第50話 翠幽
第50話です。
楽しんでいってください!
軍勢:人間側
兵士たち:魔女側 です。
リリスは木々に身を隠し、軍勢の様子をうかがう。
魔女側の兵士の数は人間側の5分の1にも満たない。
さらに、絶え間なく降り注ぐ銃弾の雨を前にして、前線は完全に足止めされていた。
否、前線だけではない。
後衛も防御するのに手いっぱいで反撃できていなかったのだ。
まずは、ある程度の人数を行動不能にしなければ・・・。
そう判断したリリスは、人間側の軍勢の足元一帯に『夢遊草』を生やした。
この植物は触れた者の判断力を低下させる魔法植物。
ただし、精神力が弱っている者にしか効果がない、一般的には、なかなかに使い勝手の悪いものとされている。
魔法は、使用者ももちろんダメージを受ける。
それでも、この植物を選んだのは、リリスにはまったく効かないから。
その点、この植物はリリスにとって非常に相性の良いものだった。
ほどなくして、軍勢に異変が起こり始める。
ふらふらと歩きだす者、地面に膝をつくもの、力なく倒れこむ者。
――1分後、その場に立っていたのは半数以下に減った約100人の軍勢と、疲弊しきった兵士たち、そしてリリスだった。
いまだに燃え盛る木々の間から、リリスが姿を現す。
その翡翠色の瞳は昏く輝き、抑えきれないほどの殺気を発する。
高い位置で結ばれた茶の髪が、その殺気に呼応するように揺れた。
そして、軍勢を一瞥し、静かに口を開く。
「死にたくなければ、そいつらを連れて、今すぐに消えなさい。」
足元に倒れている者たちを指さしながら。
軍勢の多くは、リリスが放つ、強者特有の威圧感に呑まれる。
――しかし、成果を上げずに帰るわけにいかない。
彼らは一斉にリリスに銃の照準を向けた。
「放てぇぇぇぇ!」
その声を合図に、リリスも動き出した。
それから、軍勢が全滅するまで、あっという間だった。
銃で攻撃しようとした者はアイビーに拘束されて絞められ、刺され、地面に沈む。
近接でリリスに挑んだ者はアイビーをまとったリリスに叩き伏せられた。
この、リリスの独壇場と化した戦場――『地獄』から逃げ延びたものは、口をそろえてこう言ったという。
「『翠幽』が、翠幽が出た・・・!」
――ありし日の惨状を、殺気に満ちて光る瞳を、思い浮かべながら。
なんと、今回で50話です!
あっという間ですね。
まだまだ続く予定なので、お付き合いいただけると嬉しいです。




