8話 貴方は同類さんですか?
あの性悪な男の子に瑠璃が絡まれてから、1週間程が経った。
あれから瑠璃ちゃんの様子が、ちょっとおかしいです。
翔と話していると急に顔を赤くしたり、おたおたと挙動不審になったりしています。
当初あの性悪のせいで瑠璃ちゃんの様子がおかしいのかと思っていましたが、鈴によるとどうやら違うみたいです。
でも、どういうことか詳しく聞こうとしても、鈴は教えてくれません。
“白雪には、まだ早い”の一点張りです。
「皆して私を子供扱いして、ヒドいです!」
そうして怒った白雪は現在、皆の元を離れて1人学園内で散歩をしてた。
「私だってもう15歳です! 子供じゃありません! あの時だって……」
不満を次々に口にしても、白雪の機嫌は一向によくならなかった。
寧ろ、過去を遡って悪化傾向にあった。
やはり、先日の一輝と瑠璃の一件が、白雪に引っ掛かりを残しているようだ。
「………………あれ?………ここは……どこですか?」
考え事をして闇雲に歩いている内に、白雪は自分が何処にいるのか分からなくり迷子になっていた。
「……………あれは、温室?」
辺りを見回すと、ポツンとひっそりとそびえ立つ温室が白雪の眼に入った。
入り口に近付くと、どうやら鍵はかかってないようで押すと扉が開いた。
「……すごい綺麗な場所です……でも、この花は……」
中に入ると、結晶のように透き通った花弁を持つ美しい花が沢山の咲き誇っていた。
その幻想的な光景に、白雪は一瞬思考が止まった。
何故なら白雪には、その花には見覚えがあった。
この世界にとっては遥か昔、けれど白雪にとっては1年にも満たない。
「氷晶華……」
“氷晶華”、その花は今は亡き氷の国で多く見られた花。
雪原が溶けてしまった今、この世界で見ることがなくなった華。
こんな場所で見られるなんて。
寒い場所でしか咲かない筈なのに、どうして咲いてるんでしょう?
この温室の気温は、そう低くないように思えた。
この気温で氷晶華が、華開くことはない。
「誰だ!?」
自分がが花に見とれていると、背後からいきなり声がかけられた。
聞こえてきたのは白雪と同じくらいの年のの声で、恐らくこの温室の持ち主だろう。
温室に勝手に侵入した白雪を、警戒しているようだ。
「勝手に入ってすみません。私は……」
しかし振り返って怪しいものじゃありませんと、続けようとした言葉は出てこなかった。
その少年は真っ黒なボサボサな髪形に、レンズの分厚いメガネ……
まるで――――
「「…………変装?」」
白雪と同じことを考えたのか、その変装少年と同時に言った。
あ、ヤバイです。
変装がバレちゃいけないんでした!
鈴に怒られてしまいます。
「「……………………………」」
変装少年も図星だったのか、気まずそうに黙った。
彼も変装しているということは、周囲に隠していたのでしょう。
それを指摘してしまったのは、まずかったかもしれません。
「……何で分かった?」
変装少年は、ようやく口を開くと白雪に尋ねました。
「え?……だって、私と同じような格好ですし……貴方もそれで分かったのでは?」
もっさい黒髪の鬘に、眼の色を隠すようなメガネ何ているようでいませんし。
「……やっぱり、お前も変装か」
変装少年は確信したように、首を縦にふった。
……ヤバイです。
余計な事を言ってしまいました。