7話 黙秘を主張します!
「え? えぇえ!!? 何を言ってるんですか!?」
双季の突然の告白に、白雪は動揺を隠せず顔を真っ赤に染め上げた。
そんな素振りは、一切無かった筈なのに……
じょ、冗談ですよね?
「やっぱり鈍いな、白雪。自分で言うのは何だが、結構アピールしてたぞ?」
双季はそんな白雪の様子に満足そうに笑うと、顔を近づけてそう言った。
ちょ、ちょっと、近すぎます!
「アピール!? え? そんないつの間に!!?」
白雪はじりじりと距離を取りながら、そんな事を口走った。
えぇ?
そんなのありましたっけ!!?
「うーん、半年くらい前から?」
双季は蠱惑的に笑ういながらも、白雪のとった距離を詰めていく。
「そんなに前から!?」
……私は、本当にニブいのかもしれません。
全然、全くと言っていい程、気付きませんでした。
瑠璃ちゃんや鈴達によく言われる理由が、身に染みて分かりました。
「……まぁ、足りなかったみたいだから、これからはもっと分かりやすくいくから、覚悟しとけよ?」
「何の覚悟ですか!? セクハラで訴えますよ!」
更に距離を詰めようとする双季君に、慌てて距離を取ります。
「ははっ! お前やっぱ面白いな! ……それで? その鬘と眼鏡はとってくれないの? お前の正体を教えてくれるってのでも、いいんだけど?」
白雪が作った距離を埋めるようにして、双季が白雪にどんどん迫る。
白雪は先程から距離をとろうと努力しているが、双季はそれよりも更に距離を詰めていくので全く意味をなしていない。
う、今まで、もっさい感じだったのに。
急にキラキラしてるから、慣れないです!
「駄目です! 黙秘します!!」
白雪は腕をバッテンにして、前へと突き出した。
瑠璃同様、白雪もまた箱入りゆえに異性に対しての免疫が一切なかった。
寧ろ、白雪は高校生にもなって、恋愛のれの字も知らないお子ちゃまだ。
当然、双季を上手くかわすことなど出来る筈がない。
「どうしても?」
「どうしてもです!!」
「…………そっか、じゃあ今はいいや。強制しても、意味無いしな……でもいつかは、教えろよ?」
頑なな白雪の態度に無駄だと悟ったのか、双季はそう言ってにこりと笑った。
こう言ったことを無理に聞き出しても意味がないと、理解しているのだろう。
「……ごめんなさい。双季君は、話してくれたのに。でも、双季君を信用していないわけではないんです。ただ……」
「まぁ、親友にも黙ってるくらいだしな……」
「はい……」
結局、白雪は親友である瑠璃にも何も言えないでいる。
大切なのに……2人が優しいのを良いことに、瑠璃ちゃんにも、双季君にも隠し事ばかりです。
「俺はお前が何者であろうとも、好きだよ。この気持ちは、例え何があっても変わらない……多分、水城 瑠璃もそれは同じだ。だから、あんま気に病むな。事情があるのは分かってるんだ。それとも、水城 瑠璃はそんなに器が小さいのか?」
双季は真剣な表情で、強い眼差しで白雪に言った。
それは白雪にとって、救いでもあった。
「瑠璃ちゃんは、とっても優しいです!!」
「なら、そんなに気にすんな」
双季はまたおかしそうに笑うと、白雪の頭をポンポンっと撫でた。
きっと、私を慰めてくれているのでしょう。
不思議です。
ここに来るまで沈んでいた気持ちが、双季君と話してるとポカポカと暖かくなってきました。
「ありがとうございます、双季君。いつか話せる時が来たら、絶対に話しますので……その時は聞いてください」
「あぁ……約束だ」
私は本当に恵まれています。
かけが得ないのない親友と……双季君が、いつだって私の味方になってくれています。
今はまだ双季君へのこの気持ちが何かだなんて分からないけれど、皆が笑っていられるように、私は出来ることをしたいと思います。