〈宣戦布告〉
「相談術師さん。アタシ、好きな人がいるの」
「ソノヒトはね、昔から魔法が得意で、魔導士協会に呼ばれるほどの術者で、呆れるぐらいのお人好し。
そんなことしなくていいのに何回も奴隷買って、面倒見て解放するとか、そんなことまでしてしまうヒト。
アタシ、昔からソノヒトが大好きだった」
「カレはアタシのこと、妹にしか見えないって言うけど、アレはアタシがまだ子供で、優しさからで、アタシが大人になって綺麗になれば、絶・対。振り向いてくれるの」
「ダカラどんな奴隷を住まわせても、平気で居られたの。そもそもカレは女の奴隷なんて買わなかったし。でも、最近そこに、女の奴隷がやってきたのよ」
「カレは優しいから。きっとあの女に同情したんだと思う。奴隷なんてカワイソーだもんね? でも、そのオンナは違った。奴隷なら奴隷らしくしてればいいのにゼルに言い寄った。ゼルにくっついてナニサマのつもり? ふざけないでよ奴隷の癖に」
「アタシ。アイツが憎い。奴隷の癖にゼルを懐柔して狂わせてる。じゃなかったらゼルがあんな顔で笑うわけない。アタシが知らないことまで話すわけない!」
「釣り合ってない! ただの奴隷がゼルと釣り合うわけない! アタシの方が幸せにできる! アタシの方がずっと、ずっと昔から彼を知ってる! ずっと好きって言ってきた! なのに、どうして?」
「……許せない。本気なの。アタシは彼を手に入れたい。絶対誰にも渡さない」
「──ダカラね。アレを何とかする方法教えて? 相談員さん」
「アレが居なくなればいい。
彼の視界から消えてくれればそれでいいの。
どうしたらいいかな?
アレが相応しくないと解れば彼の目も覚めるはず。
排除したい。
殺すのは流石に夢見が悪いし。
アタシもいい子で居なきゃいけないから。
どうしたら排除できるか考え」
「……ストップ!」
思わず両手で遮って。
過熱し殺気立つネリーに送るのは、真剣なまなざしと、受け止める気迫。
ぎろんと振り向くネリーを前に、モナは、ごくりと息を呑み、慎重に、口を開いた。
「……ネリーさん。お気持ちは痛いほど、良くわかりました。でも、少し聞いてください」
ビリつく空気が刺さる。
怒りと嫉妬で怖気づきそうだ。
だけど、これは〈相談だ〉。
「わたしの口からそれを聞いても、火に油かもしれません。でも、わたしにはお伝えする責任があると自負しております」
〈仕事〉だ。
だけど、仕事じゃない。
怒りと嫉妬に呑まれた彼女に届くのはきっと、説教でも説得でもなくて、寄り添いと意見だ。
──そう、ネリーの瞳に映る感情を図りながら、モナは、〈ふう────〉と大きく息を吸い込むと、数拍。
その顔に真摯と真剣をたたえ、正面から見据え、──云う。




