第38話 戦の影と熟れた果実
第38話です。
今回はリリス視点です。
楽しんでいってください!
部屋の中には、ヴェーヴの笑い声が響く。
その横でシャシャが何かを話しかけ、一緒に笑っている。
リリスとラヴィは並んで部屋の真ん中にあるベンチに腰掛け、その光景を眺める。
「あの件、どうなった?」
「国境付近がきな臭いわね。軍の動きが変わった。」
「リュクサリアも軍の人間が増えてきたわ。・・・いよいよ戦争かしらね。」
2人同時に深いため息が漏れる。
「私たちも召集されるだろうね。人手が足りない。」
「私も?」
リリスは、思わずラヴィを見る。
声には少し、驚きがにじんだ。
「もちろんよ。『翠幽』リリス・デュポワ。」
ラヴィはふっと笑いながら付け加えた。
そんなラヴィとは対照的に、リリスは手をぎゅっと握りしめ、下を向く。
「なぜそんなに自信がないの?主席様?」
「それは・・・。」
無意識に視線がヴェーヴへ向いた。
落ち葉を上に投げ上げて、楽しそうに遊んでいる。
そこに、穏やかで、幸せな空間があった。
「ヴェーヴのことが心配なら、連れて行けば?」
「無理でしょう。危険な目には合わせられない。」
「じゃあ、配置を魔法学校の近くにしてもらったら?ヴェーヴを学校において行けばいいじゃない。喫茶店の近くは間違いなく防衛地点の1つになるから、危険でしょ。」
「・・・迷惑がかかるでしょう。」
「なに言ってんのよ。あなたのことがだーい好きな同級生と後輩ちゃんがいるじゃない。」
ラヴィが少しおどけたようにそう言った。
張りつめた雰囲気が和やかなものに変わる。
リリスの頬は、自然と緩んでいた。
「それもそうね。」
2人は昔を――魔法学校でのことを、懐かしむように笑う。
私は、あの子たちのおかげで・・・
その時、サクサクと落ち葉を踏む、軽い足音が聞こえた。
「師匠!この果物食べよう!おいしいんだって!」
リリス振り向くと、ヴェーヴが両手いっぱいにいろんなものを抱えて目を輝かせている。
いろんな種類の果物、きれいに色づいた葉・・・。
「ええ、そうね。おいしそうだわ。」
そう言った瞬間、ヴェーヴの表情がぱあっと明るくなる。
嬉しそうに細められた橙色の瞳には、初めて会った時の怯えも不安も、どこにもなかった。
『そうね、この子は、もう大丈夫なんだわ。』
「・・・?師匠、何か言った?」
リリスは胸の奥が熱くなり、なぜか泣きたいような、そんな気持ちがこみあげてくる。
なんで、私が泣きたくなるのかしら?
リリスはその不思議な、複雑な気持ちを心の奥底に押し込み、いつものように、ヴェーヴに笑いかけた。
「何も言ってないわよ。さあ!食べましょうか。」
テーブルに置いてある果物用のナイフを手に取り、鮮やかなオレンジ色に熟している果物をそっと持ち上げた。
リュクサリアはヴェーヴとリリスが買い物に言った街です。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




