第43話 月下の約束
第43話です。
楽しんでいってください!
ヴェーヴは階段を勢いよく駆け上がる。
階段を上り切った、すぐ横のテラスからかすかに物音が聞こえる。
師匠かな・・・?
ヴェーヴは扉の隙間からおそるおそるのぞいた。
リリスは珍しく髪を下ろしていた。
長い髪が夜風になびき、月明かりの下で淡く揺れる。
その横顔は綺麗で、すぐ壊れそうな感じ。
「師匠。」
ヴェーヴは扉をそっと押す。
リリスがゆっくりとヴェーヴのほうを振りむいた。
その瞳には光が宿り、さっきよりもどこか柔らかい目をしている。
「・・・なにか?」
でも、声は変わらない。
冷たくて、突き放すような声。
「あの、あのね・・・」
ヴェーヴが言葉を探していると、リリスは静かに首を傾げた。
「僕、人間の国に、帰りたくない。」
「なぜ?」
さらに首を傾ける。
耳に掛けられていた髪が1ふさ落ちた。
「あなたは人間よ。魔女ではないわ。」
「でも、僕はこっちにいたい。」
「それでも」
「僕は師匠とずっと一緒にいたいの!」
途端に、リリスはヴェーヴから目をそらす。
「危ないのよ。私は、戦場に行くのだから。私がずっと守れるわけじゃない。・・・そばにいるのが、一番危険なのよ。」
「それでも、僕は師匠と一緒にいたい!」
ヴェーヴの目から涙がこぼれ落ちる。
リリスがその顔を見て目を見開く。
「連れてい・・・いや、でも・・・。」
揺れる声。
何かを振り払おうとするような表情。
ヴェーヴは涙を流し、唇を噛みしめることしかできなかった。
「連れてってあげれば?」
突然、空から聞き覚えのある声が降ってくる。
そして――ヴェーヴのすぐ横にカラスが舞い降り、黒い羽がふわっと舞った。
そこには、シャシャが立っていた。
「でも、この子は自衛もできないのよ?危険すぎるわ。」
「じゃあ、これ持っていったら?」
シャシャはポケットから髪留めを2つ取り出す。
「女王陛下お手製の魔道具。お互いの居場所が分かる上に、攻撃を受けたら防御して自動で攻撃するっていう優れものよ!」
そう言って誇らしげに胸を張る。
そして、リリスに1つ手渡した。
「それがあったら、安心でしょう?居場所が分かれば、跳んでいけるじゃない。」
「でも、こんな・・・。」
「受け取れない、ってのは、なしだからね?せっかくお母様が作ってくれたんだから。」
髪留めを返そうとしたリリスの手に、強引に握らせる。
「ヴェーヴも。ほら、つけてあげる。」
シャシャは涙をそっとぬぐい、髪留めをそっと留める。
花の形をした、きれいな髪留めは月の光を反射してきらきらと輝いた。
「それじゃ、2人とも、ちゃんと仲直りしてねー?」
シャシャはヴェーヴたちに背を向け、カラスになって飛び立った。
あっという間の出来事に驚き、ぽかんとしてしまう。
リリスは何も言わず、またヴェーヴのことをじっと見つめた。
ヴェーヴは、はっとしてリリスのほうに向き直る。
「師匠、これがあれば、一緒に行っていいよね!?」
シャシャからの助け舟。
ヴェーヴは、これならリリスも許可してくれるだろう、そう思ったのだ。
リリス一瞬考えこむように視線を落とし、口を開く。
「・・・そう、ね。いいわ。ただし、私の言うことは絶対に、守りなさい。」
そう言って、いつものように微笑んだ。
ヴェーヴの胸の奥にあったざわめきが溶けていく。
ヴェーヴは思わずその場で飛び跳ねた。
「やったぁ!」
喜びを目いっぱい表現するヴェーヴを眺め、リリスも嬉しそうに微笑んだ。
そして、少し表情を曇らせる。
「それと、ごめんなさいね。ちゃんと、ヴェーヴの話を聞かなくて。」
「今度からは、ちゃんと聞いてからにしてね?今日みたいなのはやだ。」
「ええ。約束するわ。」
ヴェーヴはリリスに抱き着き、顔を見上げる。
リリスはヴェーヴに視線を合わせるようにかがむ。
そして、2人で額をこつりと合わせた。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




