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四春期  作者: 新庄
喜多山 悠
30/34

可愛げ


「モテたい…」


 悠の隣で橋本が呟いた。最近では珍しいことではない。悠に自分の好きな人を打ち明けて以来、橋本は独り言が多くなった。もちろん、悠の隣ではだが。あれからというもの、2人が一緒に過ごす時間は確実に増えていた。別に悠に男友達がいないわけではない。移動教室は友達と行くし、昼休みも友達と過ごしていた。だが、最近は妙になついてくる橋本のせいで、周りが距離をとりはじめていた。変な噂がたたなければいいが。

 今は給食を終えた昼休み。橋本は悠の隣の席に座っていた。もちろん、そこは元々別の男子の席だ。


 「モテるやろ。男子とよく話してるし」

「みんな彼女とか好きな子おるし。女子にサバサバ扱いされてるうちと話したら安心って感じ。…なんじゃない?」


 橋本は終始、悠と目を合わせなかった。教室の窓から真昼の太陽の陽がさしこんでいる。机の上を照らす光を橋本はじっと見ていた。


 「…里美ちゃんはモテるでしょう?」


 さきほどから標準語が混じっている。違和感を感じた。


「あぁー…あいつな。まぁ…。てか、小3にモテとかあるんですかね」

「なんで標準語? 兄妹でにてへんよな。喜多山って愛想ないし」

「似なくていい」

「妹は兄が構ってくれないから、他の男に甘えだしたんちゃう?」


 橋本はくくっと、不敵な笑みを見せる。吹っ切れたせいか、性悪さをさらけ出してきている。


 「かわいげないよね。喜多山」


 悠はため息をついた。そんな冗談をいった橋本を睨んでやるつもりだった。だが、悠が見た橋本の顔は物憂げで、さっきまでの不敵さはなかった。


 「……何? 可愛げがあってほしいん」

「…さぁ。でも、友達としてはちょっと寂しいかも?」

「俺に可愛げがあったら、キモイやろ」

「ははっ。そうかも」


 そこで、授業をつげる5分前のチャイムがなった。

「友達としては」。その言葉が悠の頭から離れなかった。日差しが机に反射して、顔を刺激してくる。眉間のあたりがズキズキと痛んだ。


 「席、戻ったら? 邪魔になるで」

「はいはい」


相合傘をした雨の日。あれから天候が崩れることはなかった。晴天が続いている。

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