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 こんにちは。セルマール。

 お米食べたい。たまごかけご飯食べたい。

 モナです。



 いきなりですが、恋愛モノとかそういうので『私の方が先に好きになったのになんであんたが!』とか、よくありますよね。



 わたしも何度もそういうドラマや漫画、スレのまとめ動画なんかを見ましたし、そういうの見るたびに「いや、最初に好きになったからって優先されるわけじゃないからw」なんて、草まで生やしてました。



 だって、恋愛って先手必勝なところあるじゃないですか。〈先に告白して土俵に上がった方が、勝負できる〉。


 好きになったのが先とか後とか関係ない。

 相手の気持ちを射止めた方が勝ち。



 ……でも。

 実際となると話は別で。

 〈彼のこと好きな人がいるの解ってて、好きになってしまう〉のは、申し訳なさと罪悪感と、でも……! のせめぎ合い。



 ネリーちゃんの気持ち知ってるのに……! と何度も頭抱えたんですけど、それを傍から壊していくのがゼフィルさん。



 優しい。

 甘い。

 褒めてくれる。

 溺愛じゃなくて、肯定感爆上がりのほうの〈甘さ〉。



 あの日、カルボナーラで失敗した時。

 わたし〈ずっと求めてたもの〉がわかっちゃって……褒められて喜んでくれる度に、嬉しくてやる気出ちゃって。


 こんなふうに、認められながら暮らしていきたいんだなって。それで、それが好きな人なら……幸せだなって。



 ──って、それがゼフィルさんだったんです。



 ……そもそもゼフィルさん……

 ううん、ゼフィーて、駄目なの。

 

 ビジュがいいの。

 チャラいけどカッコいいの。

 アッシュゴールドの髪さらさらだし。

 ちょっとたれ目の緑の瞳綺麗だし。

 アイドルのビジュ。

 歌って踊ってもおかしくないんです。


 その上褒めてくれるし気遣いやばいし配慮もあるし認めてくれるし、いまだに言っちゃう「すいません」すら、わたしのアイデンティティとしてくれてるところもあって……



 〈げろ甘やかし〉だよこれヤバイ死ぬ。


 こんなの毎日喰らって令和の社会人が落ちないわけがない。無理。死ぬ。ソースはわたし。



 けれども、わたしは奴隷。

 あるじの彼とはひとつ屋根の下。

 

 一歩踏み出したら最後、天国か地獄かのどちらかしかないわけでして、……そう、職場恋愛なんていいことありませんから、お口はバツです。蛙化ならぬウサギ化です。



 まあ、バレてるかもしれないけど……

 いっそバレろ。

 いやバレるな。(どっち)


 


 そんなこんなで、わたしとゼフィーは、軽口叩ける仲ぐらいにまでなりました。


 時々敬語言っちゃうけど、呼び方は「ゼフィー」。

 彼は「モナちゃん」のまま。

 一回はずみで呼んだら、「そっちがいいから戻さないで」って言われて。


 っていうかあれは〈お願い〉って言うより〈おねだり〉の破壊力だったよゼフィー……、はぁ──、しんど。ときめきが大渋滞。



 でも、でも。一線はキープしてるんだよ?

 わたしは彼のハウスキーパーであり、食事係であり、話し相手であり、街の相談術師だから。ここに居たいからこそ、言っちゃいけないこともある!(と、言い聞かせている)



 あとそうだ。

 首輪の話。

 ゼフィーいわく、これは拘束魔力が切れたら勝手に落ちるものなんだって。


 ……なんだけど、それが落ちたってことは、わたしは帰らなきゃならないのかな……とモヤってます。

 


 だってゼフィー、わたしが「オルマナっていいね」って話しても、一向に「帰れるから・ごめんな」って姿勢変えないんだよね……



 そんなゼフィーに、ちょっとしょんぼり。

 ……はぁ……、恋ってうきうきと楽しみと、ズキズキとめそめそが同時に来るの渋滞しすぎ。




 ──で。そう(・・)

 話しもとに戻しますけど、相談術師として仕事を続けるうちに、皆さんの相談役として板についてきたようです。



 最近はもっぱら《風献祭(ふうけんさい)」の話で、その運用の相談ばかりされます。




 そこであの……

 お金の話にもなるわけで。



 それを受けて。うっすら感じ始めてることがあるんだけど、わたし……50で買われたじゃないですか。覚えてます?



 あの時円換算したけど、どうも奴隷って銀貨や銅貨じゃ買えないみたいで……

 

 ってことは金貨で取引されたらしくて。

 その金貨が多分一枚、日本円にして四万から六万ぐらいの価値(時価変動あり)っぽい空気をビシバシ感じていまして。



 ってことはわたし、……えーと……

 と震えましたが、今更聞くのも怖いのでやめておきました。



 お金の話は怖いです。

 税理士でも経営コンサルでもないのに良いのかなって、恐れ多すぎました。



 でも嬉しかったのは、そこで出す伝統的焼き菓子・〈フィアビン〉のアレンジ相談をされたことなんです!



 フィアビンって言うのは~はちみつ漬けした花びらで作った餡を、クッキー生地みたいなやつで包んで焼いたもの。



 当て字を付けるなら〈花蜜包〉とかになるのかな。センスないな。



 食べさせてもらったけど、ほろほろさくさく、中はしっとり。中の餡の、ふんわり香る花の風味が上品で、紅茶か緑茶と一緒に味わいたいと思ったよ!


 美味しかったのでリピ決定!

 と言いたいところだけど、あれはお祭り近くにならないと食べられないんだって。




 ──で、そんな伝統的お菓子・〈フィアビン〉を、もっと革新的にしたいと言われて……


 生どら方式の盛り付けを提案しました。

 

 包んで焼くんじゃなくて、全部焼いて、あとで挟む。オルマナは酪農あるし、クリームあるので、それをトッピング。


 「日持ちはしないけど相性は抜群だと思う」と言ってみたところ、「包まなくていいのが新しい!」「子どもでもお手伝いできる!」と、超感謝されました。


 嬉しかったです。

 これも、日本人だったおかげだよね。

 日本で見てたから、出せた案だと思っています。



 企業さんとか先人が、悩んで工夫して作り上げたものを、見せてもらって食べさせてもらってたから出た発想ね。わたしの小さな脳じゃ出なかった。



 相談受けてるだけで〈術師〉と言われるのも、それでお金を頂けているのも。

 全部、わたしを育ててくれた日本があったから。


 ──そんな自己肯定感を胸に、ゼフィーの元で仕事をしていたある日。



 事件は起こりました。


 

 わたし、忘れてたんです。

 ほんと、忘れてたんです。







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