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第83話 任務終了

第83話です。

楽しんでいってください!

 「本日は、どうなさりましたか?」


リリスとラヴィエンヌは、ロズレ子爵邸の応接間にいた。

子爵は扇子で口元を隠し、リリスたちに微笑みかける。

その瞳の奥には、警戒するような暗い光が宿っていた。


「どうやら、本日で調査は終了のようですわ。」


リリスはそう言い、逮捕状を子爵の眼前に突き付けた。


「あら、これは何かしら?」


子爵はパンっと扇子を閉じ、リリスを見上げる。


「御覧の通り、逮捕状ですわ。本日でロズレ子爵家は子爵位と財産を剥奪。さらに、当主は『薔薇の牢獄』の刑に処す。」


「薔薇の牢獄ですって?それほどの罪を、私が犯したと?」


子爵は逮捕状を突き付けられながらも、いまだに場をはぐらかせようとしている。


薔薇の牢獄――。

これは貴族が国家反逆罪相当の罪を犯された時に投獄される牢屋の1つだ。

この牢屋の中で一生強制労働を課される。

その内容は、女王陛下が決定するため、誰も知らない。

ただ、この牢獄に入ったものは1か月も正気を保つことができればよい方だという噂だけが流れている。


「罪状は禁止品目の取り扱いと、境界融和派を通して人間への情報提供。公開処刑じゃないだけましだろう。」


ラヴィが腕を組み、子爵をぎろりとにらむ。

それでも、彼女は後ろ暗いことは何もない、という風な笑みを浮かべている。

証拠が挙がっている訳ではないとでも思っているのだろう。


領民に命じ、何事もない風を装わせたり、アリーに行き先を制限させたり。

私たちの動きを自分がすべて把握していると思っているから。


「証拠は、ございますの?」


「もちろんですわ。まずは、こちらをご覧ください。」


そう言ってリリスが差し出したのは、ロズレ子爵家の裏帳簿。

そこには禁止品目――魔香花(ベラドンナ)が使われた化粧品類だ。


魔香花は魔力の波長を乱し、免疫力を低下。

さらにその毒性によって、人によっては数日のうちに衰弱し、死に至るという代物のため今では使用を禁じられている。

しかし、それを使った化粧品は肌を艶やかに、目薬は瞳孔を大きく見せる。

そのため、昔は問題点が指摘されるまで、多くの人が魔香花が使われた化粧品類を使用していたのだ。


ロズレ子爵はその書類を見て、わずかに目を見開く。

しかし、取り乱すことはせず、その瞳をリリスたちへと向けた。


「これだけでは、薔薇の牢獄に投獄するに至らないでしょう?」


確認するように、ゆっくりとそう口にする。

それをバッサリと切り捨てたのは、ラヴィだった。


「もちろん、これだけじゃない。忘れた?これのことを。」


ラヴィはさらに書類を取り出す。

今度は、子爵とセレストラ――境界融和派の行動記録だ。

それらを照合し、まとめたものを子爵はじっと見つめる。

そして、再び目の前で彼女に冷たい視線を向ける2人へと視線を戻した。


「これだけでは、証拠が十分ではないのではなくて?」


子爵はわずかに瞳を揺らし、焦ったように声を震わせる。


「・・・それでは、これをお聞きください。」


そう言い、リリスは小さな機械を取り出した。


「そ、それは・・・!」


「御覧の通り、これは録音機。ここに証拠が入っている。」


ラヴィが録音機を受け取りながらそう告げ、再生した。

そこに記録された音声は、子爵が境界融和派に属している事実と情報提供していることを裏付けるものであった。


「な、なんで・・・。」


「これ以外にも、証拠が挙がっている。」


ラヴィがさげすむような視線を子爵に向け、「あきらめろ。」と無機質な声で告げた。


「そ、そんなわけないですわ!私は今まで、この国に貢献してきたではないですか!」


「過去の貢献など、意味を成しませんよ。」


リリスが一蹴すると、さらに子爵は焦り、声を荒げる。


「・・・そう、そうよ。あいつらが悪いのですわ。あいつらが、人間と和解することを女王陛下が望んでいると・・・!それに、私のほかにも、境界融和派に所属している者はいましたもの!」


「黙りなさい。」


その言葉と同時に、リリスは魔力を発する。

その圧倒的な威圧感に、子爵は目を見開いて動きを止めた。


「それ以上の弁明は、王城でどうぞ。」


「私は、赦していただけるということですのね!」


何を誤解したのか、彼女は顔を上げてそう言う。


「は?何言ってんの、こいつ。」


「ふふっ。まあ、いいんじゃないかしら。」


2人が苦笑交じりに子爵を眺めていると、背後からにゅっと手が伸びてリリスとラヴィの肩をガシッとつかんだ。


「お疲れ様です、先輩。」


「お疲れ様・・・。」


「相変わらず、お疲れね。」


突然の出来事にも拘わらず、リリスとラヴィは慣れた風で後ろを振り向く。

そこに立っていたのは、目の下にクマを浮かべた全身黒ずくめの女性。

彼女はリリスとラヴィに体重をかけるようにもたれかかる。


「それじゃ、()子爵のこと、お願いします。」


「さっきの話、先輩も聴いてたでしょ?ここから先は、そっちの仕事だし。」


2人がさらに畳みかけるようにそう言うと、先輩は背筋を正す。


「了解・・・。今度研究に付き合ってくれたり・・・?」


「まあ、時間があれば。」


「時間があれば、いいですよ。」


「それは無理ってことじゃ・・・?」


ザ・ダメな先輩といった空気を醸し出しながらも、彼女は元子爵を拘束する。


「これで任務は終了。王都に帰ってね・・・。」


先輩はきゃしゃな見た目に似合わず、子爵を肩に担ぎ、窓辺に足をかける。


「それじゃ、またね・・・。」


彼女は風で元子爵を包み込み、飛び立っていったのだった。

思ってたよりも長くなりました・・・。

これでこの章は終わりです!

次はようやく再会・・・!


これからものんびり投稿していきます!

ちょこちょこ覗きに来てください!

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