護衛騎士
やあ良い子のみんな!ケイオスお兄さんだよ!
毎日懸命に仕事してたら殉職率激高の外交官の前任者がいなくなったので無理矢理昇級させられちやった!一体私どーなっちゃうの〜!?いやホント勘弁してくださいよ。前世でもう死んだのにまた早死にとか嫌なんすけど。
だが心配することはない、俺にはとっておきがある。転生モノの漫画とか見てれば一度は聞いたことのある哀れな死を遂げた主人公に神が送る慈悲。そう、ギフトだ。
1人で歩いたり走ったりできるようになれば近くのダンジョンやら盗賊やらをギフトの力で薙ぎ倒しドンドンレベルを上げ学園とかに入る頃には最強になってて無双する...みたいなのを俺にもできるのかと。もちろん期待を膨らませたさ。
だが現実はそう甘くなかった。別にギフトが使いにく過ぎるみたいな感じではない、ギフトが弱いのも違う。じゃあ何がダメなのかって?
前世の記憶が蘇る時とギフト発現が遅すぎたのだ。
文章を見るだけならそこまで問題ではないだろう。実際記憶の蘇りとギフト発現が遅いのは問題なかった。問題があったのは俺の生まれだ。
まず俺の生まれは貴族だった。
なんでも俺の曽祖父は元々上級貴族で王国のすぐそばに屋敷を構えていたらしいんだが祖父の代で没落、屋敷は差し押さえられ祖父と当時子供だった親父は王国から離れた場所に左遷させられたそうだ。
親父はなんとしてでも上級貴族に返り咲きたい祖父のスパルタな指導の元なんとか難関大学に合格し、祖父が死去して俺が生まれた頃にやっと下級から中級貴族になれたと親父は言っていた。
だが蛙の子は蛙。親父も子供の頃味わった蜜を忘れられないのだろう。俺にもスパルタ教育をしやがったのだ。
当時は前世の記憶がないのでこれが当たり前だと思っていたと思う。だが今思うと中々のスパルタ具合だった。もし生まれた時から前世の記憶とギフトがあったらぶっ殺してだと思うくらいにはスパルタだった。まあ親父は運よく記憶もギフトもない俺を教育し、俺を国営の事務員にしてくれた。そこは感謝している。
親父の言う通りに生き、勉強して、大学卒業して、そのまま国の事務員に就職決定。
なんてことはない普通の貴族出身の事務員の人生が始まるはずだったんだ。
その時だ。俺は記憶とギフトに目覚めたのは。就職先が決まり安定した生活が決まったと思ったらこれだ。頭おかしなるで。
一時期は即退職して魔法学園に行こうとも考えたさ。だが現在の国の方針がそれを許さなかった。
俺が住んでいるこの国[アバンミール王国]は戦争なんてものは150年近くしてないらしく、力を欲していない。
そんな平和な国の事務員(労働力)となる予定の男が魔法学園に行くことを親以前に国が認めなかった。あれよあれよと俺は業務に心身共に削られ、俺のギフトでチート無双物語は幕を下ろした。
話が長くなったが、結論「俺は元から社畜になる運命」だったのだ。ひでーよ神様。
そんなこんなで新人外交官となった俺だったのだが、まだ希望はある。任務で1人で他国に行く時に遭難を装ってそこらの農村とか行けばまだ俺のチート無(以下略)は始めれる!
と、思っていたのだが
「はあ!?外交官が1人で他国にいける訳がないでしょ!護衛はつける義務なの!なに言ってんのケイオス君!?」
...という感じにブラムに猛烈に反対された。そりゃそうか、仮にも国の大使だもんな。
まあそんな訳で俺は今面会室のソファで紅茶を啜りながらその護衛役とやらを待っている。ちなみ護衛役の人物は軍ではなくギルドマン。それもゴールドランクの腕の立つ人物の様だ。よほど自信があるのだろう。調べてみるとこの世界でのギルドは創作に出てくる様なギルドとなんら遜色はなかった。作品によってゴールドの強さは差異はあるがここでのゴールドは1人でダンジョンを攻略でき、生還するくらいの力がある者くらいの扱いらしい。
まあそこまでの力があるのなら殉職の心配なんてないだろう。
そんなことを考えていると扉からノックが聞こえた。例の護衛役が来たらしい。入る事を承諾すると
「失礼します。」
とギルドマンにしては礼儀正しい返事が返ってくる。ドアが開くと自分よりも年下に見える凛とした女性が入ってきた。髪は金髪で美しく蒼いの瞳は宝石のように綺麗だった。
てっきり某「真っ直ぐファイター」に出てくる[残忍のギエフ]みたいな屈強な男を想像していたので脳内が小宇宙で埋め尽くされ呆然としてしまう。
「...あの、どうかしましたか?」
こちらが反応しない事を疑問に思ったのか、困惑した表情でこちらを伺ってくる。
フッ、予定というより予想とは少し違うがまあ良い。これから長らくお世話になる人だ、距離を縮める為のシュミレーションは昨日に履修済みだ!
