4話 箱庭の中で
スマホの見すぎで首が痛いです……(。´Д⊂)
結局、昼になっても瑠璃は、保健室へ行ったまま戻って来ることはなかった。
白雪はそのまま授業を受ける気にもなれず、授業をサボって外の空気を吸いに校舎の外へと歩いていた。
瑠璃ちゃんは、ちゃんと休めていんでしょうか?
……放課後になったら、様子をみにいきましょう。
儘ならない状況に、白雪は溜め息をついた。
何故、こうなってしまったんでしょうか?
平穏に暮らせていたのに、何が原因でそれが崩れてしまったんでしょう?
明確な原因があれば、改善していけます。
悪い事をしたなら、謝ればいいのです。
でも………
それは突然だった。
何の前触れもなく、崩れ落ちていったのだ。
今まで不和は多少あれど、この平穏を脅かすようなものではなかった。
変わったのはきっと……
――“七星 ひかる”が現れてから。
……なら彼女をどうにかすれば瑠璃ちゃんは、救われるのでしょうか?
「あれ?……ここは…………温室……」
ふと、顔をあげるとそこには懐かしき花の咲き誇る、美しき温室がそびえ立っていた。
「……双季君は、いるのでしょうか?」
白雪は無性に、彼に会いたいと思った。
何故でしょう?
今は授業中、ここにいる筈なんてないのに……
「ここは相変わらず、綺麗ですね……」
双季から以前受け取った鍵を使って、温室内に入った。
入った瞬間、懐かしい故郷の香りがして、乱れていた気持ちが少し落ち着いた。
懐かしい故郷の華。
白雪達が失ってしまった故郷で、当たり前に咲いていた華。
「物思いに耽ってどうした? お前らしくもない」
白雪がそのままじっと見詰めていると、唐突に聞き覚えのある声が背後から声がかけられた。
「ゎ、わ! 双季君!? ビックリしました!! いきなり声をかけないでください!」
白雪は驚いて2、3歩後ろに下がると、驚かせた双季に抗議した。
「はは、悪い悪い。そう怒るなよ、白雪」
「次は気を付けてくださいね!」
全然反省してない双季の様子に、またやるだろうと白雪は想定した。
これは、全く反省してませんね…………双季君は意外といたずらっ子のようなところがあり、私をよく冗談でからかうことも多いんですよね。
「……ところで、どうしてここに? 今は授業中ですよ」
白雪は疑問に思ったことを口にした。
授業中だから、絶対に居ないと思っていたのに……
双季君もサボりでしょうか?
「それはこっちの台詞だろう。何時もの仲のいい親友とやらはどうしたんだ?」
「……今は、保健室で休んでます……最近、元気なくて」
「そうか……所詮は噂だ。じきに収まる……」
双季も瑠璃の噂を、聞いたことがあったのだろう。
何せ学校中で、話されているのだ。
知らないものなど、この学園にはいないだろう。
隠された表情からも、心配や同情といった感情が感じられた。
「……そうだ、と、良いのですが……」
噂が広まりだしてから、もう3ヶ月近くもたつのに一向に静まる気配をみせない。
「……それで、双季君はどうしてここにいるんですか?」
白雪はこれ以上、暗い思考に入らないために双季に答えを促した。
「あぁ……何と言うか、男侍らせたイカれ女から逃げる為、かな?」
双季は白雪の質問に、辟易とした顔でそう答えた。
その顔には思い出すのも忌々しいと、書かれていた。
はい?
男侍らせたイカれた女?
……何だか、何処かで聞いた覚えが。