第79話 化粧品
カミラが戻ってきたのは、約10分後。
その手には数々の化粧品が収められた箱があった。
「こちらになります。」
リリスたちが箱の中身をのぞき込むと、赤や青など色とりどりの瓶が収められている。
どれも見たことのないものだった。
カミラが商品の説明を始める。
「これらのものは遠い異国から仕入れたものです。どれも独特の甘い香りを放っており、肌に塗るととても白くなります。」
「まあ!すごいわね。少し手にとっても?」
「もちろんです。少し試すのもよろしいかと。」
カミラはふっと笑みをこぼし、自信ありげに言葉を返した。
リリスは慎重に1本の瓶を取り上げ、蓋を外した。
その瞬間、あたりにふわりと甘いにおいが漂う。
「これは何の香りなの?甘くていい香りね。」
「申し訳ございません。私共は存じ上げていないのです。」
「あら、どうして?あなたたちが取引しているのでしょう?」
リリスは無邪気を装い、首を傾げる。
カミラは逡巡するように視線を巡らし、小さな声でつぶやいた。
「上からの指示なのです。申し訳ございません。」
困ったように眉を寄せてそう答える彼女は本当に知らないのだろう。
ほんの少しだけ、唇を噛みしめていた。
「それなら、仕方がないわね!じゃあ、これはどうかしら・・・。」
リリスは何事もなかったかのように商品を見始める。
その様子を見て、カミラはほっと息をついて再び説明を始めた。
和やかな会話の裏では、もちろん2人の話し合いが進んでいる。
『この香り、知っているような気がするのだけど・・・。』
『シナモンに近いけど、どこか甘ったるいか。・・・後で調べるよ。』
『お願いね。』
軽く会話を交わし、リリスは目の前の化粧品に意識を集中させる。
どれも独特な甘い香り。
しかし、少しスパイスのような――シナモンのような香りや、とにかく甘ったるい香りなど様々だった。
さて、これがあたりならいいのだけど。
リリスは心の中でそう呟き、ひそかにため息をこぼすのだった。




