かかるだろうから、軽食でも摘まんでなよ白雪」


「そうですよ、白雪。あまりキョロキョロするのは、不躾ですよ」


そんな白雪を苦笑いを浮かべながらも嗜めるのは、幼馴染みである何時もの2人。


「だって! パーティですよ! パーティ! 美味しいご飯に、色取り取りのドレス! 見てるだけで楽しくなっちゃいますっ!」


白雪は注意されたにも関わらず、美味しそうな料理、令嬢の纏う美しいドレスへと視線を次々に移していく。

幸い、通常なら見咎められる行為だが、今日は皆思い思いに楽しんでいて、白雪に目を向けるものなど誰も居なかった。

氷の国はどこか閉鎖的な面もあり、白雪は各国が集う大きなパーティーに参加した事が無い分、普段よりはしゃいでいるのだ。


「……それで? 白雪? そのドレスを貴女に贈った殿方を、今日は紹介してくれるのですか?」


「ふぇえっ!?」


白雪は思ってもみなかった追及に、動きを止めギギギと鈴の方を振り返った。

白雪の背から、冷や汗が流れる。


う……まだ覚えてたんですね。


「そう言えば、まだ聞いてなかった」


「……そのドレスは、平民に用意できる代物ではありません。白雪、いい加減教えてくれてもよいのではないですか? 今日もこの会場にいるのでしょう?」


白雪は2人が忘れたと思っていたようだが、主に付く虫の存在に従者でもある2人が無関心な筈はない。

翔は薄々勘づいているようだが、鈴は心当たりの全く無い虫の存在にここ数日頭を悩ませていた。


「それは、えーと何て言えばいいのか……うぅ」


白雪は、身に付けている銀糸の刺繍が施された純白のドレスの裾を握り締めた。

白雪は瑠璃と買い物で買おうと思っていたが、後日双季によってプレゼントされたのだ。

パーティに、着て来て欲しいと。

一目で高価な物だと分かり、受けとるのを拒んだ白雪だが結局双季の押しに負けて今日来てくることになったのだ。


近頃、どんどん双季君強引になってきたんですよね……

しかもこの格好にこんな可愛いドレス何て……気に入ってはいますけど、ちょっと恥ずかしいですね。


有言実行、双季の猛アピールに、免疫のない白雪はたじたじだ。


しかし、そんな高価なプレゼントを貰って、鈴に隠し通せる筈もなく、暫く質問責めに合うことになってしまった。


「白雪が私達にも話せないなんて……それほど、高位の貴族なのですか?」


鈴は、白雪が未だに口を割らない事からそう推測した。

実際は貴族どころではなく、光の国の第一王子なのだがそれを鈴が知ったら卒倒して、すぐに距離を置くように進言されるだろう。

だからこそ、白雪は簡単に話すこと出来なかった。


鈴にまで隠し事をすることになるなんて……でも、双季君ともう会えないのも嫌……かも?


「まー、白雪だって恋愛くらい好きにさせてあげてもいいんじゃない? 相手を見る目くらいあるだろうし」


どんどん狼狽えていく白雪を見かねて、翔が援護した。

近頃の噂や前回助けてもらった事から、それなりに信用は出来るだろうと判断したのだ。

何せ相手は白雪の正体に気づいているであろうに、各国からの接触は未だに無い。

口を噤んでいるのだろう。

鈴には七星 ひかるに絡まれたことしか報告していないので、これもまた鈴が知ったら2人揃ってお説教物だろう。

その事もまた、翔の中の双季の評価を上げていた。


翔ナイスアシストです!

でも、双季君とはまだそんな関係ではありません!!


「……翔? 貴方、まさか……私に何か隠し事をしてませんか?」


「いや、別に?……俺は何も知らない。あっ、白雪あそこに瑠璃さんいるぞ」


鈴がジトッと翔を見ると、翔は目も合わせることもなく話を逸らした。


「あ、本当です、瑠璃ちゃ――」


「待ちなさい白雪!」


白雪もこれ以上の鈴の追及に耐えられなかったのか、翔に乗って瑠璃の居る場所へと駆け寄ろうとした。


「水城(みなしろ) 瑠璃(るり)、お前と婚約破棄する!」


それは突然始まった。







◆◆◆◆◆◆◆◆










「……何故ですか? 一輝様……」


王族である一輝の突然の暴挙に、辺りはシンと静まった。

瑠璃の声がよく響く。


「何故? ……白々しい芝居は止めろっ! お前がひかるを苛めていたのは、もう分かっているんだっ!!」


一輝は背に七星 ひかるを庇いながら、親の仇を見るような目で瑠璃を糾弾した。


「そんなっ! 私はそんな事やってませんっ!!」


瑠璃は必死に無罪を訴えようとする。

今日のパーティに招かれた客達も、次々にあげられる瑠璃の罪状に眉をひそめた。


「皆お前がやったと言っているんだ! 証人もいる!」


その言葉で、一気に瑠璃へと避難の眼差しが集まった。

皆、光の国の王太子である一輝の言葉を信じたのだ。

瑠璃の話はろくに聞きもしないで。


「ほら、とっとと謝罪しろ!」


そしてとうとう瑠璃は追い詰められ、偽りの罪で裁かれようもしていたところだった。


「待ちなさいっ!」


1人の少女が、一輝と瑠璃の間に立ちはだかった。

親友である瑠璃を守る為に。


「何だお前? こいつの取り巻きか? 邪魔だ、引っ込んでろっ!!」


一輝は自分の邪魔をされた事に、腹を立て怒鳴り散らす。

そこに王族としての誇り(プライド)など、ありはしない。


「退きません。引っ込むのはあなた方です。恥ずかしくないんですか? 一人の少女に対して、多勢に無勢で囲んで!」


「貴様っ!? この僕を愚弄する気か!?」


その言葉は更に火に油を注ぐ事になり、一輝は割り込んできた少女に対し殺気を向けた。


「えぇ、勿論。無実の彼女が、何故謝罪する必要があるのですか?」


「白雪……」


瑠璃が少女、白雪を呼ぶ声は小さく、そして震えていた。


「大丈夫ですよ瑠璃ちゃん。心配しないで、貴方の無実は私が証明します!」


白雪は、瑠璃を安心させるように微笑んだ。

王族相手でも、決して怯むことなく瑠璃の前に立った。

この世界で、身分は絶対だ。

王族の前に立ちはだかるなど、正気の沙汰ではないだろう。

周囲からは瑠璃の時以上に、白雪に対して避難や怒りの視線が浴びせられる。


「俺達はこの世界の王たる一族だぞっ!?」


「傲慢ですね……まぁ、いいでしょう」


白雪は煩く喚く一輝に身に付けていた校章を外し、投げつけた。


――それは、決闘の申し込みを意味した。


あり得ない展開に、周囲にどよめきが起きる。

当たり前だ、王族と平民の力の差は絶対。

そして、白雪の実技の成績は下から数えた方が早いと言ったレベルだ。


彼女は自殺志願者なのか?


誰もがそう思ったに違いない。


「はっ! バカがっ!! いいぞ、身の程を教えてやるっ!」


怒りに任せに白雪の正体を知らずに、一輝は決闘を了承した。

そこには、王族として絶対的な力を持っているという、傲慢そ故の怠慢が含まれていた。

だが、それがこの場にいる大多数の考えでもあった。

親友の瑠璃でさえ、白雪の勝利など微塵も信じていない。

けれど――


「さぁ、決闘を始めましょう?」


そう言った白雪の表情からは、とてもじゃないが負け戦をしているなど連想できなかった。

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