そんなところで何やってんだよ!?【22】
暗闇となった部屋の中、俺は手を叩き合わせた。
すると部屋に明かりが点り、閉ざされていた部屋に光が差す。
その瞬間、俺は目を見開き愕然とした。
密猟されたであろう生きた魔物や動物たちが、たくさんの檻に入れられてウロウロとしている。
な、なんだよ、ここ。来てはいけない場所だったのか?
俺が部屋内を見回していると、何の気配も無く背後から唐突に声が掛かる。
「何かお探しですか?」
俺は再び悲鳴を上げてその場に腰を抜かした。
覗き込むように、店主がじっと俺を見つめてくる。
俺は声を震わせ謝った。
ご、ごご、ごめんなさい。見てはいけないところだと知らなかったんです。
「お客様はお目が高い」
え?
「ここはより高度な魔法陣を完成させる為に必要な、貴重で新鮮な素材を豊富に取り揃えた場所です。どうやらあなたは見た目と違い、魔術とはなんたるかを心得ていらっしゃるようだ。大抵の素人はこの場所を見つけることができず口頭にて交渉してきます」
は、はぁ。さいですか。
「こちらの商品、値段につきましては要相談となっております」
俺は全力で首を横に振った。
い、いや、いらないです。
「その声、もしかしてKデシか?」
懐かしい声が聞こえてきて俺は声のする方へと視線を向けた。
見上げた三段目ほどの高さの檻の中に、耳を伏せて不安そうな顔で俺を見ているデシデシの姿があった。
俺は思わず指を向けて興奮気味に叫んだ。
デシデシ!? お前、なんでこんなところにいるんだよ!
デシデシの顔がぱぁと華やぐ。涙と鼻水でぐしょぐしょに濡れた顔で尻尾を振って檻の中から懸命に手を伸ばしてくる。
「やっぱりKだったデシ! 良かったデシ! 助けてほしいデシ!」
俺は慌てて床から飛び起きてデシデシのいる檻に張り付いた。
何やってんだよ、こんなとこで!
デシデシが俺の手に必死にしがみ付いて泣きつく。
「団長の偽者にやられたデシ。目が覚めたらこんなとこに売られていたデシ」
……。
俺は額に人差し指を当てて呻いた。
内心でおっちゃんを呼ぶ。
『なんだ?』
なんだじゃねぇよ。説明しろ。
『やーだね』
言うと思った。
『それとついでに。こっちも助けてくれるとありがたい』
は?
俺は辺りを見回した。
『おーい。こっちだ、こ──違ぇーよ、そっちじゃなくこっちだ』
何気に振り返った先に、同じく檻に入れられた毛むくじゃらの生き物──モップと、水色スライムの姿もあった。
水色スライムが嬉しそうに飛び跳ね、モップにいたっては毛の合間から出した裸手を大きく振っている。
俺は目が飛び出るほどに見開いて驚愕に叫んだ。
ちょっと待て! なぜお前等がここにいる!?
すると、俺の声を聞いて駆けつけたのか、セディスがドアを開けて入ってくる。
「どうかしたのですか?」
俺は困惑の表情を浮かべてデシデシへと視線を向けた。
その手にぎゅっと頑なにしがみついて離れようとしないデシデシ。
セディスがそれを見て、不思議そうに首を傾げる。
「それはもしや、あなたの使い魔ですか?」
俺は答える。
いや、使い魔じゃなくコイツ等は俺の大事なダチなんだ。どうにか助けられないか?
店主がうかがう様にセディスに歩み寄ってきて尋ねる。
「ご購入ですか?」
セディスはニコリと微笑んだ。
「わかりました。それ等は全て私が買いましょう」




