探索
「さすがだな。」
あっさりと一人倒した望月にシンが話しかける。
「まあな。銃の扱いこそ慣れちゃいないが、素人相手に俺が負ける訳ねえだろ。」
闇に紛れて行動を開始したシンと望月。元ながら、プロボクサーである望月が一般人に負けるはずが無かった。奇襲を仕掛けられ、距離を詰められた男は一方的に望月に殴られ続けた。
「どうする?このまま殺すか?」
「いや、それよりも気になる物がある。これだ。」
男の持っていた携帯を拾い上げ、望月に向けて見せるシン。
「ガラケーか。別に珍しいもんでも・・・。」
「・・死ね」
『カチリ』
『ドゴォォォオン!!』
携帯が爆発する。爆炎に巻き込まれるシン。
「うおっ!!」
男の最後の抵抗だった。触っていた携帯を爆発させ、自分を傷付けた奴等に少しでも手傷を与えられれば・・。だが、彼の望みが叶う事は無かった。
「・・・残念。俺には効かないんだよ。」
無傷のシン。それを見て男は絶望にさらされる。
「馬鹿だな。爆発させるなら望月を狙えば良かったのに。」
「え?」
「『爆弾』って機能があるんだよ。触れた物に設置して、設置者の好きなタイミングで爆発させることが出来るって便利なもんだ。お前、こいつを気持ちよく殴ってたろ?だが、あれでも爆弾は設置されてたんだぞ。」
「お、お前、そういう事は早く言えよ!俺が死ぬ所だったじゃねえか!!」
「いや、俺もこいつの爆発を受けて思い出したし・・。まあ、次からは接近戦は気を付けて行う様にしよう。」
一歩間違えれば自分が死んでいたことを知り、肝を冷やす望月。
「それにしてもこの野郎、舐めた真似しやがって。殴ってやりてえが迂闊に殴れねえか。」
「銃を使えばいいだろ。それより気になる事があるんだよ。」
そう言うと携帯を男に渡すシン。
「『索敵』とやらの画面にしな。指くらいは動かせるだろ。」
「う・・う・・・。」
弱った体で携帯をいじる男。言われた通り索敵の画面にした後、それをシンが取り上げる。
「OK!持ち主以外は使えないからな。これを知りたかったんだよ。へえ。なるほどね。」
画面を見て頷いた後、携帯を望月に見せる。男が触った事により、爆弾になったため望月は携帯を触ろうとはしない。
「ははは。まあ、こうなったらこいつは用済みだ。消して良いぞ。」
「殺れって事か?」
「そうだ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
『パァン!!パァン!!』
「よし、死んだか。これは良い。携帯は消えないみたいだな。・・・ほれ。」
携帯をシンに投げ渡す。
「おっと・・・。」
「画面に光が映ってるだろ。これが参加者だ。」
「へえ。結構いるな。7人か。これのどれかが俺達って事だな。」
「そういう事。指輪じゃ全員は把握できないからな。拳銃と帰還はこちらにもある。だが、この『索敵』という機能は俺達には無い。こいつが欲しかったんだよ。人数を知れれば良いと思っていたが、持ち主が死んでも携帯は消えないみたいだな。貰っとこうぜ。」
「・・・なるほどね。お前って結構、頭が切れるんだな。」
「褒めても何も出ないぞ。こいつらが使っている携帯に興味があっただけだ。参加者の武器としては恒例らしいからな。さて、携帯は手に入れた。帰還の権利も得ている。次はどうする?」
「どうするって、仲間が参加しているお前の方が状況は見えてるだろ。」
帰還がある事でいつでも安全な場所へと戻れる。そして、携帯による索敵の機能により、敵の居場所も分かる。
「責めるにも守るにも困らない状況だ。一旦帰還して、『他の奴等に潰し合ってもらう』なんて手もあるが。」
参加者は自分達だけでは無い。放って置いても誰かが誰かを殺す。
「悪くはねえが、性に合わねえな。いつでも逃げれるなら、行けるとこまで行ってみねえか?他の奴等に権利とやらも与えたくない。」
「そうだな。じゃあ、もう少し粘ってみるか。」
「一丁あがり。」
「うむ。これで参加者は6人か。」
参加者を一人葬る事に成功するカナンダとガイア。黒い携帯を手に入れ、満足気に画面を見つめる。
「殺しても携帯は無くならないのか。赤の丸が消えた。これが本人の様じゃな。という事は、隣のこいつが俺達か。ワシは映っておらぬようじゃな。」
「懐かしいな、その携帯。すっげえ便利だったぜ。」
「爆弾は無いが、それは仕方がない。だが、これを手に入れたのは大きい。帰還の権利も手に入れた。出足としては悪くは無いな。」
戦果に満足するカナンダ。自分達を入れて、参加者は6人。油断は出来ないが、人を人と思わないガイアの非情さにも心強さを感じる。
(今のところ、負ける要素は無い。後は油断をしない事か。)
携帯に映された6つの光り。それぞれが動き出し、弱い者が消えて行く。
「さて、動き出したか。あの3人はいずれも生き残っている様だな。」
画面を見つめ、赤ワインを口にする牛頭鬼。無事、ゲームの開催に持ち込み、彼にとっての至福の時間が訪れる。
「カナンダとシンは権利を得ている。他の者よりも一歩リードと言ったところか。さて、他の者も死にたくは無かろう。これからどうなるかな。楽しませてくれよ。」
