11 宝箱と階段
宝箱と階段
『菊、宝箱はどうなる』
「はい、宝箱は二種類あります。使い捨てと固定、使い捨ては一度開けられれ
ば消えます。固定は一日に一回だけ中身を補充します。ただし、冒険者が同
一階に存在している時は補充しません。使い捨ては10G、固定は50Gで
す」
『宝箱の罠は?』
「針、毒針、毒ガス、爆発、警報、装備消去の六つです。いずれも10Gです」
『それぞれ、説明してもらえる?』
「針は解除者にダメージを与えます。ライフの半分、毒針はさらに毒を付与、
毒の効果は一フロア通過で5%です。毒ガスはフロアに待機者全員をどく状
態にします。爆発は針効果をフロアの全員に与えます。警報はそのフロア全
モンスターを呼び寄せる効果。装備消去は解除者の装備をすべて消します」
まあ、予想した通りの内容だ。
隆之の経験したゲームではもっと過激な罠もあった。
その辺はデスペナルティーと同じなのだろう。
あまり過激にしては挑戦者がいなくなるからだ。
でも解除方法はあるのかな?
その点について聞きたかった。
『菊、罠解除の方法はあるのか』
「盗賊による解除しかありません。罠が判っていれば100%です。
ただ、僧侶系の魔法に罠察知があります。罠さえ、はっきり判っていれば、
誰でも75%の確率で解除可能。不明の場合は25%の確率で解除成功。盗
賊なら90%可能です」
盗賊でも確実ではない様だ。
罠察知の魔法を使えば有利ではあるが、回復担当の魔法を使うことを考えれば
かなり厳しいものなのだろう。
ここで疑問に思うことが出た。
パーティー構成で6人が当たり前のように考えていた。
その辺も聞いておきたい。
『菊、冒険者のパーティーは6人までか?』
「いえ違います。メンバー制限はありません。でも一番多い組み合わせは六人
です。戦闘職三人、回復魔法職一人、攻撃魔法職一人、盗賊が一人です。
盗賊は、戦闘もこなす場合多いです。女性なら魔法職を兼任する場合もあり
ます」
シミュレーションで、盗賊がいなかった理由は罠がなかったせいだ。
そのため、後衛の魔法職が一人増えていた。
もし、罠を仕掛けていれば、当然盗賊が入っている。
その辺の知識がなくて、シミュレーションを一回損をした気分になる。
まあ、過去を振り返っても仕方が無い。
ゲームと違い全方向からの襲撃だ。
酒場で、女性がごつい姿をしていたのも頷ける。
後衛は背後から襲われれば前衛になるからだ。
盗賊が戦闘職に近いのも納得だった。
でも、その辺が隆之には納得できない物があったのは事実だ。
迷宮なら、やはり前衛と後衛が当たり前!
迷宮でモンスターが消費されるのは仕方が無い。
でもそれを最小限に抑えたい。
そのためには、戦う冒険者を限定できた方が良い。
迷路を通過するたびに強い冒険者に惹かれたモンスターがメイン通路に顔を出
しては餌食になってしまう。
強いキャラクターならロスはない。
けれども、その前後に弱いパーティがいればその可能性が大きい。
強いキャラクターパーティーと弱いキャラクターパーティーが共存しない手段
を考える。
迷宮の形状はすでに決めていた。
輪状に配置しておく。
そして、細かい輪が随所に連なるようにする。
キャラクターがモンスターを追いかけても罠で足止めだ。
その状態で、メイン通路をどうするか?
いっそ、強いキャラクターはさっさと下に行ってくれれば・・・
そうすれば、強弱の混入が起こらないから楽な構成になる。
隆之の挑戦した迷宮の中にはいきなり飛ぶ物もあった。
念のために、ワープについて聞いてみた。
『入り口から各階にジャンプする手段はあるのか?』
「あります。ただし、レベル制限と階数制限は自動的に掛かります」
『レベル制限?』
「先に階数制限を説明します。階数は十階とびに階段室へ運ばれます。帰る時
は入り口にいきなり出現します。レベル制限は二通りあります。一つ目はそ
の階に到達するだけの必要レベルがあること。二つ目は過去に使ったことが
あることです」
その説明でほぼ解かった。
到達レベル以下の挑戦者は、過激にチャージして一度帰るのに使ってもその階
まではまだ使えない。
そして、他の迷宮で経験値を積んできても一度はその階から帰還しないと使え
ない。
まあ、定番のことだ。
十階跳びも『この世界の常識』ということなのだろう。
階段についても、上級者は一度通過すれば次から使わないことが判る。
あまり混在は気にしなくても良いのか?
しかし、最初から分かれていればもっと都合が良い。
上級者はさっさと下に言ってくれれば何も考え無くてよいからだ。
それこそ、エレベーターのように適正階まで一気に下りてくれれば・・・
そこで閃いた。
入り口にいきなり階段を設けることだ。
地下十階までは迷路探索無しで地下に降りられるようにしておく。
いや、最初から階段室のようにして遥か下まで設定しておいたら?
そうすれば、冒険者達は勝手にレベルのあったところで探索をする。
冒険者が適正なレベルで戦ってくれれば、収入は見込める。
逃げるモンスターを追いかければ、罠を発動だ。
これなら、冒険者達は勝手に適正レベルの迷宮で輪舞を踊る。
そして、そこで鍛えられた冒険者だけを相手にする深層迷宮だ。
方針が決まった隆之は迷路作成に掛かった。