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四春期  作者: 新庄
東野 将也
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 次の朝。将也は頭痛とともに目覚めた。なんとなく体もだるい。体温を測ると37度5分だった。将也は、昨日の興奮が影響しているのかと思うと、恥ずかしくなった。

 夕方、幼馴染がプリントを届けに来たが、話した内容はすぐに忘れてしまった。




 次の日。体調の回復した将也は学校に行き、とんでもない事実を知ることになった。自分の席に向かおうとして足を止めた。唾をのむ。将也の席は最後列の窓際、左から数えて2番目なのだが、その右隣にはあの女子が座っていたのだ。長い黒髪をさげ、うつむいて自分のカバンを探っている。将也はその後ろを通り、自分の席についた。

 右隣を見ることはできなかった。よく考えれば。右隣に目を向けたことがない。まず、女子ということでむやみに話しかけたりはしないし、左隣は同じ小学校の男子だったので、そいつとばかり話していた。授業が暇なときは寝ていたし、空を眺めるために左側ばかり見ていた。隣の女子はクラスの中で目立たない女子。授業中にモノを落とすこともなかった。今まで関わりあう機会などなかったのだ。

 しかし将也は今、右隣の女子にとてつもない存在感を感じている。昨日のことがあるし、こういう女子があんなことをしているという事実が、将也の想像力を膨らませていった。



 暗闇の中で、「西川さん」という名が聞こえた。右隣で椅子が床をこすれる音がした。将也は頭を上げる。どうやら眠ってしまっていたらしい。蛍光灯の光に目を細めながら右を見る。あの女子が英語の教科書を持って立っていた。教師に英語の音読をあてられたらしい。今は確か6限目。将也は、隣りの女子が「西川」という名前であることを思い出した。新学期が始まってまだ間もない。女子のほとんどの名前を覚えられていなかった。

 西川は素晴らしいほどの発音で英文を読み上げる。こんな音読をする女子は珍しいと思った。たいていは恥ずかしがって棒読みになるか、うざくなるほどゆっくり読んでかわいこぶるかだ。声が小さすぎて聞こえない女子もいる。

 周りはコソコソと騒ぎ出している。クスクスという笑い声も聞こえた。将也は西川に目線を戻す。西川は凛と立っていた。表情一つ変えず、目だけが文章をおっている。綺麗な唇をしていた。ふっくらと膨らんだ薄ピンクの下唇。

  

 「センキュー。西川さん、シッダーン。では解説にはいりまーす!」


 西川はスッと座り、筆箱に手を伸ばした。筆箱にはYを模ったキーホルダーがついていた。

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