「ッハ、いえ護衛と聞いていたのですがあまりにも綺麗な方だったので...」
とにかく相手を煽てる!本来なら「凄い筋肉ですね!さぞかし数多の死線を潜り抜けた猛者なのでしょうなぁ!」みたいな事を言う予定だったが、女性ならこう言っとけば多少の距離は縮めれるはず!
「...ハア、ご機嫌取りはいいです。早く用事を済ませましょう」
アルェ?オカシイゾォ。こう言っとけば大体の女性喜ぶと思ったんだけどなぁ?ダメだやっぱり女心とやらを理解しないと駄目かぁ...チェリーボーイにはキツイっすわ。
そのあとは適当に自己紹介をしあった。
彼女の名前はライナ・ヴァランツァというらしく、エルフの剣士らしい。ギルドマンとしての実力はゴールドなだけあってオーラというか、強者の雰囲気を感じる。とにかくそこらの盗賊や魔物には負けないだろう。
仮にも国の外交官だからゴールドのギルドマンはつけてくれたらしい。
お互いの契約内容と仕事内容についての確認をしながら先程の空振りした距離を縮めることを試みるも
「えっと...ライナさんって好きな食べ物とかはありますか?」
「なんでそんな事を聞くんです?」
「いやほら、これから一緒に旅をする訳ですし一応好みくらいは知っておこうかなと..」
「どうせ保存食に頼るんですから意味ないでしょう」
「し、趣味とかは」
「特にありません。強いて言うなら1人で読書をするくらいです」
「休日とかは何かしてたり...」
「プライベートに関わるのでやめて下さい」
全部ダメでした。初対面の女性にこれは流石に心折れそう。クソッこんな事なら女性ver.のシュミレーションもしとくんだったぜ。
面会自体は順調に進み、午前で初めたのが昼にはもう終わっていた。もちろんライナさんとは距離を縮めることはできずそのまま自室に戻ろうとした。
しかしブラムに呼び出され
「どうだった?上手くやっていけそう?」
的な事を聞かれた。
さっき起きたことをありのまま伝えるぜ...
「...ケイオス君っ、ぜ、前っ途多難だねっ...ブフッ」
とか言いやがって。基本ギフトは目立つから使いたくはないのだがアイツには使ってもいいかもしれない。
それから3日経つと最初の任務が課せられた。
ここから国を一つ跨いだ先にある[サンヴィアツィーア]という国に行くこととなった。
砂漠地帯の国らしく国を一つ挟んでいるのもあって中々連絡が取れないらしい、よって今回俺が派遣されるって訳だ。
城門に行く途中、ライナさんが他のギルドマンに声をかけらた。
「おっ、ライナじゃねえか!ソイツが例の依頼人か?」
「いや、この人は今回の護衛対象。これから出発、だからしばらくはこの人に付きっきりになるわ」
「そうか〜どれくらいで帰ってくるんだ?」
「それは分からない。この人の力量次第ね」
「ヨシ、兄ちゃん仕事はゆっくりやってくれれば良いぞ!」
「切るわよ」
そんな他愛のない(?)会話をしばらくしていると時間が迫ってきたのでライナを催促し、その場を離れ馬車に乗る。
サンヴィアツィーアに着いたのは出発してから二週間だった。最初は心地よかった馬車の揺れも次第に嫌になっていき3日目にはホームシックになってしまった。ライナからは
「この仕事向いてないんじゃないですか」
と呆れられてしまった。俺もそう思う。
次回からやっと本編です。2話も使っちゃったけど初心者だからしょうがないよね(´・ω・`)