第3話 中学一年~相棒との出会い~
三話にして、路線変更。ユウキサーガ―日常編のような、短編集にしました。
時系列も視点もバラバラですが、本編ではまず見られないキャラの一面を重視しました。
ちなみに本編でまだ登場していないキャラも大勢でますが、流石に三人だけでは回せなかったからです。
サブタイトルに時期を書きます。思ったより飛び飛びです。
俺の名前は雪道吹雪。またの名を、ブリザードプリンス。
名乗った記憶はないが、何故か名乗ったとされている。
中学一年生であり、最近になって出来た友達と一緒にいる。
その友達はガタガタ震えながら、冷汗を浮かべる。
冬木ユウキ。英語交じりで冗談を言う一見気の良さそうな奴だが。
仲良くなるまで少々他人を拒絶しがちな人物だ。
「なあ、吹雪……」
「待ったはなしの約束だろ? 卑怯者」
そんなユウキは今、重要ミッションの直前だ。
彼にとっては最も困難と思われる。
知らない女子に話しかけると言う。
早い話、罰ゲームでナンパして来いとなった。
変なところで律儀な性格なので、罰ゲームを断れない。
それで、なぜこいつが罰ゲームを受けたかと言うと。
「ババ抜きで、透視能力を使った、お前が悪い」
「それはそうだけどさ!」
俺達はドーナツを賭けて、ババ抜きで勝負をした。
サイキッカーであるユウキは、透視能力でズルをしようとした。
それを見越した俺は、事前にカードをすり替える事で敗北を免れた。
ズルして勝とうとした制裁として、冗談でナンパして来いと言った。
すると本気にしたので、面白いからそのまま見ている。
「華やかな女子は苦手だな……。出来るだけ、大人しそうで垢抜けのにない子を……」
「ちょっと、危ない発言だが。行って来い」
学校の廊下で隠れて、声を掛けられそうな女子を探す。
仲良くなるまで時間がかかり、警戒心も高いユウキに。
ちょっと酷な事かもしれないが、これも成長だと思ってもらおう。
「へ、HEY……。そこの君!」
凄く固い態度で、一人の女子生徒に話しかけた。
上手い事、一人でいるボッチそうな子を見つけたものだ。
英語交じりなせいで、少しチャラさがあるが。態度がガチガチ。
俺はここで、一つの問題があると気づく。
俺達はナンパと言うものを、単語しか知らない。
何をどうすれば成功なのか、全く分からなかった。
「え、ええっと……」
話しかけられた女子は、戸惑っている。
違うクラスの知らない男子が、話しかけたらそんな反応だろう。
ユウキはどう対応するのか見物していると。
あの男は突然、銃とナイフを取り出した。
ハンドガンタイプの銃に、短剣を取り付けて、女子生徒に見せる。
「これどうやって使ったら良いんだろ?」
口説くという事が分からない俺でも。
これが間違いであることは、良く分かった。
いきなり銃と剣を見せつけられたら、男女問わず正気を疑う。
「あ……。ちょっと貸して」
女子生徒はユウキから銃をぶんどった。
銃を回しながら見つめて、引き金をカチカチ引いている。
勿論おもちゃなので、実際に発砲されることはない。
っというか、あの子もちょっとおかしいな。
引くどころか、話に乗っかっちゃってるぞ。
「刺して、撃てば良いんじゃないかな?」
銃を突きつけながら、真剣に語る女子生徒。
「刺して、撃つ?」
「こう、ビーンって近づいて。グサッてやって。ぶぅんって飛んで。バンって……」
擬音が多過ぎて、俺には理解できなかった。
腕の動きで説明してくれるが、何やってんのか分からん。
「そうか! 君は一流じゃないか!」
ユウキには通じているようだ。
褒められた女子生徒も、悪い気がしない表情だ。
「でも剣が短すぎる。銃も小さくて使い辛い」
「仕方ないだろ。劇中の再現だと、子供が危ないから。先っぽもゴムだし」
「甘いね。私は大人のための、ラウズを買ったよ」
何か知らないが、盛り上がっているなら良いや。
なるほど、ナンパってこれか。
やる機会は一生ないけど、覚えておこう。
二人はすっかり、話が弾んでいる。
その過程で、女子生徒の事を知ることが出来た。
「草月蒼……。私の名前。蒼で良い」
「僕は冬木ユウキ。好きに呼んでくれ。それで草月さんさ……」
「蒼で」
草月蒼と名乗った少女は、銃口を突きつけた。
懐からトランプを取り出して、銃に当てる。
「ラピットとバレットに、辛味噌をまぜて……。ファイアー!」
引き金が引かれた後、ユウキは後ずさりをした。
弾を発射することができない、子供用のおもちゃなのだが。
「凌いだ!? 私の攻撃を……?」
「セイヤァ! セイヤァ! セイヤァー!」
「なっ! コイツ運命のメダラーなの?」
もうなに言ってんのか、全く理解不能だが。
二人が楽しそうなら良かった。
「草月さん? 教室移動、遅れるよ?」
「うぇ!? あ、はい……」
違う生徒に話しかけられて、草月は肩が跳ねた。
どうやら彼女、人と話すのは得意じゃないようだ。
その割にユウキにすぐ、打ち解けたな。
ユウキは苦手と言うより、嫌っている方だが。
あっちも異性と打ち解けるとは、珍しい。
「あ、あの! 放課後……。三!組の教室に来てくれる……?」
何故か草月は、三の部分を強調する。
「もっと、話したい事があるから……。来てくれたら嬉しい……」
「ああ。僕もこれの使い方を聞きたいから」
「待ってる……。ええっと……。ユウで良い?」
距離感がアレだと思った。流石にその呼び方は近すぎる。
でもそれはユウキも同じだ。すんなり頷いた。
どうやら社交性が薄い二人で、フィーリングがあったようだ。
ユウキは満足げな表情で、戻ってきた。
カチカチおもちゃの引き金を引いて、笑顔だった。
「どうだ、吹雪! 新しいお友達を作ったぞ!」
「あ、うん……。良かったな」
全部終わってから考えると、これはナンパだったのか?
