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四春期  作者: 新庄
西川 由香子
16/34

イチゴ1


 夕食の後には、政成の持ってきたイチゴが出された。


 「甘…」


 良美はそう言いながらも、爪楊枝でイチゴを食べ続けている。由香子は黙ってイチゴを食べた。熟れたイチゴが舌に絡みつく。鼻に香りがまとわりついた。


 「政成、彼女いるんやって」

「…ふーん」

「もういい歳やし、結婚したらいいのに」


 由香子は手を止めた。指先に力が入る。爪楊枝がミシッと音をたてて折れた。


 「もういらんの?」

「…うん。何か、甘すぎてお腹いっぱい」

「そうやな」


 良美は机の中央に置いていたお皿を、自分の方へ引き寄せた。

 

 「おじさんって、結婚できると思う?」

「何やその言い方。政成は面倒見とかいいし、できるやろ」

「……お母さんがおじさんのこと褒めるなんて、珍しいな」

「…そう?」


 良美はふぅっと息を吐き、爪楊枝を置いた。ラップを取り出してイチゴの皿に巻く。「甘すぎやわ」と呟いて冷蔵庫にしまった。再び席につく。

 向かい合う2人に沈黙が続く。由香子は勘付いていた。良美が自分に政成のことをあきらめさせようとしていることを。だから、普段しないような政成の話をしている。「彼女がいるし、結婚したらいいのに」と。

 由香子は別に本気で政成を好きだと思ったことはない。ただ、自分に優しくしてくれる人が政成だけだったというだけだ。良美の思い過ごしなのだが、自分から政成を遠のけようとしている姿は、醜く無様で悲しかった。


 「お母さんはおじさんのこと嫌いやと思ってた」

「…好きも嫌いもないわ。家族やし……」

「私はおじさんのこと好き」

「………そう。なら、イチゴのお礼言っといて」

「ふっ…。分かった」


 由香子は上の歯の裏を舐めた。まだイチゴの甘ったるさが残っていた。

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