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四春期  作者: 新庄
西川 由香子
12/34

空席


 日光が由香子の薄い頬を刺激した。今日はやけに明るさを感じる。耳にかけていた黒髪をおろし、髪で横からくる光を遮った。本を閉じて左隣を見る。まだ空席だった。机の引き出し部分からはプリントの一片が出ている。その奥に座っている男子と、ふいに目が合った。その男子は由香子からスッと目をそらし、自分の前に座る女子に話しかけた。


 「なぁ、東って今日休み?」

「えっ? 知らない。まだなだけちゃう?」


 話しかけられた女子は教室の前の壁にある時計を振り返る。ショートの髪がすばやく揺れた。


 「もう25分やで」

「うそー。休み!? ショック…。将ちゃん休みなんや…」


 ショートヘアーの女子は椅子に浅く座り、足を伸ばした。スカートから太ももがちらりとのぞく。肉の少ない足だった。いやらしさなど感じられない。


 「絶対プリント届けろとか言われるぞ。橋本、東と家近いもんな」

「最悪ー」


 

 ガラッと教室のドアが開いた。グッドモーニングと大きな声とともに担任が入ってくる。英語教師の担任は会話に英語を入れてくる癖があり、生徒のモノマネ対象になっている。前髪をがっちりと後ろ髪と一緒に後ろで縛り、骨格のよい顔を引き立たせていた。


 「じゃあ、点呼しまーす」

「先生。東野君って休みなんですかー」


 先ほどの男子が手をあげる。


 「熱があるみたいですよ。あっ! 橋本さん」


 担任は思い出したように手を叩く。英語の教師だからかしらないが、いちいちジェスチャーが多く、オーバーなところがあった。アイラインをバシッときめた目で、橋本という女子を見る。


 「はい」

「あなた、東野君と家が近いわよね。帰りにプリントお願いできる?」

「はーい…」

「じゃあ、点呼します」


    



 隣がいないというだけでこんなにも授業の受け方が違うのかと驚いた。左側が空席なだけで、スースーする。日光が直接当たり皮膚が痛い。由香子は長い髪の毛をうっとおしく感じた。



 そして次の日。由香子は、隣の男子が自分にとっていかに重大な人物であるかを知ることになる。

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