だろう運転は危険かもしれない運転【31】
上半身が裸の人。そして下半身は馬。
その後ろにボロい手押し車。
俺とDはそのボロい手押し車になんとか乗り込んだ。
二人ようやく乗れるくらいのスペースしかない小さな荷台。
膝を抱えて小さくなって縦一列に座らなければならない。
そうしないと乗れないほど狭いのである。
聞こえてくる今にも折れそうな木の軋み音。
いまさら重量オーバーだとは言わないよな?
俺がそろりと前方を見やると、向こうも同時にこちらに振り向いてきた。
とても濃い顔の人馬である。
そいつが悲しい顔で俺をしばらく見つめた後、何事もなかったかのように顔を前方へと戻した。
無言で手押し車をゆっくりと引き始める。
陰気にぼそりと、
「……もしかしたら運んでいる途中に車が壊れてしまうかもしれない」
だったら俺は今すぐ降りる!
俺は荷台から飛び降りようと片足をかけた。
すると隣からDが俺の服を掴んで真顔で止めてくる。
「前にもそうやって飛び降りた奴がいたが、その直後に必ず足を捻挫していた。だから君もきっとそうなるだろう」
何の予測だよ、それ!
ツッコむ俺に小猿が平然と言ってくる。
「そう慌てるな、小僧っ子。先は読んでから行動するものじゃ。車はまだ壊れてなどおらん。次の町にたどり着くまでに壊れてしまってから考えればいいだけのこと。そうであろう?」
その言葉に俺はツッコまずにはいられなかった。
いや、壊れてしまった後だと考えるの遅くね?
おっちゃんが俺の頭の中でため息まじりに呟いてくる。
『たしかに遅いな。だが何が起こるかもわからない次の町まで歩いて疲労をためてしまうより、少しでも体力を温存して警戒できる余裕を持つ方がマシにも思える』
けど、おっちゃん。本当に次の町までこの車が持つと思うか?
『おそらく次の町までは大丈夫だろう』
本当にそれ信じていいんだろうな?
『たぶんな』
ケンタウロスが俺たちの乗った手押し車をノロノロと引きながら、ぼそりと。
「……そこまで体力が持たないかもしれない」
すでに歩く未来しかないじゃねぇか!
◆
しばらく森の道をトロトロと進んでいると、背後から車輪と蹄鉄の音を響かせながら馬車が近づいてきた。
振り返れば灯火を付けた一台の馬車がゆっくりとこちらに向かってくる。
もしかしたら──




