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SR:B 2 ─そして世界は狂い出す─ 【通常版】  作者: 高瀬 悠
【第一章 第二部】 現実世界編
11/74

気のせい、だよな?【11】


 やっと結衣から解放された俺は、買い物を済ませて一人家路に帰りついた。


 ただいまー。


 リビングから母さんが顔を見せ、玄関へとやってくる。

「ご苦労様。遅かったわね」


 色々あったんだ。


 俺はそう言って母さんに買い物袋を手渡した。


「あら、どうしたの? その手首のミサンガ」


 ぅげッ! 忘れてた。

 俺は慌てて手首を隠すと、「なんでもねぇよ」と言って顔を逸らした。


 母さんがニヤリと笑う。

「もしかして母さんの知らないところで彼女とかいるんじゃないの?」


 そんなんじゃねーよ。


「それより、ちゃんと買ってきてくれた?」


 エリンギ?


「残念。えのき」


 やっぱりな。そうだろうと思ってえのきにした。


「さっすが我が息子。わかっているじゃない」


 まぁな。


 俺はそう答えて靴を脱ぎ始めた。


 今日の夕飯なに?


「きのこカレーよ」


 カレー!?


「あら? ダメだった?」


 そうじゃなくて、えのき関係なくないか?


「きのこカレーと言えばえのきでしょ?」


 しめじだろ!?


「あ、それよ。しめじ」


 ……いや、もう何きのこだろうと別にいいよ。カレーだったら。


 俺は玄関から上がると二階へ歩いていった。

 その後ろから母さんが声をかけてくる。


「あ、そうだ。さっき朝倉君から電話があったわよ」


 わかった。後で電話しとく。


「朝倉君と何かあったの?」


 俺は足を止めて怪訝な顔で振り返る。

 え? なんで?


「気のせいかしら。なんか思いつめたような暗い声をしてたのよね」


 あの朝倉が?


「そうなの。聞いたんだけど、何も話してくれなくて」


 ……。

 自室へ行くのを止め、俺は玄関にある電話へと向かって歩いた。


 受話器を取り、朝倉の家に電話をかける。

 しばらく呼び出してみたのだが、誰も電話に出なかった。


 俺は首を傾げて電話を切る。

 誰もいないみたいだ。


「変ね。ほんとについさっきだったんだけど」


 出掛けたのかな?


「そうかもしれないわね。またしばらくして掛けてみたら?」


 うん、そうする。


「じゃぁお母さんはさっそく料理でも始めますか」


 え? 今から?


「お風呂先に入ってなさい。その間にぱぱっと作っちゃうから」


 母さんが買い物袋を手にキッチンへと戻っていく。

 俺も電話から離れ、一階の風呂場へと向かおうとした。


 ふと──。

 電話のベルが聞こえたような気がして。


 俺は足を止めて電話へと振り返った。

 しかし、電話は鳴っていない。


 気のせい、だよな?


 俺は首を傾げて風呂場へと向かった。


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