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四春期  作者: 新庄
喜多山 悠
33/34

久しぶりの雨


次の日。悠は担任が教室に来るやいなや進路調査書を差し出した。担任は悠の顔を一瞥してからプリントを受け取った。


 「相談したの?」

「まぁ、父親に」

「そう」


 昨夜、父親とは他愛ない話をしただけだ。この高校は学科が多いとか、こっちは就職率が高いとか、そんな話。それでよかった。もし、父親にお前はここを狙えなどと言われたら、今日プリントを出すのは不可能だっただろう。人に促されて進路を決めるのだけは嫌だった。



 日中は雨が降り続いていた。久しぶりの雨だ。当然部活は中止。帰りは何気なく橋本と一緒に帰ることになった。


 「ちゃんと調査書だせたんや」

「うん。まぁ、適当に書いただけやけど」

「テキトーやな」


 隣で橋本が笑う。飽きてれもばかにしてもいない。ただおかしそうに笑っていた。


 「やっぱ、俺…橋本と付き合いたい」


 傘の中でつぶやく悠。


 「やっぱり?」


 こちらをのぞき込んでくる橋本を、傘で遮った。しばらく傘に落ちてくる雨粒の音が続く。


 「それって好きってこと? うちとおったら楽ってだけちゃうん?」

「安心できるって…イコール好きにしたらあかんの?」

「好き…ね」


 橋本は妙に落ち着いている。

 

 「俺、橋本とキスしたいって思ったことあるし」


 悠は好きということを、直接的にしか表現できなかった。


 「好きは認める。でも、うちは喜多山をそんな風に見たことないし。どうしたん? ひと肌恋しいとかそういうやつ?」


 悠は「どうしたん?」の意味が分からなかった。告白するのがそんなに非常なことだったのだろうか。


 「高校に行ったらな、そんなんいくらでもやれるで」

「なに情報」

「お兄ちゃん。高校では流れとかノリで付き合うねんて。喜多山はモテそうな顔しとるで」

「橋本もそうなるん。ノリとか…」

「なるんちゃう?」

「……」


 足元の水たまりに足を踏み入れてしまった。悠のズボンの裾が濡れて色が濃くなった。水面に映る自分の顔が歪んでいる。


 「大丈夫?」

「橋本は高校どこ行くん?」

「えっ…あぁ、外賀高校やけど」

「東野は?」

「外賀…。偶然やからな」

「聞いてないし」

「喜多山は?」

「決めてないって、さっき言ったやん」

「…うちらと一緒にしたら? レベル的にはそこらへんやろ」

「……」


 人に進路を促されてしまった。しかも相手が橋本なんてたちが悪い。


 「そしたら流れでうちと付き合えるかもしれんで」

「お前…ほんまに自分好きやな」

「お兄ちゃんと同じこと言ってる。うちが喜多山に恋愛せーへんのって、お兄ちゃんに似てるからかも」

「じゃぁ、お兄さん殺す」

「ははっ。そしたら喜多山嫌う」





 END

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