いつものチョコ
サバサバ系女子とは男子に気に入られたいがあまり、口調を乱暴にしたり「私、サバサバしてるんだよね」という発言を自らする女子のこと。らしい。 美波は生態を説明したあとに、自分のトラウマも語りだした。
「うち、中1の時に嫌われとったんやで。理由もわからんと女子から無視されて…。後から『男子に媚びすぎ』『ぶりっこ』って悪口を言われてたんを知った。そんなつもりなかったのに。『可愛いからって調子に乗ってる』。意味わからんやろ?」
驚くほど早口だった。まくしたてるような口調に、喜多山は何も言えなかった。
「だから…。本当は男子ともっと話したいし、お姫様扱いとかされたいけど、わざと男っぽく振る舞って……。やっと中2になって無視とかもなくなった。知らんかったやろ」
美波は、最後の言葉を少し誇らしげに言ってみた。そうでもしないと泣いてしまいそうだ。喜多山は「しんど…」と呟いた。
「自分抑えるとかしんどいわ」
「…うちは、自分らしく生きていくより、自分を隠してでも女子と仲良くしていきたい。じゃないと…」
「これからも?」
「男子は分かってへんな。この世界は女子の評価が絶対なんやで。4組の佐藤くん、惠美の悪口言って女子全員から無視されるようになったねんから」
結果的に女子はめんどくさい。喜多山はそういう考えに至った。ふぅっと息を吐き、傘の持ち手をずらす。汗がにじんできていた。傘はもう耐水性を失っている。布の部分にはじかれない雨がべたっとねばりついてくる。
「……男子は良いよね」
「そうでもないけど…」
「喜多山。うちのこと嫌いになった?」
「はっ?」
「喜多山は、うちが女子のくせにサバサバしてたから、友達になってくれたんやろ?」
「まぁ、それもあるけど」
「……否定せんのか…」
「でも、今更友達やめるとかはないけどな」
「ほんま……?」
「チョコいる?」
「いただく…」
喜多山はいつものチョコをポケットから出した。美波はゆっくりとチョコを口に運ぶ。今日は大事に、舌で転がしてみた。いつもと同じ味だ。
「将ちゃんに……男に賢さを求めたうちが、ばかやったわ」
「おっ? もうギブ?」
「そんなわけないやろ」
END




