ツインズ・フール【64】
一人の神殿兵が、ふと庭園へと目を向けた。
そして隣にいたもう一人の神殿兵へと声をかける。
「おい」
「どうした?」
「この庭園はまだ調べてなかったよな?」
うげーッ!
『うげーッ!』
巫女は無言でリアクションを、俺とおっちゃんは内心で叫んだ。
どうすんだよ、おっちゃん!
『どうしようもない。これはもう運だ。運にかけるしかない』
運頼みかよ!
『今動けば百パー見つかる。だが動かなければ九十八パーセントの確率で見つかる』
それ二パーセントしか助かる確率残ってねぇじゃねぇか!
『二パーセントでも残っているだけマシだと思え』
嘘だろ、おっちゃん!
「何事ですか?」
落ち着き払った綾原の声がすぐ近くで聞こえてきた。
「奈々様」
「奈々様」
綾原は答える。
「巫女様が今慌てて向こうの方へ走って行かれたのですが、何かあったのですか?」
「行くぞ」
綾原を無視するように、神殿兵が向こうへと走っていくのが足音でわかった。
複数の足音が遠ざかり。
綾原が俺たちのいる茂みに声をかけてくる。
「またかくれんぼですか? 巫女様」
茂みから巫女が慌てて顔を出す。
「ち、違う! これは──」
言いかけて、巫女はハッと口元を手で覆った。急に取り繕った態度で女々しく身じろぎ、
「ちち、ち、違うでございますわよ。ほほほ」
俺は密かに鼻で笑った。
大変だな、おっちゃん。
綾原が巫女に詰め寄る。
「やはり巫女様の体には何かが取り憑いているようですね」
たじろぐように巫女が身を引く。
「い、いや、実はだな、これには深いわけがあって」
声も見た目も巫女なだけに事情を説明するのが大変そうだ。
内心でおっちゃんが俺に助けを求めてくる。
『おいコラ、笑ってないで助けろ。お前の知り合いだろ? どうにかしろ』
仕方ないな。
俺はその場から立ち上がり姿を見せた。
綾原が俺を見てハッとする。
「あなたはあの時の──。無事だったのですね」
俺は綾原に事情を説明しようとして……。
…………。
声が出ないことに今更気付いた。
俺は無言のまま情けなく頬を掻いて視線を逸らす。
巫女が黙って俺を睨んでくる。
『余計事がややこしくなっただけじゃねぇか!』
だったら俺にどうしろって言うんだよ!
ふと複数の足音が聞こえてきて。
綾原が俺の手を取り、どこかへ導く。
「事情は後ほど聞きます。あなたも巫女様も、どうぞこちらに」




