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精霊と亡国の姫君  作者: 皐月乃 彩月
2章 波乱の学園生活
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8話 遭遇


それは白雪が双季の秘密を知って、数週間が過ぎた頃のこと。


「きゃっ!?」


先生に頼まれ、白雪は翔と2人で資料を運んでいた。

勿論、瑠璃を1人にするわけにはいかないので、鈴には残って瑠璃の傍に居て貰っている。

そこで急に走ってくる女生徒によって、白雪は弾き飛ばされた。


「白雪!? 大丈夫か!?」


荷物を持っていたのが、よくなかったのか。

白雪は躱すことも出来ずに、尻餅をついてしまった。


「ちょっと!? 痛いじゃない!! どこ見てんのよ!」


同じく尻餅をついてしまったぶつかってきた女生徒が、白雪をギロリと睨み付けて文句を言った。


え……?

今の明らかに貴方からぶつかってきましたよね?

貴方が私に謝罪するべきなのでは??


白雪は謝罪どころか、逆ギレしている女生徒を唖然として見た。


「何ぼさっとしてんのよ!? さっさと謝りなさいよ!」


開いた口が、塞がらないとはこの事だ。

白雪を起こすために、女生徒に背を向けてる翔は怒りで口元をひくひくと引き攣らせた。


「聞いてるの!? モブのクセに、ヒロインの私に怪我を負わせるなんて、考えられないわ!」


ひ、ヒロイン? モブ?

何ですかそれ??

何だがヤバい人に、捕まってしまったようです。

……もう、無視して教室に戻りましょうか?


白雪はその女生徒の様子に先程までの怒りは吹き飛び、一刻も早く立ち去る事を決めた。

こういった輩には、近付かないのが1番だ。


「……白雪、行こう」


翔も同じことを思ったのか、自称ヒロインに一目くれることもなく白雪の手をとって立ち去ろうとした。


「待ちなさいよ!」


自称ヒロインは、それが気に入らなかったのか白雪の腕をつかんでその場に引き止めた。


わ、力強いです!!

馬鹿力なんですか!?


「離せ、女」


白雪が痛がってるのに気付いた翔が、すぐに白雪から彼女を引き剥がした。

翔の役目の中には、白雪の護衛も含まれる。

その翔が、白雪に害するものを許す筈がない。


「何すんの、……って、やだ、イケメン!」


「は?」


すると、先程まで般若のように醜い顔をしていた自称ヒロインは、翔の顔を見た瞬間に目の色を変えた。

その姿の何と浅ましく、醜いことか。


あ、……嫌な予感です。


「あの! お名前何て言うんですかぁ? とってもカッコいいですねぇ!!」


態度を変えて、媚びるように翔の腕に自らの腕を絡ませる自称ヒロイン。


……とてつもなく、不愉快です。


「急に何を言ってるんですか? そもそも、先程から謝れ、謝れと…………貴方が私にぶつかってきましたよね?」


白雪はいい加減腹が立ったので、彼女にそれ指摘した。

指摘した内容はいたって正論で、何一つ理不尽なことを言ってはいない。


「何この人怖ぁいっ!」


そう言って、ますます翔に密着する彼女。

最早、白雪の堪忍袋の尾も限界だった。


……イラッ。

な、殴りたい!

さっきまで、怒鳴り散らしてた貴方にだけは言われたくありません!


「離せ」


翔もそんな彼女に遣う気も敬語もないのか、その声はとても平坦で何の感情もこもってない冷たいものだった。

翔は腕を振り払って、彼女と距離を取ろうとした。


「やだ、クールなんですねぇ! 照れなくてもいいですよぉ!」


そんな翔の様子が目に入っていないのか、自称ヒロインは自分の都合のいいようにしか行動を解釈出来ない。

こんなにも話の通じない相手との会話は、最早恐怖だ。


……目が見えてないんでしょうか?

もしかして、病気ですか?


「翔……逃げましょう」


そもそも私達は、先生の頼まれ事でここにいます。

これ以上、こんなヤバい人に関わっているほど私達は暇ではありません。


「翔くんって言うんですかぁ? 私は七星 ひかるっていいますぅ!」


しかし、白雪達は逃げるタイミングを失うことになってしまった。


――その忌々しい名前を、彼女の口から聞いたことによって。


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