第0話 くだらなさが世界に色を付けた
リハビリ用にアクションが一切ない、書ける日常を書く小説です。
思いついたものを、そのまま書いています。
全編狂ってややバイオレンスです。道徳観と倫理観を一旦捨ててみました。
男子中学生って生き物が、特別だと知っているか?
正確には、学生とは特別な期間だ。
灰色だった人生が、一瞬で色ずくことも珍しい事じゃない。
俺、青影雷治はある日に実感した。
誰が見てもくだらない会話。でも本人達には大事な日々。
あのバカ二人との出会は、俺の全てを変えた。
中学二年生になって、クラス替えになった日の出来事だ。
前もって言っておく。これは世界で最もしょうもない出来事だ。
それでも俺にとっては。人生に色が着いた瞬間だった。
***
犯罪者の息子。それが俺の評価だ。
罪の大きさは大事じゃない。親が偉いかどうかが重要だ。
こう言ってはなんだが、父の犯した罪は重罪じゃない。
ちょっと有名な人物だった。それだけで、俺は軽蔑された。
周囲に誰もいなくなり、孤独な一年を過ごす羽目となった。
二年生になっても、それは変わらないと思う。
「……」
話しかけることも、られることもない。
誰か教室の片隅で、本を読んでいた。
時が経てば話題性は薄れる。今更直接危害を加えられることはない。
だから目立たないようにすれば、安心して過ごせる。
自分の人生はこれから、つまらないものになるだろう。
「んな答え、つまんねえじゃん」
「いや。正しいかどうかが大事だ」
直ぐ近くで、言い争う男子生徒の声が聞こえる。
興味もないので、聴覚の情報を切ろうとした。
だが話し声が徐々に近づく。流石に消せない位置だ。
「Hey! そこのえ~っと。男子生徒! 質問OK?」
妙に流暢な英語交じりに、言い争っていた一人が話しかけてきた。
これは面倒な事になりそうだ……。
とは言え、無視するほど俺は冷たくなれない。
「手短なら。あと、お前も男子生徒だ」
「細かい事は気にすんな。それに解答は好みだぜ!」
サムズアップする亜麻色の髪をした男子生徒。
見覚えはないが、中学でローラースケートを履く奴はまともじゃない。
確かにこの学校は上履きがなく、靴に縛りはないが自由過ぎる。
「朝食で食べるなら、どっちが良いか。コイツと揉めててさ」
「おい、ユウキ。人を巻き込むなよ」
白髪染めしてないくらい、髪が真っ白な男子生徒が注意する。
話し方から、どことなくクールさを感じる。
顔立ちは正直言って、少女漫画にいそうなタイプだ。
単語から言って、随分しょうもない事で揉めているようだ。
大方、パンかご飯かと言ったところだろう。
適当に答えて、話を終わらせる。それが二人のためだ。
話題性が消えたとはいえ、俺の噂は消えない。
俺と話しているところを見られると、きっと迷惑をかける……。
だから人と話すをは、避けたかった。
「朝食べるなら、ストロベリーサンデーか、ホットケーキかどっち?」
俺は脳が情報を整理するのに、時間がかかった。
単語で不意を突かれたというのもある。
「ユウキ……。悪いな。いきなり聞かれても、返答に困るよな?」
「そうだな。斜め上のものが出てきて、フリーズするくらいは……」
「斜め上だと……?」
クールそうな男子が、狼狽えた表情をした。
「朝食は一日のエネルギーだぞ。一杯食べるだろ?」
「腹は膨れるが、手間と栄養が割に合わんだろ」
信じられないようなものを見る目で、クールな男子生徒に見つめられた。
一方でユウキと呼ばれた奴は、何故か無表情だ。怖い。
「吹雪。だから毎日ホットケーキはどうかと思うと忠告したろ」
「でもお前だって、食べてたって……」
「偶にね。偶に。休みの日に家族で作るよ。毎日一人用はちょっと……」
吹雪と言われた男子生徒、毎朝ホットケーキらしい。
体作りは出来ているし、ズボラには見えないのだが。
「朝はストロベリーサンデー。昼はピザ。夜はおかずだろ?」
「昼は弁当食えよ」
「そうだね」
ユウキと言う男子に、あっさり流された。
分かった。コイツは分かってて、言ってる。
「僕もどうかと思ったよ。でもホットケーキを食べたいならカフェにでも行けって言ったの」
「カフェにあるのは、パンケーキだ!」
「どうでも良いのよ。その拘り」
目の前で再度争いが始まった。
話を聞く限り、ユウキの方がまともそうだ。
「手間かけても良いんだよ。朝食に。でもその手間は間違っているって話」
「腹が膨れた方が、朝から活動できんだろ?」
「栄養が偏り過ぎなんだよ。エネルギー気にするなら、栄養素をだね……」
ようやく話が見えてきた。どうやら、吹雪の朝食問題が発端らしい。
何故ストロベリーサンデーかは置いて。
とにかく客観的に良くないと、指摘するのがユウキの目的だろう。
「ご飯炊いて、ハムと玉子焼けば腹も膨れるぞ」
だから適当に、相手が求める答えを言った。
会話を切るには、最も求められた答えが適切だ。
「俺のフライパンは、ホットケーキ用だ!」
「ならホットケーキを止めばいい。ハムと玉子専用にすれば良いだろ」
「ダメだ。ポチはホットケーキを焼きたいんだ」
この吹雪と言う男子。見た目に反して、ちょっと個性的らしい。
フライパンに個人名をつけるのは、珍しいな。
「ならポチを説得でもしろよ」
「フライパンが意志を持って、話せるか」
「……。今のは俺がおかしいの?」
俺はユウキの方へ、視線を向けた。
彼は黙って首を振り、吹雪にげんこつをする。
「あのさ。こういう拘り強い奴は、説得不可能だ」
俺は話を打ち切りたくて、締めに入る。
話題が無くなれば、二人共去ってくれるだろう。
「それに個人の生活に、口出しは良くないぞ」
「意志を変える気はないよ。常識を壊したいだけだ」
「ならおかしい。だが好きにしろ」
二人から視線を、本に移す。
これで話を終えたつもりだった。
「そう言えば名前、なんて言うんだ? 非常識野郎」
「いや、非常識はお前だろ。ごめんね」
ユウキが必死に謝罪をする。
第一印象に反して、やはり彼の方がまともらしい。
「青影雷治」
フルネームを告げれば、向こうから去っていく。
悪い意味で有名な俺に、わざわざ声をかける奴はいない。
偶に物好きが声をかけるが、無視したら諦める。
「へえ。僕のイメージカラーだな。僕は冬木ユウキ」
何がイメージカラーなのだろうか? 青か?
