山での戦い
「どうだ?」
「うん・・・。近くには居ないみたい。」
指輪が反応し、他者の存在を知らせた。カナンダかシン、どちらかが近くに居た。だが、しばらくして反応が無くなり、その人物がこの場から離れたことを知る。
たまたま通りかかっただけだと思う。標的にされている感じはしなかった。」
指輪から伝わった刺激でそう判断するアンジュ。指を撫でるくらいの弱い刺激。その刺激から強くなる事も無く、反応は消えて行った。
「そうか・・・。だが、居場所はバレたな。他の場所に移動した方が良さそうだ。」
「そうだね。暫くしたら移動しようか。」
数時間後。二度目の夜が訪れる。各自、移動するだけで争いが起こる事も無く昼が過ぎて行った。そんな中、膠着状態を打ち破る様にシンと望月が動き出す。夜になるまで動かずに、暗闇に乗じて静かに動き出す。
携帯を見ながらゆっくりと近づくシンと望月。標的との距離はあまりなく、近くに居ると確信する。だが・・。
「真っ暗で何も見えねえな。火の一つでも熾してくれてると分かりやすいんだがな。」
「向こうも警戒はしてるんだろ。知恵のある者を相手にしていると、何らかの策は練られてるって事さ。」
望月の問いに答えるシン。息を切らしながら斜面を登る二人。木が生い茂る小さな山、その山のどこかに標的は居た。緊張感が増す中、標的との距離は詰められていく。
「どうする?近くには居るだろうが姿が見えねえ。」
「指輪に反応は無い。アンジュやカナンダじゃなさそうだ。となると、『爆弾』があるな。俺が見て来てやろうか?人間に手は出せないが、探索くらいは出来る。姿が見えたら、その銃で狙え。」
制約上、人間には手を出す事が出来ないシン。だが、爆弾でも無傷だったシンの体は、人間も傷を与えることも出来ないだろう。
「大丈夫だとは思うが気を付けろよ。罠があるかも知れないからな。」
「ああ・・。」
そう言うと草木をかき分け、標的が居る方へと近づくシン。
ガサ・・ パキッ・・
物音を立てない様に気を付けるシンだったが、静寂が広がる中、どうしても小さな音は出てしまう。特に柔らかい土の上に転がる木の枝や葉を踏みつけた時に発生する物音は、どうしても消す事が出来ない。
多少は仕方ないと思いながらも出来るだけ音を立てない様に近づくシン。そして、相手からも見えるであろう場所に辿りついたその時。
『ドゴォォオオオン!!!』
「ぐ!!」
「仕掛けてきやがった!!」
爆発に巻き込まれるシン。その様子を緊張した様子で見つめる望月。拳銃を握りしめ、彼の心臓が高鳴る。
「どこだ!?」
辺りを見回すシン。次の瞬間、彼の目に小石が映る。反射的にそれが爆弾だと知ったシンは顔を背け、爆発に備える。
『ドゴオオォォオオオン!!!』
「ぐうぅ・・・。」
二度目の爆発が起こる。小石の投げ込まれた方から標的の位置を確認するシン。
「ちっ!!」
2メートル程の小さな崖。その上でこちらを睨みつける一人の女性と目が合うシン。右手に握りしめた小石を再びシンに投げつける。
「くっ!あいつか!!」
(山の高低差を利用するとは・・・。あのアマ、考えてやがるな。)
索敵で映し出されるのは平面の画像。高低差は表示されない。それを理解した上で彼女は距離感の分かりにくい山を拠点に選んだ。
「シン!!」
「っ!!」
『タァン!!タァン!!』
発砲し、シンを援護する望月。慌てて身を隠す女性。そして、足音と共に彼女からの攻撃が止む。
「・・・逃げたか。」
「ああ・・。助かったぜ。礼を言うよ。」
「馬鹿野郎、礼を言うのはこっちだ。俺が行ったら確実に死んでたな。お前が頑丈で命拾いしたよ。それにしてもあの女・・。」
「戦い慣れしてやがるな。平面でしか映らない索敵の画面を利用するとは・・・。次からは気を付けよう。」
女の取った行動を見て肝を冷やす二人。そして、向こうも生き残るために必死だという事を再確認する。
「はあ・・はあ・・。どうなってるの?何、あの化け物。前はあんな奴居なかったわよ。爆弾でも死なないなんて、どうすればいいのよ!!」
息を切らしながら携帯の画面を開く女性『岸田 由紀子』。大きな目を開き、二人が追ってこない事を確認し、小さな胸を撫で下ろす。
「相手にしてられないわ。見つかったら逃げるしかない。」
生き残り続ける限り、いつかは戦わなくてはならない。だが、武器である爆弾が通用しない以上、対抗策が無い。彼らとの戦闘は避け、逃げることを決意する。




