表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/74

足跡【36】


 ──数時間後。

 【アタン町 検問所】



 検問所の前に立つ二人の神殿兵に、街道から落ち着いた足取りでやってくる二人の神殿兵の姿が目に留まった。

 仲間であることを知ったアタンの神殿兵は、服装からしてその三人が伝令兵であることを察し、張り詰めていた肩を落として声をかける。


「司祭様は今【ガーネラ】へ出向いておられる」

「急用か?」


「……」

「……」


 三人の伝令兵は足を止め、無言の間を置いた。

 様子のおかしい伝令兵たちにアタンの神殿兵は互いに顔を見合わせて首を傾げる。

 すると一人の伝令兵が黙ったまま懐から一枚の書状を神殿兵に手渡した。

 伝令兵は閉ざしていた口を開き、用件を伝える。


「綾原奈々という名の女とKと名乗る少年を捜している。昨夜、総本山が複数の指揮階級黒騎士による襲撃を受けて壊滅した。巫女様は無事だ。しかし綾原奈々という女が巫女様を誘拐し、どこかへ連れ去ったようだ。その件にKという少年も関与している」


 二人の神殿兵は書状から顔を上げて驚く。

「奈々様が巫女様を誘拐?」

「何を馬鹿な。あんなに巫女様と姉妹のように親しい間柄の奈々様がそんなことをするはずがない。きっとあの町へ避難させたのだろう」


 その伝令兵は首を傾げる。

「あの町?」


「【ガーネラ】だ。巫女様の生まれ故郷の」


 伝令兵が納得の頷きを返す。神殿兵から書状を受け取りながら、

「そうか、わかった。他の司祭様にもそのようにお伝えしておこう」


 一人の神殿兵が不思議に首を傾げて伝令兵に問う。

「あと、その書状にあったKとはどのような人物だ? 珍しい名だが」

 もう一人の神殿兵が何かを思い出したように言葉を続ける。

「そういえば、しばらく前にケイという名の少年がここを通ったな。そいつも女を連れていたが、変な獣ばかりも連れていたな」


 伝令兵が怪訝な声音に問い返す。

「獣?」


 神殿兵は思い返すように虚空を見上げて指折り数えていく。

「あぁ。ケンタウロスに小猿、スライムに変な毛玉の生き物、それと猫か」

「どこにでもいる普通の使役魔術師だ」

「普通というより馬鹿だな、あれは」

 神殿兵は笑って続ける。

「まぁ本来、頭の良い使役魔術師ならば使役の数より一体の実力を優先するけどな」


「……」

 伝令兵は笑わなかった。ただ静かに「そうか」とだけ呟く。そして背後に居る伝令兵へと言葉をかける。

「アリア、赤猿」

「待ってました♪」

「暴れていいってことか? セガール」


 青く澄んだ空は蝕まれるように闇色へと染まっていく。

 辺りは一気に暗闇へと落ち、どこからか複数の低い唸り声が聞こえてくる。


 二人の神殿兵は笑いを止め、そして青ざめた顔でその場に腰を抜かした。


 暗く染まりゆく地面から魔物が次々と生まれ出てくる。


 伝令兵──セガールは、二人の神殿兵を前に冷たく吐き捨てた。

「Kが出てくるまで破壊しろ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