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精霊と亡国の姫君  作者: 皐月乃 彩月
2章 波乱の学園生活
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6話 変なやつ

双季視点


「で? お前はソレ(鬘と眼鏡)取らねぇの?」


双季は一頻り笑うと、白雪にそう聞いた。

こんなに笑うのは、久しぶりの事だった。


樋室 白雪は、変なやつだ。

俺と同じように正体を隠している癖に、友人に面倒な事になるであろう水城 瑠璃を友人に選んでいる。

水城 瑠璃は水の国の王族で、悪い噂が絶えない奴だ。

今は落ち着いているようだが、昔の事があるから一輝達各国の王族の子息達には嫌われている。

俺も昔会った時は、いい印象を抱かなかった。

他の貴族達もそれを知っているから、今もまだ敬遠されがちなんだろう。

それに王族の奴等を敵に回すと言うことは、この学園で平穏な生活を送ることは難しくなる。

王族に睨まれる事が分かってて、水城 瑠璃に近づくやつは何か目的があるやつくらいだろう。

俺は白雪が何者かは知らないが、秘密を抱えるなら水城 瑠璃は友人には本来向かないことだけは理解できていた。


本当に……変なやつだ。


俺は光の王族として生まれたが、何の後ろ楯も持たない妾の子だ。

しかし本来の力は、正妃の子である一輝より俺の方が上といった面倒な立場。

もし俺の母が正妃であったなら、間違いなく第1王子である俺が王太子になっていただろう。

けれどそれは、仮定の話。

俺はずっと蔑まれ、虐げられてきた。

実の息子である王太子より強い力を持つ俺など、正妃にとっては邪魔者以外の何者でもなかったからだ。

暗殺者を仕向けられる事もあった。

だから王宮ではずっと存在を、消して生きてきた。

学園では容姿をどこにでもいそうな平凡にして、成績も誰にも気にされないような平均的なものにまで落とす。

そうすることで、俺の周囲は静かになった。

将来は国を出て、他国で趣味の植物研究でもして暮らせればいいとそう思っていた。


――樋室 白雪に、出会うまでは。


コイツはバカだが、裏表がなくまた噂などでなく本人を見て判断するやつだった。

俺の正体を明かしても、態度を変えず寄り添ってくれる。

水城 瑠璃が、白雪の傍にいようとするのがよく分かる。

貴族社会において、ソレ(・・)は特に尊いものであったから。

いつの間にか俺にとって白雪と共に過ごす時間は、かけがえのないものへとなっていた。


近頃、七星 ひかるとか言う、一輝達を侍らせているクソ女が何故か俺の周りをうろつき出した。

顔を合わせては、“辛かったね”だの、“私は貴方を分かってあげられる”など、意味のわからない事ばかりを並べ立てて媚を売ってくる。

初めは何故俺に媚を売るのか分からなかったが、クソ女はどういう訳か俺の正体知っているらしく、どうやら俺の容姿がお気に召したらしい。

全く傍迷惑な事だ。

そのせいで、一輝を含めた奴の取り巻き勢には睨まれる事が多くなり、要らぬ軋轢を生むようになった。

しかもクソ女は、それを見て喜んでいるのだから始末におえない。


だが、そんな苛つきも白雪に会ったら、嘘みたいに消えた。

コイツの傍は居心地がいい。

そしてもっと白雪の事を、よく知りたいと思った。

だからこそ最初に交わした約束を破棄して、正体を明かしたのだ。


「こ、これですか……うぅん。瑠璃ちゃんにも言ってないのに、絶対無理です!」


しかし、白雪は首をぶんぶん横に振って秘密を明かすことを拒んだ。


「ふーん? 俺にはとらせといて、自分は取らないわけ?」


双季は少し嫌味っぽく、白雪に言った。


俺は自分から正体を明かした。

だから、本来それを白雪に強要するのはお門違いだ。

けれど、知りたいと思った。

多分……白雪は高位の貴族か何かだ。

たまに白雪は世間知らずなところがあるが、平民にはない気品や大切に育てられた事が滲み出ている。

平民なら、今のままでもいい。

俺は将来的に、今の立場を捨てるつもりだったから。

けれど……

高位の貴族なら、今のままではいられない。

俺は白雪に見合うだけの能力や、立場が必要になるだろう。


俺は白雪が好きだ。

だからこそ、彼女の事を知りたい。


「うぅー、それは申し訳ないですが……」


「俺が信用できない? 誰にも言わないと誓うけど」


しどろもどろになる白雪に、双季は更に畳み掛ける。


「…………………ぅう」


「……俺は本当は白雪が何者であってもいいよ」


お前が俺が何者であっても、気にしないと言ったように。


「俺は白雪が好きだ。だから、白雪の事を教えて欲しい」


双季がそういった瞬間、白雪は眼鏡の上からでも分かるほど顔を真っ赤に染めた。


俺は必ずお前に見合うだけの立場と、力を手に入れる。

他の誰かに、白雪の隣を譲るつもりはない。



やっと、恋愛っぽくなりました。

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