第73話 静円
第73話です。
楽しんでいってください!
「それじゃあ、明日は街を散策する。」
それだけ告げて、ラヴィはアリーに背を向ける。
その隣でリリスは苦笑しながらもラヴィの言葉を補足していく。
「明日は街の主な通りを見に行こうと思っているの。領民たちの暮らしがわかりやすい場所や時間はあるかしら。」
「そ、それでは、朝の市場がよろしいかと。」
アリーは少し声を震わせ、台本を読み上げるかのように淡々と言葉を続ける。
そして、何かを気にするかのように周囲にチラチラと視線を向けた。
リリスはそんな彼女の様子を見て魔力探知を使う。
・・・いるわね。
魔力探知の結果、周囲には明らかに気配の薄い者が複数人いることがわかった。
監視に気づかないふりをしながら、アリーに中で話そうと声をかける。
彼女は無言で頷き、歩き出したリリスの後ろに続いた。
「やっと来た。」
拠点となる部屋の1つ。
リリスが話し合いに使おうとしていた部屋には、すでにラヴィが座っていた。
思わず、疑問を顔に浮かべてラヴィを見つめる。
「・・・魔力探知の担当、私だったんだから気づいて当然じゃない。」
「それもそうね。」
そんなやり取りをしながらもリリスは魔法を行使した。
「『静円』。」
その瞬間、ラヴィが腰掛けるソファとその周辺にふわりとベールがかかったようにぼんやりとする。
リリスがそれに触れると、元のように戻った。
「座って頂戴。」
リリスはアリーの手を引いてラヴィの向かいに座らせ、自身もラヴィの隣に腰を下ろす。
「それじゃ、色々教えてもらおうか。」
「とりあえず、何を指示されているのか、かな?」
ラヴィとリリスが口々に気になることを上げていく。
その正面でアリーは慌てたように声を荒らげた。
「き、聞かれてるかもしれないのに、なんでそんなに平気そうなんですか!?」
「「え?」」
思わぬ質問に2人は顔を見合わせ、首を傾げる。
自分たちを誘導するように言われているなら、それなりの地位にいるはずだから、先程使った魔法も知っていると思っていたからだ。
静円。
これは、薄い膜のようなものをはり、中の声を外に漏らさないようにする魔法だ。
国の重鎮はもちろん。
貴族の多くがこの魔法にお世話になっている。
機密情報の共有や取引など、様々な用途があるからだ。
それにもかかわらず、アリーはこの魔法を知らないかのような反応を見せた。
リリスは貴族として最悪な対応、と言わざるを得ない対応をされた可能性に気づき、ちらりとラヴィに視線を向けた。
ラヴィも呆れたような色を瞳に宿し、リリスに視線を返す。
そして、ため息混じりにアリーに答え合わせを求めた。
「もしかしてあんた、基礎魔法しか使えない?」
「え?」
アリーはキョトンとした顔でこくりと頷いた。
「やっぱり・・・。」
そう言いながら天を仰ぐラヴィの横でリリスも肩を落とした。
貴族家の執事や侍女長、秘書などの上層部になるための条件はかなり厳しい。
その家への忠誠心はもちろん、仕事の出来や功績。
そして、魔法をどのレベルまで扱えるかが重要な条件となっている。
そして、アリーが使えるのは基礎魔法。
誰でも魔力さえあれば使える魔法だ。
子爵家当主の推薦にしてはお粗末と言えるであろう。
そんなことを考えている2人の前ではアリーがやはり、首を傾げていた。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




