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SR:B 2 ─そして世界は狂い出す─ 【通常版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第二部】 現実世界編
14/74

コードネームX【14】


 正午を少し過ぎた頃。

 俺は受話器を取り、名刺の裏に書かれたJの携帯番号を見ながら電話をかけた。

 要は外に出なければいいんだよな?

 みんなの無事くらい確認しておきたい。

 三度目のコールの後、Jが電話に出る。

 

 あ、えーっと。

 そういや俺、Jの本名を知らない。


「Jでええ。その前に、お前の学校ってどこやねん。場所言うてから切れや」


 やっぱりJのところにも俺から電話があったのか?


「そういう反応返してくるっちゅーことは電話してないんやな」


 うん、してない。


 舌打ちしてJ。

「ついに黒騎士が仕掛けてきたんか。ヤバイなー、こっちは何も準備できとらんのに」


 俺も。


「お前はヤバイやろ。頭の中ン奴にもこのこと急かしといた方がええで。奴ら何を考えとんのかわからんからな。まぁそっちも気ぃつけーや」


 わかった。


「ほな、まいど」


 Jとの電話はそこで切れた。

 俺は静かに受話器を置く。

 そしてホッと安堵の息を吐いた。

 Eもさっき結衣から連絡があって無事だと確認した。

 あとまだ確認できていないのは綾原だけだ。

 まさか綾原に限ってそんなことはないよな?

 うん。そういうところはちゃんとしっかりしてそうだし。


 そこへタイミング良く電話がかかってくる。

 俺は受話器を取って電話に出た。


 もしもし?


 電話先の声は結衣だった。なにやら緊急に、切羽詰った声で言ってくる。

「お願い、K! すぐに学校に来て! 奈々ちゃんが」


 俺は慌てた。

 学校に!? 携帯は? アイツ携帯持っていただろ? 連絡つかないのか?


 すると電話先の相手が結衣ではない、別の優男の笑い声へと変わった。


「僕を本当にMだと思ったのかい? Kって単純なんだね。こんな能力で騙されるなんて、君の力って実は大したことないんじゃない?」


 俺は声を落として尋ねた。


 お前は誰だ?


「初めまして、K。僕のコードネームはイクス。君を狩る為に僕は生まれ変わった」


 俺は目を点にする。


 ……。いや、お前何言ってんだ?


「バトルをしよう、K。僕の力が君と戦いたくてうずうずしているんだ」


 バトル?


 電話の向こうでXが笑った。

「あれ? もしかして君、焦っている?」


 焦っているだと?


「そう。君はまだ完全にクトゥルクの力を操れていない。だからいきなりバトルを申し込まれて焦っているんだろう?」


 馬鹿馬鹿しい。この力が欲しいんだったらお前にやるよ。どうやってやるのか知らんけどな。


 途端にぴたりと、Xは笑うのを止めた。ぼそりと言ってくる。

「ほんとムカツク」


 は?


「そんなに日常が楽しいかい? K」


 何が言いたい?


「だったら僕が君の日常を壊してあげるよ」


 途端、急に受話器からハウリングのような音が聞こえてきた。

 鼓膜が裂けるような奇怪音に、俺は思わず受話器から耳を離す。

 同時、頭の中でおっちゃんが怒鳴ってくる。


『何をしている、この馬鹿野郎が! 今の内に電話を切れ!』


 は?


『電話を切れと言ってるんだ!』


 受話器の向こうからXの声が聞こえてくる。

「君の同級生に綾原奈々って居たよね?」


 ……。

 悪い、おっちゃん。俺、なんかコイツのことを許せそうにない。

 俺は真顔になり再び受話器を耳に当てて言った。


 場所を言え。


「学校の図書室で待っている。早くしないと彼女が大変なことになるよ」



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