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四春期  作者: 新庄
喜多山 悠
32/34

焦げ臭い


 悠が家に帰り、真っ先に出迎えに来たのが焦げ臭い臭いだった。鞄を持ったままキッチンに入る。中には臭いのほかに、煙が充満していた。煙の向こうには、目を潤ませた里美が立っていた。今にも消えてしまいそうにみえた。


 「何してんの」

「だって、お母さんが勉強してて、それでご飯作れって言われたから」

「断れよ」

「そんなんしたら、怒られるやん」


 里美は母親の言うことをよく聞く。それは里美が母親を好きだからとか、お利口だからとかではない。「怒られるから」だ。里美の行動原理は、母親の恐怖だった。絵里奈は友達の間でも優しいと評判の母親だ。それは素直に嬉しい事実だ。絵里奈の母親、つまり悠にあたる祖母も温厚な性格。そういう家庭環境で育ってきている。だから、絵里奈は子供に対する怒り方をしらない。いつも「むかつく」「腹がたつ」「大嫌い」と、子供のように怒鳴るのだ。

 キッチンには焦げた臭い。里美は顔を赤くしてフライパンを洗っていた。茶色くなった水が音をたてて排水溝に吸い込まれていく。


 「何作んの」

「ハンバーグ。でも、失敗して材料なくなった……」


 悠は冷蔵庫の野菜室をあさる。

 

 「カレーできるんちゃう?」

「ルーあるん?」

「スーパーで買ってくる」

「いやっ! 里美が行く」

 

 里美は濡れた手で、悠の鞄を引っ張った。


 「家に残さんといて」


 小さな指先が真っ赤に染まっていた。


 「じゃぁ、一緒に行くか」

「うん…」


 


 一緒に買い物に行き、一緒にカレーを作った。絵里奈は「おいしい。ありがとう」と里美に笑顔を見せた。里美は「うん」と頷いたが、笑顔はなかった。

 片付けも2人でやった。里美には休むように促し、父親と並んで食器を洗った。


 「おいしかったで、カレー」

「ん」


 悠は洗った皿を聡一に渡しながら返事をした。聡一はその大きな手で、丁寧に皿を拭く。


 「…7月までのしんぼうやな」

「俺はいい。母さんの怒鳴りなんて受け流せるし」

「里美か…。今日は可哀想なことしたわ。食事中ずっと下むいとったやろ?」

 

 聡一は意外に周りを見ていた。


 「悠は母さんのこと好きか?」


 悠は最後の一枚を洗い終える。蛇口を閉めると、妙な静けさが2人を襲った。


 「里美にも聞いたんやけどな」

「…なんて言ってた?」

「好きやて。だからカレー作ったんやって、言いよったわ」

「俺は普通」

「そっか。父さんは好きなんや。だから結婚したんやけど」

「…今、何の話してんの」


 聡一は笑い、恵比須顔を見せた。ふきんをつるしにかける。


 「いや、何やろな。まぁ、悠が普通やったらええねや」

「おやじ」


 悠はキッチンから出て行こうとする聡一を呼び止める。


 「俺、どこの高校行けばいい?」

「…あとでビールもって部屋にきぃ」


 聡一は扉を閉めた。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] なし。 [気になる点] 最近人のものを隠したり、 人いじめする。 夕飯を作っておいておいても、気に食わないようです。 [一言] 気に食わないことがあったら一言でもちゃんと言ってほしい。
2019/11/16 21:38 機動戦士ガンダムサンダーボルト
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