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四春期  作者: 新庄
喜多山 悠
29/34

父、母、兄、妹


 「悠はまた、身長が伸びたんだって?」


 夕食終わり。父親の聡一が呟いた。ビールをグビグビと飲み、顔を赤らめている。聡一はもともと恵比寿のような顔をしているせいで、酔っているのかそうでないのか分かりにくい。「165センチ」と悠が答える。聡一は驚く様子もなく高らかに笑った。やはり酔っているらしい。普段はこんな笑い方絶対にしない。絵里奈は「165センチ」と丁寧に繰り返してきた。キッチンの洗い場からリビングを覗く。悠はあぐらをかいてマンガを読んでいた。聡一はソファで寝転がっている。もうじき読んでいる新聞が掛布団になるだろう。


 「悠は猫背やからもったいないわ」

「姿勢悪いんは父親譲り」


 絵里奈は聡一を見てため息をついた。


 「これでも俺は、剣道部やったんやぞ」


 聡一は腕を曲げて筋肉を見せびらかす。


 「その話は聞き飽きた。過去にすがる男ほど醜い男はいないんやって」

「誰が言ったんや?」

「クラスの女子」

「そいつホンマに中学生か? 将来が楽しみやな。はははは」


 太ももを叩いて笑う聡一。


 「昔は悠も可愛かったのに。そんな言葉ばっかり覚えて…」



 「上がったでー。次お兄ちゃん」


 悠の妹、里美がお風呂からあがってきた。濡らした髪をタオルでくるんでいる。絵里奈の真似らしいのだが、ダラダラ髪が崩れてきている。


 「里美、前髪切らなー。目悪くなるで」

「里美な、前髪伸ばすねん」

「何でぇ」


 絵里奈は里美の黒髪をゴシゴシと拭く。タオルを丁寧に巻き直してやった。


 「よっちゃんがな、大人っぽい女の人が好きやねんて。だから伸ばすねん」



 よっちゃんとは里美と同学年の男子だ。自転車屋の息子で、女子にモテているらしい。


 「小3のくせにませたこと言いよる」


 聡一は机上にグラスをおいた。もうビールを飲み干している。


 「お兄ちゃんお風呂」

「悠はもう入ってるねんで」


 代わりに絵里奈が答える。


「なんで?」

「雨に濡れたから…」

「カワイソウ。里美はな、しげ君に傘入れてもらったんやで」

「……あっそ」

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