まあ、ユウキの友達が増えたので良しとしよう。
罰ゲームとしては微妙だが、元々冗談だったし。
「ところでお前、彼女の謎会話を理解したのか?」
「吹雪と違って、サブスクが見られる家庭だからな」
どうやら、二人だけで伝わる何かがあったらしい。
それがない俺は、彼女の仲良くなれるか不安だが。
二人の関係を、見守るくらいはするさ。
***
全ての授業が終わった後。ユウキは三組に訪れた。
放課後と言っても、まだ三時台だ。
教室に残っている生徒も多い。
草月は教室の隅っこで、席に座っていた。
三人組の女子に囲まれて、迷惑そうな顔をしている。
「君達、トライアングルアタックしてないで、ちょっと退いて」
ユウキは堂々と、その中に突っ込んだ。
違うクラスの男子が急に入ってきたら、驚くかと思ったのだが。
「ほう。上級者のようね。この真知の華麗なる作戦を見抜くとは……」
「違いますぅ。考えたのはこの沙慈ちゃんですぅ」
「そして残った私は! バーツ吉村だ!」
どうやら、このクラスの女子は個性的らしい。
みんなの発現は、俺の想像を超えている。
「こうやって、三人で囲めば! 攻撃力も三倍になる!」
「そうして、弱そうな生徒から経験値をたかるのですぅ」
「でも二人は戦力外だ」
ユウキは突然机を蹴り飛ばした。
飛んでった机が、三人にぶつかる。
「邪魔なんだよ!」
「ひえええん! エラー!」
三人は泣き言を言いながら、組体操を始めた。
バイクの形になった後、どこかへ走り去る。
「本当に……。来てくれたんだ……」
「僕は約束を守る男だ。ルールは守らないけど」
ズルしたからな。ババ抜きで。
背後で先ほどの三人組が、悲鳴を上げているが無視する。
「あの……。ええっと……。これ、お近づきの印に……」
草月はカバンをごそごそと漁って。
靴につける、ローラーを取り出した。
どんな靴でも、ローラーシューズに出来るものだ。
「私、こういうの作るの得意だから……。その……」
少し不安げにユウキを見ている。
反応を気にしている態度だ。俺もそうだから、良く分かる。
話が盛ら上がったけど、彼女は怖がってるんだ。
自分をさらけ出すことを。拒絶されることを。
だから、ちょっとずつユウキの反応を探っている。
「へえ~。これ、気に入ったぜ! 他にはなにを作っているんだ?」
「盾とか、銃とか……」
「なるほどな。もしかしたら。これからお世話になるかもな!」
本人は話したがらないけど。
冬木ユウキは裏で、何かしらの戦いを行っているらしい。
正義の味方とかでも、陰謀と戦う戦士でもない。
ただ小さな事件を、こっそり解決している。
その際に荒事になることは、少なくない。
「よ、良かったら……。これから工房に来る? 自慢したいものもあるし……」
「OK! 是非見せてくれよ!」
ユウキはサムズアップをして、笑って見せた。
草月はホッとしたように、息を吐いたが。
俺は知っている。その笑顔は、あまり人に見せない事を。
それだけユウキ側も心を開いているのだ。
この二人、相性が良い。相棒になれそうだ。
「俺は一旦、退散した方が良さそうだな」
こちらを見て、頭を下げるユウキ。
俺は手を上げて、フッと笑い立ち去った。
一緒にいることだけが、友達ではないから。
「吉村ー! よ、しむらー! おのれ、バッシャー!」
倒れている三人組を見て、俺は思った。
「邪魔なんだよ……」