傍観を続ける牛頭鬼。始まって半日程で、すでに3人が脱落した。人間達の戦いに、再び彼は舌鼓を打つ。
一夜明け、長い夜が明ける。眠る必要は無いが、疲れた表情のアンジュ。
「ふぁーあ。やっぱり横にはなりてえなあ。」
「ここって寝なくても大丈夫なんだろ?お前等でも眠ったりするのか?」
「ん?そりゃ多少はね。気分転換になるだろ?安らぎってのはどこの世界でも必要なもんだって。」
弥太郎に笑顔が戻り、ほっとするアンジュ。浪岡を見て以来、弥太郎の顔は引きつったままだった。積年の恨みの断片を見たアンジュは、これ以上を見ることに少し躊躇していた。
シンやカナンダが見たがっていた感情。それは確かに自分たちの持っていない感情だろう。だが、それは自分たちが踏み込んではいけない世界の様な・・・。知るべきものでは無い。アンジュはそんな気がした。
「ところで指輪に反応は無しか?」
「無いね。少なくとも近くにカナンダとシンは居ない。人間は分からないけどね。こちらから攻めるにしても手段が無い。さて、どうしたものか。」
「役に立たねえな。そのカナンダってやつは治療する能力があるんだろ?シンってやつは体が強いんだっけ。お前は何が出来るんだ?」
「何って言われてもな。ただの獄卒だし・・・人間には負けはしないがサポートなんて・・。」
「何か出来るだろ。火を噴くとかさ。」
「そんな力は無い。力ではシンに負けるし、カナンダ程の知識も無いし・・。強いて言えば物作りかな?」
「物作り?家具とか?そんなの役に立たねえよ。」
「ちげえよ。ジオラマ。ここの世界は現世を元に、イザナミ様が作った世界。私たちはそのジオラマの中に居るんだ。」
「その話は昨晩聞いたよ。お偉いさんが闘技場として作ってくれたんだろ?」
「そう、それを私も作れるの。流石にこんなに凝った物じゃないし、イザナミ様からすれば、それこそ子供の遊び位の代物だけどさ。」
それからアンジュは自分が使える術についての説明をした。ジオラマ事態は凝らなければ簡単に作れること。そして、その中に人を送るには妖力を用いる事。イザナミ程の妖力が無い彼女がジオラマの中に人を送るには多少の条件が必要だという事。
「・・・それって凄い能力じゃないか?」
「そ、そうか?」
「だって、そのジオラマの中はお前の好きな様な世界が広がっているんだろ?帰還なんて必要ねえじゃんか。なんでそれを早く言わねえんだよ!」
「いや、趣味の延長みたいなもんだから戦いに適さないと思って・・・。」
「馬鹿!野宿する必要無いだろ。一番使える能力だぞ。」
「そんな凄いもんじゃ・・・。」
思わぬところで褒められて、少し照れるアンジュ。
「敵にも使えないか?そこで問題があるとすれば、ジオラマの中に送る手段だな。」
「うーん。私が対象に触れる必要がある。大抵、この方法が一番よく使うな。イザナミ様が使う、離れた場所から送る技は私には難しい。対象の心が凄く落ち着いているか、荒れていれば別だが。」
「普通、こういうのは落ち着いている方がやり易いんじゃないのか?脱力とかが関係して。」
「そういう状態も入り込みやすいが、心が乱れている場合は隙だらけなんだよ。波の様に揺れまくって薄い部分が必ずある。そこさえ突けば簡単に入り込めるんだ。」
「へえ・・。とにかく、そのジオラマってやつは使わない手は無いな。少なくとも俺等の拠点となりそうだ。外界から隔離されるってことはお前の付けている指輪のレーダーからも逃れられる可能性があるな。」
「その可能性は大きい。まあ、作ってみるよ。暫く時間は掛かるが。」
森の中を探索するカナンダとガイア。
「今回の地形はほとんどが森らしいな。それに、武器らしいものも落ちては居ない。」
「皆がそれぞれ武器を持っておるからのう。その必要も無いと判断されたのじゃろう。ところで、お主が言うように、この携帯に表示された範囲がジオラマと考えて良いのか?」
「ああ、俺の時がそうだったからな。それ以上は進めないんだよ。見えない壁が貼られているみたいに。」
「前回の経験者がいると言うのは非常に心強いな。情報面で一歩リードと言ったところか・・・ん!!」
急に足を止め、辺りを見回すカナンダ。
「?・・・どうした?」
「静かに。指輪に反応じゃ。」
携帯を見つめ、相手の居場所を探す。自分の場所は把握している。そこから近くに居る人間は・・・。
「こいつか。シンかアンジュのどっちかじゃな。」
「例の仲間ってやつか。どうする?」
「うむ・・・。相手に気付かれておる。帰還があるとはいえ、無理に戦う必要も無かろう。向こうが動かないならこっちも動く必要は無いな。」
「賛成だね。とりあえず、そいつらの居場所は分かった訳だし。なるべく印は覚えておこうぜ。」
「この携帯とやらも機能を充実して欲しいのう。気になる奴に色を変える機能とか。」
「女子高生みたいなこと言ってんじゃねえよ。どっちにしろ、画面をいじれ無いんだ。索敵が使えるだけマシってもんだ。」
そのまま森の奥へと消えて行く二人。