そして冬木ユウキのどこに、青い要素があるのだろうか?
「俺は雪道吹雪だ。なるほど……。お前が……」
「ん? 有名なの? 成績上位者とか?」
「それは俺だ」
さり気に自慢が入ったが、雪道の方は俺の事を知っているらしい。
これで良い。これで彼は俺を軽蔑して……。
「理科の実験で、ヨーグルトを試験管に入れて怒られた奴……」
「なんだそれは!? そんな噂ねえし、俺じゃねえよ!」
「それは僕だね」
残念ながら、冬木ユウキもまともじゃなかった!
「乳酸菌の変化を調べたくて。理科室に忍び込んで、実験したんだ」
「あ~。そうだった。お前のエピソードは多過ぎて、偶にごっちゃになる」
「頼むから、それとごっちゃにするのは止めてくれ……!」
俺は切実な願いを告げた。
「じゃあ、お前は誰だ?」
「だから青影雷治だ」
「知らねえな、そんな名前。俺は友達と自分の名前以外覚えない主義だ」
コイツは一体何を言ってるんだ?
さっきから、何一つ理解が及ばないぞ。
「俺と関わらない方が良い。俺は犯罪者の子供だ。仲良く見られると……」
「あぁ。それなら大丈夫。俺らはあと一人、草月蒼って子しか友達いないから」
「吹雪はみんなの事嫌いだからさ……」
そう言えば、雪道と言う苗字には聞き覚えがある。
彼の父親、確か結構なお偉いさんではなかっただろうか?
姉の名前も聞いたことがある。才色兼備の天才だと。
なら雪道と俺の境遇は、近いのかもしれない。
親が犯罪を明かされた点を除けばな……。
「俺らを気に掛けるなら、大丈夫だ。クソみたいな連中に、口だけ言われてもな」
「右に同じく。僕もクラスで好きな男子ランキング最下位意だったし」
「ユウキ、俺は左側に立っている。あとお前は嫌いな男子でも最下位だ。どちらも票がない」
それは最悪だな。クラスから興味を持たれていないと。
二人共周囲の目線を気にするタイプじゃないらしい。
そう言う奴は居たが。やはり……。
「俺が仲良くなる気はない。二度と話しかけるな」
相手に悪い噂が立つのを、俺が気にする。
だから気分を悪くしてでも、遠ざける。
「ダメだ。僕らはみんなボケだから。ツッコミを求めている」
「お笑いトリオでも組む気か?」
「そのツッコミのキレ、気に入ったんだ」
冬木はニヤリと笑いながら、期待のまなざしで見る。
「いや、ボケが分かるならお前がツッコめば……」
「コイツはおふざけに乗っかるタイプなんだ」
「でも俺じゃなくても良いだろ……」
ツッコめるタイプなら、学校を探せば会える。
わざわざ俺を輪に入れる必要はない。
「こう見えて二人共人見知りだから。出来れば縁がある人が良い」
「人見知りは初対面に朝食を聞かない。あとこんな縁は嫌だ」
「既にグループ所属済みはダメなんだ。ひっそりとしている子が良い」
どうやら凄く面倒な奴らに、目をつけられたらしい。
正直言うと、俺だって寂しい気持ちはある。
だから友達になれるかもと、期待してしまう。
でもダメだ。裏切られる辛さも知っている。
父の情報が流れた後、仲良しのつもりの子が俺から離れたから……。
「五円でどうだ?」
「買収しようとするな! あとそれドロップ!」
「青影君。これドロップちゃう。磁石や」
「そこははじきにしろよ!」
どうにもペースを乱される。
大人しくするつもりが、つい声を荒げた。
何人かは俺らに、注目している。
一年の時、同じクラスだった奴も教室にいた。
質の悪い奴で、逆らえない相手を追い込むことに悦を抱く。
俺の噂を広げたのも、アイツだった。
「なんか視線がムカつく。アイツ、後で脊髄を折ってやろう」
ユウキがニッコリ笑いながら、そいつを見た。
わざわざ『脊髄』まで聞こえる声で言って。
それ以降を小声で口にだす。怖いんだけど。
「で、さっきの続きだけどさ。朝食はなに食べる?」
「んな話じゃなかったろ! 怖いトーンから、日常に急に戻るのやめろ!」
ここは何か一言言わないと終わらない。
だから高速で思考して、単語を捻り出す。
「じゃあ! コーンフレーク!」
言った直後に滑ったと思った。
だが冬木は何が面白かったのか、ツボに入ったように笑っている。
「こうやってる虎の、顔の塊が好きなのか?」
「自分のおふざけを、自分で笑うな!」
なんとも閉まらない、二年生の生活はこうして始まってしまった。
一人称小説ですが、語り部は気分で変わります。
スランプになる度に、更新するスタイルです。
そして今、スランプ中です。




