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お前が言うな!【33】


 馬車は徐々にスピードを弱め、そして俺たちの真横で停車する。

 俺はさらに警戒心を高めた。

 いつでもその場を逃げ出せるよう体勢を取る。

 すぐに逃げ出さないのは相手の目的が不明である為。相手の行動をぎりぎりまで探ることができれば少しでも隙が作れるとおっちゃんに言われたからだ。

 俺は何も反撃せず、相手を観察した。

 御者台に乗っていた人物は一人。

 俺と同じ白の外套衣でフードを目深に被り、身を隠している。


 相手が俺に言ってきた。


「乗りな」


 男勝りで勝気な若い女の声だった。


「そんな馬車で奴らに追われたら逃げられやしないよ。こっちに乗りな」


 まさかそんなことを言われるとは思わなかった俺は気勢をそがれて呆然とした。

 頭の中でおっちゃんに相談する。


 どうする? おっちゃん。


『乗りたければ乗ればいい。お前の好きにしろ』


 敵じゃないのか?


『少なくとも向こうはそう思っていないようだ』


 え? なんでそんなことがわかるんだよ。


『気になるなら聞いてみればいい』


 なんて聞けばいい? 


『そんなことは自分で考えろ』


 ……。


 冷たく突き放された俺は、どう言えばいいのかしばらく自問自答に迷っていた。

 相手の素性をストレートに聞いてみるか? いや、下手なことは聞けない。こっちが聞かれた時にどう答えていいかわからない。だったら聞かない方がいいだろう。

 どう質問する?

 せっかく向こうも聞かないで乗せてくれるんだ。その行為には甘えたい。

 だけどある程度の警戒心は持っておきたい。

 相手が何者であれ、今はちゃんとした馬車に乗って移動したい。


 すると俺の前方にいたケンタウロスが何を思ったか、彼女へと顔を向けて真顔で言い放った。


「お嬢さん。今日のパンティー何色ですか?」



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